大型客船によるクルーズマーケットは現在、カーニバル・クルーズ・ライン、RCI、NCL、MSCクルーズ、コスタクルーズ、プリンセス・クルーズ、ホーランド・アメリカ・ライン、セレブリティクルーズなどが牽引している。10万トン級、20万トン級の客船は3000人から6000人以上の乗客を収容できる。特定の港で乗降客を入れ替える発着クルーズが基本で、4泊から7泊クルーズが主流だ。

 

クルーズエリアや季節、クルーズ日数、船の新旧、為替などにもよるが、クルーズ代金の価格帯は平均で1泊当たり1万円~2万円前後が相場。代金は客室の予約状況によって日々変動するため、タイミングが良ければ1泊当たり5000円以下で乗船できたり、上級客室の方がグレードの低い客室より安く利用できたりするケースもある。2世代、3世代で乗船する客も増えており、その受け入れのための施設、アトラクションも充実している。子供からシルバーエイジまで楽しめるのが最近のクルーズのトレンドだ。

日本来航予定もある「MSCベリッシマ」船上の子供向けプールエリア。子供は大喜びするだろう
ノルウェージャンクルーズラインの最新船には、スピード感を楽しめるゴーカートも。洋上には大人が夢中になるエンターテインメント施設も多い

●存在感が大きい小型客船

 

富裕層をターゲットに数十日、数カ月間のロングクルーズを得意とするラグジュアリークルーズも存在感を示している。RCIグループのシルバーシー・クルーズ(総トン数:5800トン~5万4700トン)、ハパグロイド・クルーズ(総トン数:1万5651トン~4万2830トン)、NCLグループのリージェント セブンシーズ クルーズ(総トン数:2万8803トン~5万5254トン)、カーニバル・グループのシーボーン・クルーズライン(総トン数:3万2346トン~4万1865トン)などが代表格だ。独立系の船社、バイキング・オーシャン・クルーズは高級リーバークルーズとともに、小型客船(総トン数:3万157トン~4万7842トン)でラグジュアリークラスの航海を展開している。

 

代金の価格帯は1泊当たり8万円~10万円以上する場合が多いが、クルーズ代金にはアルコール代金やチップ、寄港地観光代、ポートチャージなど全ての費用が含まれる。乗客と乗組員の人数比率は限りなく1対1に近く、乗客定員を抑えることで、小型でありながらゆったりした空間と最上級のホスピタリティーを提供している。

 

全室スイート、ベランダ付きがスタンダードで、室内は広く、調度にも高級感が漂う。寄港地は北極・南極を含む全世界をカバーする。ドレスコードは船、クルーズによって異なるが、大型客船と同様に夜の服装に関しては自由になってきた。時にはフォーマルナイトの日もあるので、タキシードやドレスを新調する必要はないが、それなりの装いをした方が無難だろう。

格付け本で最高評価を得るハパグロイド・クルーズの「オイローパ」。高いホスピタリティーを誇る
小型高級船を運航するシルバーシー・クルーズは、サービスに加え、上品な船内インテリアも特徴

キュナード・ライン(船型9万49トン~14万8528トン)の場合、「クイーン・メリー2」、「クイーン・エリザベス」、「クイーン・ビクトリア」といった大型客船を運航しているという理由だけで、カジュアル客船として片付けるわけにはいかない。客室クラスによって利用できるレストランやラウンジは明確に異なり、上級クラスの乗客はラグジュアリークルーズを体験できる。大西洋航路時代から続く英国の伝統を色濃く残しつつ、トッププランドの位置を現在まで守り続ける、唯一無二のクルーズ会社と言えるだろう。

 

クイーン・エリザベスの船内。高級木材を使った壁画など、クラシカルな雰囲気が漂う
大きなボールルーム(ダンスフロア)を擁すのも、キュナード・ラインの客船の特徴。ダンスタイムを楽しみにする乗客も多い

小回りの利く小型客船は、極地やガラパゴス、アマゾンなどをめぐる探検クルーズに多く投入されている。クルーズ代金はラグジュアリークラスの客船に匹敵する場合も少なくない。探検クルーズ専門の老舗リンドブラッド・エクスペディションズやクォーク・エクスペディションズは毎年、耐氷・砕氷能力のある客船や、航海エリアに適した小型客船をチャーターしてユニークな冒険旅行を実施している。この種の客船は時々日本にもやって来て、小さな港町や島を「探検」している。

 

近年、ラグジュアリークラスのポナン(船型9900トン~3万トン)、ノルウェー沿岸急行船で知られるフッティルーテン(2664~2万889トン)が新規参入して注目株になっているほか、シルバシーやシーボーン、リージェントなどもエクスペディションクルーズを展開している。秘境をめぐるクルーズは環境保護意識の高まりと共に年々盛り上がりを見せている。船内では専門家のレクチャーを聞き、極地では防寒パルカを着てゾディアックに乗り込み、ときには搭載されたヘリコプターで遊覧飛行を楽しむ。そんな貴重な体験ができるアクティブなクルーズだ。

北極点にも到達したポナンの「ル・コマンダン・シャルコー」。南極観測船「しらせ」と同等の砕氷機能を持つ客船だ
ポナンは毎夜フランス料理のフルコースを提供する。高級探検船は、極地を探訪しつつ、船内では上質なクルーズ体験が可能

北半球は夏、いよいよクルーズシーズンもピークを迎える。日本船は動き続けているし、外国客船による日本発着クルーズの募集広告も目にする。日本の客船にも来航予定の大型の外国客船にも、クルーズの醍醐味がぎっしり詰まっている。新しい日常の新しいクルーズ。ぜひ体験したいものだ。

 

参考資料
https://cruising.org/en/
https://cruisemarketwatch.com/
https://www.carnivalcorp.com/
https://www.royalcaribbeangroup.com/
https://www.nclhltd.com/

 

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