洋上で輝く、受け継ぐべき伝統工芸美の数々――日本工芸会と飛鳥クルーズとのコラボレーションがここに

洋上で輝く、受け継ぐべき伝統工芸美の数々――日本工芸会と飛鳥クルーズとのコラボレーションがここに
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2022.04.28
飛鳥Ⅱの船内に、日本の伝統工芸作品の数々が登場した。
先だって発表されていた、日本工芸会とのコラボレーションが具現化したのだ。
陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、諸工芸と、多岐に渡る作品群は140点超。
洋上で日本の伝統美と出逢えるうえ、社会貢献にもなる取り組みを紹介する。
写真=田村浩章 文=吉田絵里

 

船旅は出逢いの旅だ。例えば寄港地に魅力を感じて申し込んだクルーズでも、予期せぬ出逢いがさまざまにある。航行中の絶景だったり、船内イベントで参加したクラフト教室が思いのほかおもしろかったり、はたまたディナーで初めての食材を口にしたり。

 

飛鳥Ⅱの船上で、そんな新たな“出逢い”がまた増えた。飛鳥クルーズと日本工芸会がコラボレーションし、飛鳥Ⅱの船上に多数の伝統工芸作品が展示されることになったのだ。

 

●船内で日本の工芸美に出会う

 

飛鳥クルーズと日本工芸会がコラボレーションを発表したのは、2021年12月のこと。そのとき「洋上で伝統工芸作品の展示がなされる」とアナウンスされたが、それが実際に展示された様子を見て驚いた。文面から想像していたよりもはるかに作品点数も多く、大規模なものだったのだ。

 

船内で展示される作品数は140点超。フォーシーズン・ダイニングルームのエントランス付近や、ブックラウンジ「イー・スクエア」、そしてリドガーデンには複数の作品が棚に陳列され、船内の風景が変わった。そのほかエレベーターやプレミアダイニング「ザ・ベール」前、そして和室・游仙には、サイズの大きな作品が置かれ、存在感を放っている。それらはすべて日本工芸会の会員の作品であり、人間国宝の作品も多い。これだけの点数があるから、美術品をじっくり見て回るだけで、数時間は要するだろう。ここまで大規模な展示はなかなかなく、飛鳥Ⅱはまさにこのコラボレーションで洋上の美術館と化した。

6デッキ後方に設けられた陳列棚。それぞれの作品ひとつひとつ、じっくり観賞したい
CRUISE GALLERY
6デッキ後方に設けられた陳列棚。それぞれの作品ひとつひとつ、じっくり観賞したい
6デッキ前方のエレベーターホール前に飾られた作品。照明がさらに作品を際立たせる
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6デッキ前方のエレベーターホール前に飾られた作品。照明がさらに作品を際立たせる

 

●洋上に作品を置くための知られざる努力

 

これらの作品が展示された場所は、時に波の影響を受けて揺れることもある飛鳥Ⅱの船上だ。ここまでの展示をするには、かなりの工夫が必要だったのではないだろうか。担当者いわく、やはり「客船の特性上、揺れの問題が一番困難でした」とのこと。それに対しては「専門の業者の方による固縛作業を実施し、揺れ対策を行いました。作品によっては固縛作業が難しく苦労しました」とのこと。

 

展示された工芸品の数々は、当然ながらひとつひとつ異なる作品で、形状も素材も違う。それを1点1点展示場所にあわせて固縛、すなわち揺れがあっても動かないように固定する作業は、時間と根気が要される繊細な作業であることは想像に難くない。実際、作品を間近でしげしげ眺めると、見た目に影響しないようにさまざまに固定してあるのが見てとれる。

 

クルーが作品の展示位置を調整する作業現場に立ち会う機会があった。手にはしっかりと手袋をはめ、丁寧に作品を扱う様子を、こちらも息を凝らして見守った。こうした作業を140点超行ったというから、搬入までの道のりは決してたやすくなかったはずだ。

 

さらに担当者の方いわく、「作品の魅力を最大限引き出せるように、照明や湿度にも気を遣いました」とのこと。確かに作品には繊細な文様が施されたものもあり、それが照明によってキラキラとさらに魅力的に輝いている。作品の置かれた場所ごとに照明も違っていて、そんなひとつひとつの差異も興味深い。

 

洋上に並べられた作品は、今回のコラボレーションに賛同した日本工芸会所属の作家から応募があったものだという。飛鳥Ⅱの船上に置かれ、そして船旅の間に乗客の目に触れるとなれば、作家の創作意欲もさらに増すのではないだろうか。

正面からはわからないが、側面から見ると透明のパーツを使って固縛されているのがわかる
CRUISE GALLERY
正面からはわからないが、側面から見ると透明のパーツを使って固縛されているのがわかる
手袋をはめ、ひとつひとつの作品を丁寧に時間をかけて扱うクルー
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手袋をはめ、ひとつひとつの作品を丁寧に時間をかけて扱うクルー
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