八代港/熊本県「受け継がれるレガシーと恵みの海に出会う旅へ」
【特集】美しき港町へ

八代港/熊本県「受け継がれるレガシーと恵みの海に出会う旅へ」 【特集】美しき港町へ
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2023.03.30
桝席に柱がなく、舞台を見やすいのも特長の八千代座。人力で動かす廻り舞台、スッポン(セリの一種)もある。正面左端の広告看板は千代の園酒造の起源である商店のもの
山鹿
芝居小屋や藩主御用達の湯が
いにしえへ心運ぶ豊前街道
山間には人気のワイナリーも

かつて豊前街道の宿場町であり、ノスタルジックな雰囲気にほっこりと和むのが、県北に位置する山鹿だ。1000年余り前の書物に登場する温泉郷で、菊池川の水運により、米などの集散地としても栄えた街だ。

 

豊前街道は熊本から豊前小倉(今の北九州市)に至る道で、参勤交代路の1つだった。街中を南北に延びる街道沿いには、明治創業の「千代の園酒造」などの老舗や、米蔵を改装した飲食店などが昔ながらに軒を連ね、古き良き日本を感じながら散策を楽しめる。

 

千代の園酒造はお屠蘇として飲む、熊本伝統の赤酒を今も作る稀少な酒蔵
CRUISE GALLERY
千代の園酒造はお屠蘇として飲む、熊本伝統の赤酒を今も作る稀少な酒蔵
豊前街道の街並み。この少し先に菊池川が流れる
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豊前街道の街並み。この少し先に菊池川が流れる

名所の1つ、芝居小屋の「八千代座」から、さっそく街道を歩く。1910年に完成し、大正時代の姿で平成に再生したこの芝居小屋では、坂東玉三郎、市川海老蔵やJポップのアーティストなどが公演してきた。

 

中に入れば、開業当時の店々の、復元された広告看板が賑やかに天井とその周りを飾り、両側には八千代座のロゴ入り提灯もともって華やか。客席からは今にも喝采が聞こえてきそうだ。

 

この少し先にたたずむのが、大正期の建物を再利用した「山鹿灯籠民芸館」。伝統の和紙工芸、「山鹿灯籠」も街の名高いレガシーだ。夏の「山鹿灯籠まつり」で、浴衣の女性が頭に掲げて踊る「金灯籠」はその代表格。館内には、各地の寺院などを細部まで再現した、多くの傑作を展示する。和紙とのりだけで作るとは思えない、その精巧な造形には驚嘆するばかり。

吹き抜けを多くの金灯籠が彩る山鹿灯籠民芸館
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吹き抜けを多くの金灯籠が彩る山鹿灯籠民芸館
豊前街道ではポストにも金灯籠が

さらに街道を進むと、山鹿温泉の「さくら湯」がある。江戸時代に細川忠利公が造った御茶屋(参勤交代で藩主などが憩い、泊まった施設)がルーツ。1872年に市民温泉となり、2012年に往時の姿で再生した。今も多くの市民が通う。江戸時代に殿さまと重臣用の御前湯、のちに貴賓湯となった「龍の湯」もよみがえっている。見れば、すぐそばの豊前街道を、豪勢な大名行列が進んだ昔へはるかに心誘われる。

唐破風の玄関が趣あるさくら湯
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唐破風の玄関が趣あるさくら湯

郷愁香る街道以外に、訪ねたい美食のスポットがある。まず自社農園も持つ、山間の「菊鹿ワイナリー」へ。雨は電動式レインカットハウスで防ぐなど、栽培の工夫も重ね、「日本ワインコンクール2022」の「欧州系品種・白」部門で「菊鹿シャルドネ樽熟成2019」が最高点で金賞に輝いた。地元産シャルドネによるワインは、トロピカルな風味も伴う柑橘系で、奥深さもある。土地独自の香味が何とも魅力的だ。

主力の「菊鹿シャルドネ」シリーズ。樽や酵母などを変えて作った数種類をブレンドし、つねに菊鹿らしい香味を醸す
試飲は全商品が可(有料。提供ワインは時期により変更あり)

一方、裏山のタケノコや山菜など、季節ごとの地元食材による精進料理で名高いのが「日輪寺 南無」。料理は素材自体の醍醐味が口に広がる、体に優しい味わいだ。

 

境内の、風情ある庭を見下ろす店内では時間もゆるりと流れ、また訪れたくなること必至。八代からの、熊本の旅プランは尽きない。

赤穂義士とゆかりの「日輪寺」
全部で3つの空間があり、要予約。境内もぜひ散策を
境内の「日輪寺 南無」の「南無膳」は全18品におかゆと和菓子、抹茶がつく。料理は住職ご一家の手作り
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境内の「日輪寺 南無」の「南無膳」は全18品におかゆと和菓子、抹茶がつく。料理は住職ご一家の手作り
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