CRUISEforSDGs――クルーズがつくる新しい未来

Environment, Blue Ocean
青い海をこれからも

世界の海を航行するクルーズ客船にとって、水とごみの問題は切実だ。いずれも処分時の厳格なルールがあり、さらに一歩踏み込んだ対応をとるクルーズラインもある。

 

そして問題解決のためには、船会社の努力だけでなく、私たち乗客側の行動も問われている。

 

私たちの「小さな便利」は、なんと多くの無駄に支えられていることだろう。一回限りのプラスチック個包装は、朝食時のはちみつやジャム、ヨーグルト、コーヒーミルクのほか、化粧品やシャンプーなどさまざま。ペットボトルにいたっては、ほぼ毎日、何本も買うはめに(30年前までは、こんな習慣はなかったはず!)。プラスチックが海の生物に与える影響を考えると……。

 

ごみや排水を減らすため、クルーズ中も私たちにできることはたくさんありそうだ。例えば、毎日のタオル交換を数日おきにすることは真水の節約になるし、ビュッフェで食べきれる量だけをとれば、フードロス削減につながる。つい買ってしまうペットボトルは「マイ水筒」に替えてみるのはどうだろう。

 

これら一つ一つは小さなことかもしれないが、チリも積もれば山となる。それはきっと新しい未来のクルーズにつながるはずだ。

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CRUISE GALLERY
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■バラスト水を無害化して 生態系を守る

 

生物多様性の観点から見直しを迫られているのが「バラスト水」。船体のバランスをとるための「重し」ともいえる水で、水と一緒にプランクトンや海藻、小さな貝などを取り込んでしまうため、別の港で排出する際に外来種として生態系を壊してしまう、という問題が。そこで、バラスト水を無害化してから放出する装置が開発され、RCLでは船隊の9割に導入、「飛鳥Ⅱ」や「にっぽん丸」でも採用している。

 

■まずは使い捨てプラスチックを減らすことから

 

陸上のホテルやレストランでも使い捨てプラスチックを減らす取り組みは広がってきた。クルーズラインもしかり。環境意識の高いノルウェー拠点のフッティルーテンでは、旅行業界でもいち早く2018年夏に使い捨てプラスチックをすべてやめた。ポナンは今年中の撤廃を目指している。「飛鳥Ⅱ」では2019年以降、プラスチック製ストローをやめて紙ストローに切り替え、年間10万本ものストローゴミを削減。「にっぽん丸」ではテイクアウト用容器をプラスチックから紙製に変更している。コスタクルーズではスパで使うコスメやランドリーの洗剤は個包装をやめ、マイクロプラスチック不使用のものに切り替えている。

 

■便利なペットボトルとどう向き合うか

私たちの暮らしにすっかり根付いたペットボトル。特に旅先では便利なことから、つい購入してしまう人も多いだろう。クルーズ各社はペットボトルの削減に取り組んでいて、ノルウェージャンクルーズラインでは紙製のボトルに変更。ポナンの船内では乗客に水筒を配り、船内に設置したウオーターサーバーで水をくんでもらう仕組みをとっている。ガラパゴス諸島に就航する「シルバー・オリジン」では、全客室に浄水器を設置。すでに数千本ものペットボトルの削減に成功している。

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ノルウェージャンクルーズラインの紙製ボトル
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ノルウェージャンクルーズラインの紙製ボトル

■貴重な真水を大切に使う、高度な浄水システム

 

船上で貴重な「水」は、飲料用など一部を港で給水し、風呂やトイレ用などは海水から造水するのが一般的。RCLは9割もの水を船上で造水し、寄港地の貴重な水を使わないことで地元の負担を減らしている。食器洗い機や洗濯機、シャワーヘッドを節水タイプに変更したり、空調設備の結露の水まで洗濯用に再利用する工夫も。ポナンは高度な浄水システムを導入し、真水の給水なしでも航行できる態勢をとる。

 

■廃棄物の再利用、フードロス削減も

 

廃棄物を減らしたうえで、さらに再利用する取り組みも。ポナンはごみの7割を燃料として加工・再利用できる処理設備を導入した。2025年までにすべての廃棄物のリサイクルとトレーサビリティの徹底を目指している。食に注力するコスタクルーズでは、フードロス削減のため、500の調理工程を見直したり、食材をイタリアのフードバンクに寄付するなどの取り組みを行っている。

 

■錨泊中にもサンゴ礁を傷つけない新技術

 

錨(アンカー)を下ろすことなく船を定位置にとどめておくことのできる「ダイナミック・ポジショニング・システム」(DPS)。これは作業船などで使われている技術だが、沖留めの際に海底のサンゴを傷つけないことから、近年はポナンやシルバーシーなど最新鋭の探検船に搭載されるようになってきた。

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