「飛鳥Ⅱ」でめぐる夏の北海道
再訪の地で見る、新たな景色
■青空まで味方に! 日本最北の絶景を満喫
稚内港に寄港した2日目は午後から、宗谷岬やノシャップ岬を訪ねる寄港地観光ツアーへ参加。どちらも以前から訪れてみたかった場所だが、最も心を奪われたのは、「風車の道」を抜けた宗谷丘陵の雄大な景色だった。
見渡す限りの緑の丘陵地には、宗谷黒牛がゆったりと放牧されている。「黒い点が牛で、茶色い点が野生の鹿です」とバスガイドさんが話す言葉どおり、そのスケールは想像以上だった。起伏のある道を越えるたびに新たな緑の丘が現れ、ときおり黒と茶の点が見つかる。
宗谷岬牧場は日本で初めてトレーサビリティ(生産履歴管理)を導入し、宗谷黒牛は「全農安心システム」の第1号認証を受けたブランド牛だという。こうした景色の背景まで知ることができるのも、寄港地観光ツアーならではの魅力だ。



港を出発したときは曇っていたが、午後になると一転。青空に映える緑の丘陵がどこまでも続き、北海道らしい絶景が広がった。
宗谷岬では、夏は霞で見えないことも多いというサハリンの島影まで望むことができた。「皆さん、持っていますね」。ガイドさんの一言に、車内にはほくほくした笑顔が広がり、帰路についた。

■知らなかった港町へ。歴史をたどる増毛散策
留萌港でも午後から寄港地観光ツアーに参加し、港から南へ車で約30分の増毛町を巡った。人口約3,400人の小さな港町だが、250年以上前からニシン漁で栄え、現在はボタンエビの水揚げ日本一を誇る歴史ある町だ。
町内には北海道遺産に登録された歴史的建造物などの見どころが多い反面、単独で観光ツアーの目的地となることはあまりないという。隠れた名所を、案内してくれたのは地元のボランティアガイドさんだ。町をよく知る地元の方の話を聞きながら歩けるのも、今回の寄港地観光ツアーならではだった。


最初に訪れたのは、国の重要文化財に指定される「旧商家丸一本間家」。明治8年(1875年)創業の呉服商をルーツとする商家で、広い邸宅からも豪商の豊かな暮らしが伝わってくる。これほど立派な建物が残されていることからも、ニシン漁で栄えた当時の繁栄ぶりがうかがえた。
続いて、本間家から徒歩で向かったのは、日本最北の酒蔵「國稀酒造」。
明治時代から続く酒蔵で、店内では酒造りの歴史や道具も紹介され、見応えがあった。また、約20種類の日本酒を試飲できるのも魅力だ。「こちらは香りが華やか」「すっきりした味わいならこちら」とお店の方の説明がとにかく上手で、実際に飲み比べると驚くほど個性が違う。説明を聞きながら味わう、利き酒の楽しさを存分に味わえた。


最後に訪れたのは、現存する中で北海道最古級・最大級の二階建て木造校舎として知られる旧増毛小学校だ。立派な校舎や巨大な体育館からは、かつてこの町が多くの子どもたちで賑わっていたことが伝わり、どこか懐かしい気持ちで歩いた。
最後は道の駅にも立ち寄り、旅の土産もしっかり手に入れて船に戻った。
名所を効率よく巡るのも寄港地観光ツアーの魅力だが、その土地を知る人の話に耳を傾け、まだ知らない景色や文化、人と出会えるチャンスでもある。その航海でしか味わえない一期一会の魅力がある寄港地観光ツアーもまた、飛鳥Ⅱで見逃せない楽しみのひとつだ。



実はこの旅は最初からずっと天気に不安があった。台風の接近に始まり、北海道に入ってからも曇ったり、小雨が降ったりしていた。そんな旅の最後に待っていたのは、思いがけないご褒美のような景色だった。
留萌港を出航すると、「日本一の夕陽が輝く海のまち」と呼ばれる留萌市にふさわしい、美しい夕日が海を染め始めた。風は強く、夏とは思えないほど肌寒い。それでも多くの乗客がデッキへ出て、誰もが足を止めて夕日に見入っていた。

■寄港地の余韻を、メインダイニングで
まだまだ、1日の楽しみは終わらない。寄港地で北海道を味わい、夜は飛鳥Ⅱで北海道の豊かな恵みを味わう。それもまた、この航路ならではの贅沢だ。
メインダイニング「フォーシーズン・ダイニングルーム」では、北海道の旬の食材をふんだんに取り入れたコースが毎晩用意された。前回と同じ航路だからこそ「また会えた」と思う味もあれば、今回初めて出会う旬の味覚もあった。
初日の洋食は、まさに夏の北海道を凝縮したようなコースだった。ちょうど旬を迎えた生ウニをはじめ、苫小牧産メロンや富良野産いちご、夏野菜のカレースープ、上富良野牛など、この時期ならではの旬の味覚が次々と並ぶ。
2皿目の前菜で提供された、ごぼうのポタージュが立役者だったように感じる。こんもりと盛られたエスプーマが口に触れた瞬間、ごぼうの香りがふわりと広がり、夏の北海道の大地を思わせた。
それをきっかけに新たな料理が提供されるたびに、夏の食材が大地に実る映像が自然と頭に浮かんだ。締めのスイカとベリーのガスパチョまで、夏を存分に感じられるコースだった。富良野のいちごは夏が旬ということも初めて知った。

2日目の和食は、北海道各地を旅するような献立だった。鹿部産の赤烏賊、根室産のほや、宗谷産のタコ、噴火湾産のヒラメ、函館サーモン、留萌産「ななつぼし」、ひやま産の生ウニ。北海道各地の食材が一皿ごとに登場し、寄港地を巡った余韻がそのまま食卓へ続いていくようだった。
特に宗谷産のタコは前回の乗船でも印象に残っていた一品で、再び味わえたことがうれしかった。素材そのもののおいしさを丁寧に引き出した、北海道らしい献立だった。
3日目の洋食は、飛鳥Ⅱらしい洗練されたコースだった。生ハムとマンゴーに始まり、香味野菜を合わせたあさりのスープ、マグロのカルパッチョ、黒毛和牛のロースト、白桃のパフェまで、どの皿も美しく、バランスがよい。洋食に親しみのない人でも肩肘張らず楽しめる一方で、食べ慣れた人ほど、その完成度の高さを感じられる内容だった。









