洋上で輝く、受け継ぐべき伝統工芸美の数々――日本工芸会と飛鳥クルーズとのコラボレーションがここに
●地方創生に結びつく秀悦企画
さらにこの企画が秀逸なのが、作品が購入可能であること。しかも作品それぞれの脇に作家名とその作家が属する県名が記載されたプレートが置かれており、購入金額の一部は寄付されて伝統工芸の発展や地域振興などに役立てるシステムになっている。作品を愛でるだけでなく、気に入った作品を入手でき、さらにはその行動が地域貢献につながっていくという好循環のコラボレーションなのだ。
作品の脇に置かれたプレートを見ていると、まるで日本一周しているかのように思える。しかも京都府や石川県といった伝統工芸のイメージの強い地のみならず、その地名は多岐に渡る。たとえば漆器なら輪島塗などが有名だが、それ以外の地からの漆器の出品ももちろんある。撮影を担当したフォトグラファーと、「日本には本当に数多くの伝統工芸が受け継がれているんですよね」と、しみじみと語り合った。
しかも今後は寄港地でもその土地の工芸作品に触れて楽しめる寄港地観光ツアーを実施するなど、さまざまな催しを案内する予定だという。期待が高まるばかりだ。
●ゆったりとした時間で作品と向き合う
洋上に置かれた作品の数々を撮影しながら、フォトグラファーとともに「この作品のこの角度の見え方が好き」、「この作品はベッドルームに置きたい」など、あれこれと感想を述べた。気づいたのは、作品が置かれている場所の多くは、乗客が食事をしたりくつろいだりする場所だけに、自宅などの生活空間に作品を置くイメージがしやすいということだ。例えば和室・游仙では、手が届きそうな場所に作品が置かれており、床の間に飾ったらこんなイメージなのかと想像がついた。
さらに気づいたのが、船内に置かれた作品の数々は朝に夕に見え方が違ってくること。自然光が入ってくる日中には、さわやかな印象だった作品が、夜の帳が落ちるにつれ、照明の下で妖艶な輝きを持つ……そんな時間による作品の変化も楽しめる。船旅というゆったりとした時間の中で、第一印象だけでなく、時間をかけて作品を味わえるのだ。「日本工芸会×飛鳥クルーズ特設サイト」もオープンしており、作品や作家の背景についても知ることできるから、気になる作品についてすぐに調べられる。作品は1点ものだから、もし気に入ったものがあればクルーズの最初に購入するのがベストだ。しかし即決できない場合、クルーズの最後に購入することもできるし、さらには公式オンラインショップで購入することも可能だ。
●次世代に受け継ぐべきもの
それにしても、置かれた作品の数々の美しさにはため息が出るばかりだ。陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、諸工芸……作品のバリエーションは多岐に渡り、一口に「伝統工芸」といっても非常に奥のが深い世界だと感じられる。そのひとつひとつが緻密な美しさに彩られているのはもちろん、その背景には先人たちから受け継いできた、卓越した技が宿っている。飛鳥Ⅱの船上で落ち着いて見られるというのもあるのだろう、作品ひとつひとつが息をしているかのような、そんな迫力がある。
日本が誇る伝統美の数々を眼前にし、伝統工芸作品こそ次世代に受け継ぐべきものだと確信を持った。そうした取り組みに正面から取り組んだのが、今回の日本工芸会とのコラボレーション企画だ。飛鳥Ⅱでの旅の楽しさはそのままに、次世代に繋がるアクションが、そこにある。
飛鳥Ⅱに乗船する楽しみが、そして船上での新たな出逢いが、またひとつ増えた。