待ち望まれた人気コラボ!飛鳥Ⅱ×BLUE NOTE TOKYO
洋上でジャズにたゆたう、上質な大人の週末
また、すぐに会いに来る
下船日の朝。昨日までの天気が嘘のように、空は晴れ渡り、暖かな陽射しが降り注いでいた。この二日間、窓の外の景色はずっと霞んでいたため、きらきらと輝く横浜の街並みが目の前に広がっていることに、どこか不思議な気持ちになる。
下船の準備は前夜のうちに済ませていたため、朝はフォーシーズンズ・ダイニングルームで和朝食をゆっくりと楽しみ、その後は下船の時間を待つばかり。
月曜の朝らしく、いくつかメールが届き始めていた。気持ちを切り替える意味でも、PCの電源が使えるブックラウンジ・e-Square(イー・スクエア)へ。PCを開いただけでコーヒーを味わいながら、この旅の余韻に浸った。




これまでにいくつかクルーズを経験してきたが、「飛鳥Ⅱ」という名前を耳にしなかった旅は一度もなかった。「飛鳥Ⅱに乗ったことはある?」「いつかは飛鳥Ⅱに乗りたい」「やっぱり飛鳥Ⅱの旅は忘れられない」。どの航路でもそんな会話が聞こえてきた。今航の直前には、宮崎県でアメリカ人から「飛鳥Ⅱってどう?」と尋ねられたほどだ。飛鳥Ⅱは、クルーズ好きにとって憧れの象徴であり、確固とした存在感がある。
たった2泊3日の短い乗船だったが、なぜ多くの人がそこまで語るのか、その理由がほんの少しだけわかった気がしている。食事のおいしさや施設の充実ぶりといったわかりやすい魅力でも十分だが、それだけでは語り尽くせない“何か”が、この船には確かにある。
第一に、「食事」が心地よい。
おいしいことはもちろんだが、それ以上に“シーン全体”が心地よいのだ。メインダイニングでのきめ細やかなサービスは言うまでもなく、ビュッフェにおいても例えば、料理の盛り付けが美しく、取り分けられた後でも崩れずに美しい状態が保たれていること。薬味やドレッシング類も最小限の量が清潔に並び、こまめに取り替えられている。汚れが放置されていたり、器具がベタついていたりということは皆無だった。
ある時、ケーキを取ろうとトングに手を伸ばした瞬間、スタッフが新しいトングをさっと差し出してくれた。よく見ると、置かれていたトングにほんの少しだけクリームが付いていたのだ。そんなわずかな変化にまで気づき、即座に対応できる配慮に感動した。
第二に、「清潔さと快適さ」が際立っている。
飛鳥Ⅱは前船「クリスタル・ハーモニー」時代から数えて2021年に就航30周年を迎えたが、それをまったく感じさせないほど、内装はモダンで美しく保たれている。部屋のテレビで「飛鳥物語」という船にまつわるドキュメンタリーが配信されており、たまたま見た清掃スタッフの密着映像に驚かされた。「昨日よりもきれいに」をモットーに掃除をする姿にプロ意識を感じた。つい窓やサッシ、ソファの隙間など普段なら気にしないところまでチェックしてしまったが、どこを見ても清潔だった。
第三に、「スタッフとの距離感」が心地よい。
どのスタッフも少し話してみると人懐っこくフレンドリーなのだが、こちらから一歩踏み込むまでは、決して押しつけがましくならない絶妙な距離感で接してくれる。この「構われすぎない自由さ」は、船のサイズ感も手伝っているのかもしれない。誰にも干渉されずに静かに過ごすことも、航海の中で自然と人とつながることもできる、自由な空気が流れている。
こうして書いてみると、どれも一見ささいなことかもしれない。けれど、それを当たり前のように徹底し、常に上質な空間として成立させている飛鳥Ⅱは、やはり憧れの世界を体現している。
たった2泊3日でも、心に刻まれる旅がある。
人生の階段を一段登るたびに、この船はその時の自分にふさわしい風景を見せてくれる。飛鳥Ⅱはそういう存在なのだと思う。きっと次に乗るときには、また違う景色が見えるのだろう。いつかではなく、またすぐに、きっと。そんな思いを胸に、飛鳥Ⅱを後にした。

【取材メモ】
JAZZ ON ASUKAⅡ with BLUE NOTE TOKYO
日程:2025年3月15日(土)~17日(月)
コース:横浜~(終日航海)~横浜
船名:飛鳥Ⅱ(郵船クルーズ株式会社)
総トン数:5万444トン
乗客定員:872人(最大)/乗組員数:約490人