くつろぎと美食を携えて
ラグジュアリーの“極み”、アジアへ
●挑戦した新しいコンセプト
ミューズの新しい試みは、メイン・ダイニングを設けないところにある。グリル料理がメインの「アトランティード」、昼はスシ、夜は鉄板焼きの「カイセキ」、フランス料理の「ラ・ダム」など、計8カ所の多種多様なレストランから、好みの食を毎日選べるのだ。
初日は「アトランティード」での夕食。広々とした内装で、ミューズ初登場のレストランだ。前菜で注文したキャビアが瓶詰めでたんまりと出てきたことに大興奮。しかも追加料金なしとその気前のよさにも驚いた。
アジアンフュージョンスタイルの「インドシナ」は、トムヤムクンやフォーなどのアジア料理が中心。ほどよくスパイシーで、日本人の舌にも合う味付けだ。
晴天に恵まれた2日目、焼きたてのピザが食べられる「スパッカ・ナポリ」のテラス席に座ってビールを飲んでいた。シルバーシーオリジナルのハンバーガーがおいしいと聞いていたので、ここでも食べられるかウエイターに聞いてみたら、ルームサービスでのみ提供とのこと。仕方がないか……と残念に思っていると、「20分くらい待ってもらえれば、ここに運んでくるよ」と笑顔で提案してくれた。乗客の要望に柔軟に対応してくれる懐の深いサービスが、シルバーシーならではだと改めて実感したシーンだった。
好みを把握して飲み物を用意してくれたり、魚の骨を取り分けてくれたり、どれもラグジュアリーだと当たり前のサービスかもしれない。だが、シルバーシーはそれと同じくらいに気取らず、肩肘張らない雰囲気も大事にしている。これはラグジュアリーに慣れていない私でも、居心地のよさを感じる大きなポイントだった。
船内イベントはこじんまりとしているものの、和気あいあいとしたムードで楽しげだ。ラウンジで毎晩行われるショーは男女6人組で、乗客を巻き込んでのパフォーマンスは大いに盛り上がった。
●ミューズでアジアを訪れて
香港停泊時、多くの乗客が対岸に広がる光の競演に酔いしれていた。ミューズは船尾に3フロアに分かれたデッキスペースがあり、自分のお気に入りの場所で絶景を堪能できる。洋上から見る香港の夜景は何も遮るものがなく、小型船だからか、出港時はカラフルな高層ビル群を見上げる形で通り過ぎていき、その見事な迫力に思わず鳥肌が立った。
今回のクルーズは香港からフィリピン、マレーシア、シンガポールをめぐるコースに区間乗船した。船内では「日本人?」と話しかけられることも多く、日本が好きだと話すカナダ人の男性や、東京に行ったことがあると熱心に語るイタリア出身の女性にも出会った。 今年の春と秋に実施するミューズの日本発着を前にして、乗客のアジアへの関心の高さをうかがい知ることができた。
春のコースは完売しており、秋は少し長めの9泊と13泊のコース。日本人は乗客の2割を想定しており、インバウンド目線で日本の良さを再発見できるクルーズとなりそうだ。
シルバーシー・クルーズは2 0 1 8年にロイヤル・カリビアン・クルーズ・リミテッドの傘下に入った。アジアの中でも重要視している日本市場の拡大に力を注ぐため、日本支社を新たに設立。アジア地区の強化に大きく乗り出した。
2019、20年にはミューズと同型の新造船2隻がデビュー。さらに新クラス2隻、ガラパゴス探検船1隻と計5隻発注済みだ。シルバーシーのさらなる進化とアジア進出の今後にも期待したい。
取材協力:シルバーシー・クルーズ日本支社
日程:2018年11月19日(月)〜12月1日(土)
コース: 香港〜マニラ〜ロンブロン島〜コロン島〜プエルト・プリンセサ(バラワン島)〜コタキナバル〜ムアラ〜クチン(サラワク)〜シンガポール ※取材は香港〜マニラ
クルーズ代金:7,800ドル〜
船名:シルバー・ミューズ(シルバーシー・クルーズ)
総トン数:4万700トン
乗客定員:596人/乗組員数:411人