上田寿美子氏夫妻も乗船
ぱしふぃっくびいなすで航く
北前航路に思いをよせて

●フルコースでおいしい瀬戸内

 

今年の春クルーズ以来、2度めとなる「びいなすマルシェ」の秋バージョンも楽しみにしていたことのひとつだ。2日目の特別ディナーでは「~瀬戸内協奏曲 Concerto de Seto~」と題したフランス料理のフルコースを堪能。一皿ごとに瀬戸内の豊かな自然に育まれた山海の美味がとり入れられていた。

 

例えば、オードブルには愛媛産カンパチと広島赤鶏、スープにはプリっとした食感が楽しい小豆島産のハモが。肉料理には深いコクがあってやわらかな口当たりの香川産オリーブ牛を味わう。赤ワインビネガーのほどよい酸味とハミチツを加えてほんのりと甘みが広がるソースとの相性もすばらしい。

 

締めくくりのデザート「レモンのエクレアと獺祭ショコラブラン」にも驚いた。散りばめられたホワイトチョコレートを口に含むと、鼻から抜けるほのかな日本酒の香り。最後まで瀬戸内を感じる満足のディナーとなった。

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食事はもちろん、船内イベントでレクチャーを受けた神戸ワインも堪能したという上田氏夫妻 左:特別ディナー「~瀬戸内協奏曲 Concerto de Seto~」。食用金箔がテーブルに用意されるという、うれしいサプライズも
初日と最終日の和食ディナーでは、瀬戸内や北陸の名物を使った料理を味わった

●眺望に船旅の面白さを再認識

 

終日航海日の瀬戸内海クルーズは、以前乗船したときとは違うコースと聞き、どんな景色に出会えるのだろうかとわくわくしていた。

 

8時半過ぎに船首側のデッキに向かうと、瀬戸大橋が圧倒的なスケール感で近づいてくる。タイミングよく、橋上を走る電車もしっかり見ることができた。橋を通過してから約3時間後、次の見どころがもうすぐ。右手に馬島が見えると、来島海峡大橋が見えてきた。船体はゆったり弧を描くようにして進み、徐々に橋の存在感が増してくる。「手が届きそうなほどの距離感に、本州と四国が橋でつながっていることが実感できます。瀬戸内海のような多島美を楽しめるのは、国内クルーズの魅力ですね」と上田氏。橋のたもとにドーム型の施設が並んでいるのがはっきり見えるほど陸地が近い。

 

ところで、橋が架かる来島海峡は潮流が速く海の難所として有名な場所。船の航行に関しては右側通行が原則だが、来島海峡では船の乗りあげを防ぐため、潮流が北流時の場合は右側航行で、南流時の場合は左側航行するという、世界でも珍しいルールが定められているという。今回は来島海峡を通過するときだけ海峡入口で左側通行になり、海峡出口では右側通行に戻された。

総延長4.1キロメートルの来島海峡大橋は3つの吊り橋を直線的につないだ世界初の三連吊り橋
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総延長4.1キロメートルの来島海峡大橋は3つの吊り橋を直線的につないだ世界初の三連吊り橋

海の難所を抜けて約1時間半後、愛媛県の釣島水道にさしかかると、左手の視線の先に小山が緩やかに裾野を広げる興居島が、右手には中島が見えてきた。周りに浮かぶ岩のような小さな島々が創り出す景観が美しい。瀬戸内海クルーズは航路によって景色が変化し、受ける印象がいつも異なるのが魅力ではないだろうか。

 

20時を迎える頃には関門海峡を通り抜け、ぱしふぃっく びいなすは北前航路の沖乗りコースに沿って隠岐諸島を目指した。

 

翌朝、隠岐諸島周遊で船旅の醍醐味を再認識した。遊覧は知夫里島の赤壁からスタート。約6 0 0万年前の火口跡という赤茶けた崖の荒々しさに、どんな景観が待っているのか期待が膨らんだ。

瀬戸内海クルーズのは美しい朝焼けの眺めからスタートした
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瀬戸内海クルーズのは美しい朝焼けの眺めからスタートした

知夫里島を後にし、次は西ノ島の国賀海岸沖を航行する。内部に美しいコバルトブルーの海が広がる天然の洞窟「明暗の岩屋」、海に大きくせり出した巨大な岩のアーチ「通天橋」、そして海抜2 5 7メートルの大絶壁「摩天崖」と変化に富んだ海岸の浸食地形は約7キロも続く。断崖に映る光と影のコントラストが、景色のダイナミックさを際立たせていた。

 

大中小の3つの奇岩が並ぶ三郎岩を通過し、船は隠岐カルデラ内部へ。先ほどの強風がうそのように、風は柔らかで、波も優しい。ここは大規模な火山活動と浸食でできたカルデラだ。ぐるりと見渡すと、知夫里島、西ノ島、中ノ島の3つの島が外輪山のように見え、カルデラ内を航行していることが実感できる。漁船が停泊する集落や丘陵に立つ風車など、人の営みを感じる景色を楽しんだ。

隠岐諸島周遊のハイライトともいえる、西ノ島の国賀海岸の眺め。火山活動がもたらした壮大なスケールの景観が見事
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隠岐諸島周遊のハイライトともいえる、西ノ島の国賀海岸の眺め。火山活動がもたらした壮大なスケールの景観が見事
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