にっぽん丸が魅せた
雨の「プレミアム」な船旅

 

翌日も雨は降り続いていた。もともとは秘境で知られる瀞峡で川下りに参加しようと思っていたが、川が増水したため、運航休止だという。

 

にっぽん丸の船内に案内カウンターを出していた新宮市の観光課の方も「申し訳ありません……では、こちらはどうでしょう」と別案を提案してくれた。

 

天候に左右されるのは旅のつきものだ。けれども昨日からにっぽん丸のクルーも、コンサートの関係者も、そして地元の方々も、最善を尽くして「雨の熊野」を楽しんでもらおうとしてくれる。

 

紹介してもらって訪れたのは、地元の名産物である「めはり寿司」がおいしいというお店。エプロンに三角巾を付けた地元のお母さんたちが、手際よくめはり寿司を包んでいる。三井オーシャンクルーズでは、寄港地観光ツアーの一環として、このめはり寿司作り体験も用意したことがある。

 

昔から古道を歩いたり、畑仕事をする際にお弁当として持っためはり寿司。いただくと心地よい塩気があり、シャキッと元気が出る味だった。

 

めはり寿司を筆頭に手作りの品々が評判の「かあちゃんの店」。地元の料理上手なお母さんたちが心を込めて料理してくれる

その後訪れた瀞峡は、奈良県・三重県・和歌山県にまたがる国特別名勝の大峡谷。高さ50メートルの断崖が1キロ以上続く日本屈指の景勝地で、いにしえからその幽美さで知られてきた。船に乗っての川下りはできなかったが、これまた船内で新宮市の観光課の方に紹介してもらった瀞ホテルからの景観は見事だった。

 

「紅葉の時期もきれいですが、新緑はさらにおすすめです。特に雨上がりは緑が輝いて見えますよ」。そんな瀞ホテルのご主人の話に、ここに導かれてきたご縁に感謝する。眼前では蛇行した川が広がり、次の瞬間、そこにキラリと太陽が差し込んできた。新緑がキラキラと輝く様子に、ほれぼれとした。

 

瀞ホテルの店内から望める、瀞峡の絶景。蛇行した川とそそり立つ断崖、そして新緑のコントラストに酔いしれた。ここで川下りやカヤックを楽しむ人も多い
CRUISE GALLERY
瀞ホテルの店内から望める、瀞峡の絶景。蛇行した川とそそり立つ断崖、そして新緑のコントラストに酔いしれた。ここで川下りやカヤックを楽しむ人も多い
100年以上の歴史を持つ瀞ホテル。かつてはこの川をイカダで渡る人たちの宿泊施設だった
現在はカフェとして営業。昼食は要予約

新宮出港時は、空には太陽が光っていた。航海の安全を祝う太鼓の音に続いて、「またきてねー!」という声が岸壁から響く。それに対し、「またくるよー!」と応える乗客たち。雨に見舞われたクルーズだったが、だからこそにっぽん丸の、エンターテイナーたちの、そして地元の方々のおもてなしの心に存分に触れた、美しい船旅だった。

本殿へと続く158段の石段も歴史を感じさせる熊野本宮大社
神門をくぐると、桧皮葺(ひわだぶき)の荘厳な社殿が現れる
熊野出港後はにっぽん丸の美食に舌鼓を打つ。この日は名物のローストビーフが提供され、船旅のフィナーレを飾った
CRUISE GALLERY
熊野出港後はにっぽん丸の美食に舌鼓を打つ。この日は名物のローストビーフが提供され、船旅のフィナーレを飾った
ペンアイコン取材メモ

にっぽん丸で航く 熊野プレミアム
日程:2025年5月8日(木)~5月11日(日)
コース:横浜~新宮~横浜
クルーズ代金:206,000円(スタンダードステート)
~836,000円(グランドスイート)
船名:にっぽん丸(商船三井クルーズ)
総トン数:2万2472トン
乗客定員:442人/乗組員数:約230人
取材協力:商船三井クルーズ

 

2025年夏号に掲載
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