「クイーン・エリザベス」「クイーン・メリー2」
キュナードのクイーン2隻を乗り継ぐ

QEEEN MARY 2

キュナードのフラッグシップ「クイーン・メリー2」(QM2)に12年ぶりに乗り込んだ。2016年に“Remastering”(改装)を終えて新造船のようになったQM2は新鮮で、初乗船のような錯覚のまま客室に向かった。上質な木材を可能な限り多用しているのはそのままだが、初代QMのアール・デコ風を引き継いだ内装に変身した。

 

おなかが空いていたので荷物を置いて、7デッキのビュッフェ「キングス・コート」に向かう。ここも名前は聞き覚えがあるが印象がまったく違う。料理はアイランド式のカウンターが並び、前菜、温かい料理(パスタからカレーまで)、肉類、デザートと置いてある場所が違うので、列を作ることなく、欲しいものを皿に取れる。

 

座る場所も外が見える窓側席から、落ち着けるソファ、バーカウンターのようなものまでさまざまな種類があって、うろうろ席を探す必要がない。改装で最も評価が高い場所の一つと聞いたが、まさにその通りだった。日本食やアジア料理もあり人気が高い。

 

●航海日にこそ乗りたい船

 

短い休暇だったら行ったことのない所に多く寄港する船やコースを選ぶが、航海日が多いクルーズなら間違いなくQM2を選ぶ。

 

「キャニオンランチ・スパ」や洋上唯一のプラネタリウム、「クイーンズ・ルーム」でのアフタヌーン・ティー、シアターでのプロダクション・ショーなどに加え、さまざまな講演やクラフト教室、至るところで演奏されている音楽など船内新聞には1日の予定がびっしり書き込まれている。洋上で一番大きな「ライブラリー」に行って本も選びたいし、船内各所に置かれたキュナードの歴史的な写真や説明を見て回るだけであっという間に時間が過ぎるし、ショップが並ぶ「メイフェアー・ショップ」でショッピングもしたい。

 

何よりQM2という大西洋横断を行う、“世界一速く強靱な船”に守られつつ、航行を満喫したい。安心感に満ちあふれ、船旅らしい時間が過ごせるのが心地よい。

 

2フロアに広がる壮大な「ブリタニア・レストラン」。乗客の8割がこのレストランのカテゴリー。
CRUISE GALLERY
2フロアに広がる壮大な「ブリタニア・レストラン」。乗客の8割がこのレストランのカテゴリー。
CRUISE GALLERY
ボール・ルームの「クイーンズ・ルーム」は毎夜ダンスを楽しむ乗客でいっぱい。この夜のテーマは「20’s」。1920年代のファッションで踊る人も。優雅な「クイーンズ・ルーム」の奥には実はディスコ「G32」。短いクルーズだとこちらも人気。
せり出した舞台をのびのびと使ってプロダクション・チームがショーを行う「ロイヤル・コート・シアター」
ヴーヴ・クリコのシャンパン・バー。黒と黄色を使ったオシャレな一角。イングリッシュ・パブももちろんある

 

●新施設はどれも人気

 

さらに加えて新しい人気の施設も増えた。「ウィンター・ガーデン」だったと言われてもほぼ記憶がないキングス・コートの隣は、朝から夜までオープンしている「カリンシア・ラウンジ」になっていて、朝食や昼食を食べそびれたら、オープンキッチンから作りたての軽食をいただけるし、バーではイリーのおいしいコーヒーも頼める。上手く空間ができているので、どの席も快適で読書する乗客も多い。

 

スイーツ好きな人なら、「サー・サミュエルズ」に行くしかない。新しく「ゴディバ」と提携して、チョコはもちろん、ケーキやチョコレートドリンク、三段皿のアフタヌーン・ティーまである。

 

「サー・サミュエルズ」は奥にワイン・バー、手前にはゴディバのカフェが登場。3段皿のアフタヌーン・ティーは9.90ドル。チョコレートやケーキ、ドリンクなども多彩
CRUISE GALLERY
「サー・サミュエルズ」は奥にワイン・バー、手前にはゴディバのカフェが登場。3段皿のアフタヌーン・ティーは9.90ドル。チョコレートやケーキ、ドリンクなども多彩

 

●キュナードらしい人が乗る船!?

 

施設の配置を思い出せないまま、エレベーター前に立っていると英国人夫婦が「どこに行きたいの?」と聞いてくれた。「アフタヌーン・ティーへ」と答えると、「じゃ、夫がエスコートするわよ。この船で迷わないにはコツがいるのよ」など、おしゃべりしながら「クイーンズ・ルーム」まで案内してくれた。「せっかくだから一緒に食べましょうよ」と誘ってくれる。

 

たわいない会話をしていたが、ご夫妻はキュナードの「ダイヤモンド会員」。15クルーズ以上または150泊以上している最上級のメンバーだ。一度、キュナードの船に乗って気に入ったので、興味があるコースに合せて、キュナード3船のどれかに乗るという。

避難訓練が一緒で、救命胴衣を初めて着てうれしそうだったオーストラリア人夫婦も、数日が経つとすっとなじんでいる。

 

4カ月を超えるワールド・クルーズから短めの区間クルーズまで、多彩な国からいろいろな乗客が乗り込んでいるのに、誰もがQM2の船にしっくりなじんでくる。自分の居場所が見つかりやすい航海日の効果が理由なのかもしれない。

 

●余韻と友情を残す船

 

QM2はワールド・クルーズでも日本寄港はそう多くはない。ただアジアのどこかには寄港するので飛行機の便のいい所で区間クルーズから乗ってみてもいい。できれば航海日が数日あれば船旅と寄港地の両方が楽しめる。日本人ホステスも常時乗船しているし、人気の日本食はビュッフェに何かしら出るので不安要素は少ない。

 

日数が取れればニューヨーク発ケベックまで8日間の秋のクルーズもいいし、いつか世界唯一の大西洋横断8日間ができればQM2の本来の良さを感じることができるだろう。実のところ、私もQM 2の大西洋横断を体験してからこの船の魅力に取りつかれた。

 

12年前出会った人々とは今も変わらずやりとりがある。今回のクルーズでもQM2での出会いはきっとつながっていく。

 

 

客室(グリル・クラス)

2016年の改装で大きく変わったクイーンズ・グリルとプリンセス・グリルと専用ラウンジ、該当の客室。グリル・クラスでは、肉料理の仕上げやデザートのフランベはテーブル横でメートル・ディーが仕上げてくれることが多い。ラウンジにはバーと落ち着いた席があり、食事前後でなくてもくつろぐ人が多い。写真の客室はプリンセス・グリル。バスタブとウオーキングクローゼット、広いバルコニーが実に快適。ブリタニア・レストランの客室はクイーン・エリザベスとほぼ同様。

CRUISE GALLERY
ペンアイコン取材メモ

[クイーン・メリー2]
ワールド・クルーズ(区間)14泊15日
日程:3月18日(土)~4月1日(土)
コース:香港~基隆〜上海~済州島〜釜山~長崎~沖縄~上海~香港
(※航海日省略)
クルーズ代金:31万3000円(内側)~109万3000円(クイーンズ・スイート)
総トン数:14万9215トン/乗客定員:2,691人

2017年6月号に掲載
関連記事
TOPへ戻る
シェアアイコン