にっぽん丸モーリシャスプレシャスクルーズ
滞在型クルーズに見る新たなスタイルの可能性

豊かな珊瑚礁の海を次の世代へつなぐ

そしていよいよこのクルーズ一番の目的地、モーリシャスの首都ポートルイスが近づいてきた。入港日の朝には鮮やかな虹が架かり、クジラが現れ潮を吹いてくれた。島全体が美しい環礁に囲まれ、詩人のボードレールが「レースに縁どられた島」と表現したのを、この身をもって体感した。

 

早くも大自然の豊かさを感じていると、岸壁で日本の国旗や社旗などを掲げて迎えてくれた一団がいた。商船三井客船の親会社にあたる商船三井の関係者だ。2020年に商船三井が運航していた貨物船が、モーリシャス沖合で座礁してしまった。この事故から、現在でも約2年半にわたり環境回復を重点的にサポートし、ひいては島民の教育環境や生活環境などの改善に貢献している。今回のクルーズもその一環。もちろん今回のクルーズ中に、船内の講演イベントを通じて、乗客にもその背景が周知されている。

 

クルーズ船の寄港自体がモーリシャスの社会貢献になるが、それ以上にオプショナルツアーが興味深い。例えば「にっぽん丸農園inモーリシャス・さとうきび収穫体験と北部観光」では、島の基幹産業のひとつであるサトウキビ畑の一部をにっぽん丸が借り切って、ツアー参加者が島民の仕事を体験できる。観光地もめぐりながら、特産品ができるまでの作業を体験し、サトウキビ土産を選ぶという新たなツアースタイルに仕上がっていた。「NGOと地元の施設訪問」では、現地の学校や障害者支援施設を訪問し、地元住民との交流を図る。60名の募集人員は定員に達し、満員での催行となった。ほかにも自然体験やリゾート滞在、食事付きの島内めぐりなどの観光ツアーも。停泊を生かしたオーバーナイトツアーでビーチの夜を過ごすもよし、世界遺産のル・モーン山を眺めたり、世界で3カ所でしかできないというライオンと歩くアクティビティーも人気だった。実に11種類のバラエティーに富んだツアーも3泊4日の滞在だから十二分に楽しめるというもの。まさに「モーリシャスプレシャス」な内容の寄港となった。

 

今回はモーリシャスを中心に、長い航海日と合わせてインド洋の魅力をしっかりと感じることができた。地中海クルーズやカリブ海クルーズは良く耳にするが、インド洋クルーズというのは日本人にはなじみがない。時節柄、いくつもの寄港地をめぐるよりも、最小限の国に絞ってじっくりと滞在するスタイルが選ばれた。そういった意味でもこのような「少寄港・長期滞在型クルーズ」は、航路設定に変化を生む可能性さえも感じた。2年10カ月ぶりに実施された日本発の海外クルーズは、さまざまな意味で歴史に残るクルーズとなるだろう。

にっぽん丸モーリシャスプレシャスクルーズ 滞在型クルーズに見る新たなスタイルの可能性
ポートルイスにはかつて奴隷を保護した施設があり、世界遺産になっている
CRUISE GALLERY
にっぽん丸モーリシャスプレシャスクルーズ 滞在型クルーズに見る新たなスタイルの可能性
ポートルイスにはかつて奴隷を保護した施設があり、世界遺産になっている
にっぽん丸モーリシャスプレシャスクルーズ 滞在型クルーズに見る新たなスタイルの可能性
モーリシャスで活動するNGOを訪ねた際に子供たちが見せてくれたお芝居
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にっぽん丸モーリシャスプレシャスクルーズ 滞在型クルーズに見る新たなスタイルの可能性
モーリシャスで活動するNGOを訪ねた際に子供たちが見せてくれたお芝居
にっぽん丸モーリシャスプレシャスクルーズ 滞在型クルーズに見る新たなスタイルの可能性
サトウキビ収穫体験では実際に刈り取ったものが精糖され、後日船に届いた
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にっぽん丸モーリシャスプレシャスクルーズ 滞在型クルーズに見る新たなスタイルの可能性
サトウキビ収穫体験では実際に刈り取ったものが精糖され、後日船に届いた
ペンアイコン取材メモ

にっぽん丸で航く モーリシャスプレシャスクルーズ
〜インド洋を巡る 楽園の船旅〜
日程:2022年12月15日(木)〜2023年1月31日(火)
コース:横浜~石垣島~シンガポール~モルディブ~モーリシャス~マダガスカル~シンガポール~横浜
クルーズ代金:181万円(スタンダードステート)〜815万円(グランドスイート)
船名:にっぽん丸(商船三井客船)
総トン数:2万2472トン
乗客定員:449人(最大)/乗組員数:230人

『CRIUSE』2023年春号に掲載
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