美しき欧州の国々を、客船で再び
オーシャニアクルーズ「マリーナ」北欧クルーズ乗船レポート
ラトビアのリガでは、8人ほどが乗った小さなバスで郊外に小さな農園を持つ77歳のヘレナさんを訪ねた。ラトビアの農家の歴史や現状を聞きつつ、採れたて野菜やハチミツを味見したり、自家製のお茶やケーキをいただいたりした。
エストニアのタリンも私は3度目だったので、「ゴー・ローカル」のツアーに参加。旧市街のすぐ近くながら、エストニアの若い人々が住んだり、昼夜問わず集まるエリアに地元の青年が連れていってくれ、現代美術館やサステナビリティーを意識したショップ、レストランに案内してくれて、タリンの別の一面を知ることができた。
多くのツアーが少人数制で内容も掘り下げているので、乗客としてはうれしい。関係部署のスタッフの努力や苦労に頭が下がる。
夏は日が暮れるのが遅いエリアなので、タリンやヘルシンキ(フィンランド)は出港が夜11時、ストックホルムはオーバーナイトだった。地元のレストランで夕食を食べて散歩しながら帰船したり、船内のディナー後、街の夜景を観光船で眺めるツアーに参加することもできた。
私がイタリアに来た6月はすでに米国からも多くの観光客が欧州に来ていた。春から秋まで心地よく過ごせる地中海クルーズも今年は盛況だろう。北欧クルーズはベストシーズンが若干短くなるが、短いからこその魅力がある。
7〜8月でも暑すぎず、街は花や緑にあふれる。そして地元の人もこの美しい季節を逃すものかと、街や海辺に繰り出す。短い夏をそれぞれに満喫しようとする人々と美しい街並みが相まって、輝きを増すのが北欧クルーズの魅力だと、今回はしみじみと感じた。
ゴットランド(スウェーデン)では街ゆく人の多くが中世の服装で歩いているので、何ごとかと聞くと、「8月半ばにある“中世週間”という一週間のお祭りだよ」と教えられた。ボーンホルム島でも広場のベンチに座ると、「もう少ししたら目の前の舞台でジャズの演奏が始まるよ」と地元の人がビール片手に教えてくれる。
ヘルシンキの港には仮設のプールとサンデッキができていて多くの人でにぎわっている。
北欧クルーズではいつもアーキペラゴを眺めるのが楽しみだが、今回は実際にボートで一つの島を訪ねて、可愛らしいサマーハウスで過ごす人々と言葉を交わすこともできた。貴重な“北欧の夏のおすそ分け”をいただいた気分だ。
日本もやっと入国規制が緩和された。再び、客船でベストシーズンのエリアをめぐる旅で心豊かな時間を過ごしてみてはどうだろう。