●海と大地の恵みを心ゆくまで味わいつくす
静岡のご当地グルメ、なかでも清水の名物といえば、真っ先にマグロを思い浮かべる人は多いだろう。清水港は冷凍マグロの水揚げ量で日本一を誇り、キハダマグロ、クロマグロなどが水揚げされている。マグロのあらゆる部位を刺身や寿司、丼ものなど、多彩な料理で味わえるのが魅力だ。特にストップと声をかけるまでマグロが盛り放題の「まぐろいっぱい丼」は、水揚げ量がトップクラスだからこそ味わえるメニューの最たるものだろう。
ご飯の上にたっぷり盛られた漬けマグロは、濃厚な味わい。見た目もお腹も満たされる一杯だ。
駿河湾に面した静岡は、新鮮な魚介類のイメージが強いが、穏やかな気候と県内各所に湧水地があるほど清らかな水に恵まれ、肥沃な大地に育まれた美味も楽しめる。ブランド和牛「静岡そだち」もそのひとつで、柔らかく、きめ細やかな肉質が特徴。上品な旨みと口どけのよい脂の甘味といった持ち味を堪能するなら、ぜひステーキで味わいたい。
静岡の豊かな水は酒造りにも生かされており、日本酒のほか、近年ではウイスキーやビールも注目されている。「ウエスト・コースト・ブルーイング」は、用宗漁港の醸造所で造られているクラフトビール。冷蔵状態で仕入れた新鮮なホップと、用宗の地下60メートルから汲み上げた純度の高い井戸水を使って造り、I PAやペールエール、ピルスナーなどスタイルは多彩で、ビアバー「12/Shimizu」で楽しめる。
これらの美味に出会える店は、日の出ふ頭から徒歩25分圏内なので、寄港時に静岡グルメを満喫しよう。
●国際クルーズ拠点として進化中
1990年に「クイーン・エリザベス2」が初寄港して以来、国内外の多くの客船を受け入れてきた清水港。現在、国際クルーズ拠点に向けての整備が進行中だ。
2021年にCIQ機能が備わる国際旅客ターミナルと、乗客と市民の交流スペースとして活用できる芝生広場が完成。国際旅客ターミナルは約1000人の乗客の審査を滞りなく行える規模で、客船からターミナル入口までは屋根付きの伸縮式通路を設置。審査後はターミナルから現在整備中の屋根付きのバス乗降場へ。天候を気にすることなくスムーズなバスの乗降ができるように工夫されている。2022年度には屋根付きのバス乗降場と旅客待合所の整備が完了する予定。さらに将来的には「北東アジアクルーズの東日本における拠点化」を目指し、日の出ふ頭では15万トン級の客船が2隻同時に着岸できる岸壁の整備も国が実施中だ。
「来て喜ばれる港であると同時に、安全な港であることも大切です。コロナ禍の現状では、一般見学客のふ頭内への入場は、ギャングウェイが上がってから。感染症対策は船会社と足並みをそろえる必要があります」と静岡県港湾局の担当者。日本船の受け入れは再開したが、外国船の入港は未定。清水港が本来のにぎわいを取り戻す日を期待したい。