この船は、人の想いでできている――飛鳥Ⅲを担う四人の言葉

 

「最初に話を聞いた時は、とにかくワクワクしました」。その後コロナ禍を経て本格的にプロジェクトに参加。ドイツの造船所に長期滞在し、図面の段階からサービス目線で船づくりに携わった。

 

「初期はホテル部門から唯一プロジェクトチームに参加していたこともあり、お客様やクルーの動線、バックヤードの配置など、すべてを想像しながら、実際に使いやすいか、サービスが滞らないかを検証していきました」。図面の上では問題なくても、実際に人が動くと違うこともあるのではと考え、そのずれを一つずつ潰していく作業だったという。

 

完成した船で驚いたことのひとつに、クルーエリアの広さがある。「図面以上に、働く人の空間が広く感じました」。快適な職場環境が、結果としてサービスの質につながる。その思想が、飛鳥Ⅲにはしっかりと息づいている。

 

この船は、人の想いでできている――飛鳥Ⅲを担う四人の言葉
船内はどこもゆったりとした造り。人とすれ違うときに窮屈な思いがしない

ドイツでの長期滞在の経験は、水村ホテルマネージャー自身にとっても大きな気づきだった。「海外で自分がサービスを受けてみて、改めて日本のおもてなしは世界トップレベルだと実感しました」。日本のおもてなしに飛鳥クルーズらしさを加え、どう進化させるか。「それを形にするのが、自分たちの使命だと思います」。

 

飛鳥Ⅲのコンセプトは、「お客様好みに広がる旅」だ。「食事、エンターテインメント、ウェルネスなどを、お好みに合わせて選んでいただく。パーソナライズされた体験が、飛鳥Ⅲの大きな特徴です」。乗客に寄り添うサービスを大切にしてきた飛鳥クルーズの精神はいかしつつ、さらに選択肢の幅を広げたのが飛鳥Ⅲだ。

 

長めのクルーズが多い点も、ゆったりとクルーズを創ること助けとなっている。「一日あるだけで、体験できることが大きく広がります。ぜひゆったりと船の時間を味わっていただきたいですね」。

 

特におすすめの体験が、豆を挽くところから楽しめるビスタラウンジのコーヒー体験と、船内のアートをめぐるツアーだ。「飛鳥Ⅲは、日本を代表する作家の作品が随所にあります。船内を歩いてめぐることで、この船の世界観をより深く感じていただけると思います」。

 

この船は、人の想いでできている――飛鳥Ⅲを担う四人の言葉
船内ではアート作品の数々を解説つきでめぐれる「船内アートツアー」を実施している
この船は、人の想いでできている――飛鳥Ⅲを担う四人の言葉
LEDスクリーンを備えたリュミエールシアターでは、光と映像で魅せるパフォーミングアーツが行われている

●総料理長が語る、飛鳥Ⅲの「味」と「工夫」

 

飛鳥Ⅲの食の世界は、多彩な6つのレストランが織りなす洋上のダイニング・シーンが大きな魅力だ。大山総料理長はそのすべてを統括しながら、船で過ごす時間がより豊かになるよう工夫を重ねている。

 

飛鳥Ⅲのレストランは、フランス料理の「ノブレス」、イタリア料理の「アルマーレ」、割烹料理を提供する「海彦(うみひこ)」、厳選した肉や魚介、野菜のグリル料理が楽しめる「グリルレストラン パペンブルグ」という4つのレストランと、洋食のほか、季節ごとのアラカルトとセット料理が楽しめる「フォーシーズン・ダイニングルーム」、さらに世界各地の料理をビュッフェ形式で味わえる「エムスガーデン」で構成されている。

 

この船は、人の想いでできている――飛鳥Ⅲを担う四人の言葉
大山総料理長

フォーシーズン・ダイニングルームでは、コース料理もスタート、さらに懐かしさと新しさが融合した「日本の洋食」が楽しめる。エムスガーデンは名前の通り世界各国の料理を集めたビュッフェレストランで、営業時間内は自由に飲めるビールサーバーがあり、ワインも楽しめる。

 

大山総料理長は「飛鳥Ⅲに初めて来られたお客さまから『飛鳥Ⅱとどう違うの?』と聞かれることがあります。大切にしているのは、お客様に“いつもの安心感”を感じていただくこと。ただそれだけでなく、飛鳥Ⅲとして新しい体験も提供したい。各レストランにはシグネチャーメニューを用意しているレストランもあり、それぞれの特色が感じられるようになっています」。

 

この船は、人の想いでできている――飛鳥Ⅲを担う四人の言葉
エムスガーデンの一角。開放感のあるガラス張りの空間
この船は、人の想いでできている――飛鳥Ⅲを担う四人の言葉
エムスガーデンの料理一例。朝昼晩とメニューはこまめに変わり、飽きることがない

 

季節感の演出にも力を注いでいる。「季節ごとに旬の素材や気候に合わせたメニューを用意しています」。特に、デザートや軽食などは日替わりの仕立てで、毎日の楽しみにしている乗客も少なくない。

 

裏メニューのような楽しみもある。エムスガーデンの朝食では、イクラや刺身などが自分の好みで盛れる海鮮丼があり、乗客には「これが毎朝の楽しみ」という人も。また、ライブキッチンでは日替わりでローストビーフやしゃぶしゃぶなどのメニューが披露され、目と舌で楽しむ食体験が提供されている。

 

船内で密かにファンが多いのが、ドライカレーパン。中にアーモンドとレーズンが入り、食感や香りに変化をもたらしているという工夫もある。「毎日ご用意しているわけではありませんが、見かけたらぜひ楽しんでください」。

この船は、人の想いでできている――飛鳥Ⅲを担う四人の言葉
フランス料理「ノブレス」の前菜一例。季節ごとの食材を、目でも楽しめる料理として提供する

船長、機関長、ホテルマネージャー、総料理長。立場も役割も異なる四人の言葉に共通していたのは、「飛鳥Ⅲで豊かなクルーズライフを送ってもらいたい」という想い。そしてその想いを受け継いだクルーたちの日々の判断や積み重ねがあり、現在の飛鳥Ⅲが形づくられている。

ペンアイコン取材メモ

飛鳥Ⅲ 秋の常陸那珂・仙台クルーズ

日程:2025年11月4日(火)~9日(日)
コース:横浜~常陸那珂~仙台(停泊)~横浜

クルーズ代金:75万0000円(アスカバルコニーD)~275万0000円(ロイヤルペントハウス)
船名:飛鳥Ⅲ(郵船クルーズ)
総トン数:5万2265トン
乗客定員:740人/乗組員数:約470人

郵船クルーズ公式サイト:www.asukacruise.co.jp

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