「ぱしふぃっくびいなす」
ふれんどしっぷと奄美の原生林の愉しみ

「ぱしふぃっくびいなす」 ふれんどしっぷと奄美の原生林の愉しみ
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2019.12.27

今回、ぱしふぃっく びいなすの初乗船率は約8割。かく言う私もびいなす初乗船だったが、初めての乗船でも同船ならではのエンタメをたっぷりと味わったことで、気さくな雰囲気あふれる「ふれんどしっぷ」をよく知れた気がしたのだった。

力強い生命力あふれる原生林を歩く

屋久島を横目に通過し、気づけば海はその青さを深くして、風も少し湿り気のある心地よさを帯びる。海が大きく呼吸しているかのようにゆったりとうねるなかを進み、奄美大島に到着した。降水量の多い亜熱帯らしく、この朝もあいにく雨模様だ。午後になって雨があがったころ、金作原ハイキングのツアーに出かけた。

 

金作原原生林は島中央部に位置し、ぱしふぃっく びいなすが停泊する名瀬港から車で40分ほど。亜熱帯独特の植物や生物が息づく。2019年2月下旬から、島の貴重な自然環境を保全するため、知識と経験を持った認定エコツアーガイドを伴って入林することを推奨するルールが定められた。金作原までの道中、バスの中ではエコツアーガイドの水間忠秀さんが島の風土や生活を説明してくれた。

 

「ハブと台風が島民の暮らしを決めているんです」と水間さん。奄美大島の沿岸部は埋め立てて造成されているが、昔からの地にはハブのエサとなるネズミがわかないよう、また台風対策のため平屋が連なる住環境だったり、道路横のガードレールにはハブ除けの棒が一定間隔で置かれていたりする。

 

そんな暮らしが紡がれてきた島では登山の文化はないそうだ。自然豊かな島だが、山に入れるのは金作原と、中南部にある湯湾岳の2カ所。島の人々は、ハブにわざわざ会いに行くことはしない。興味深く耳を傾け少しドキドキしながら、シダ植物の生い茂る金作原原生林に着いた。

 

「いま、そこにルリカケスが!」。ルリカケスは青と赤茶色の羽毛をまとう奄美の固有種の鳥。ふいの登場に残念ながら見逃してしまったが、奄美の大自然の懐へと冒険に向かうような気持ちで歩みを進める。

 

CRUISE GALLERY
葉のやわらかさを説明する水間さん。奄美の自然の豊かさを知るにはエコツアーガイドの同行は欠かせない
クワズイモの大きな葉は下から葉脈を透かすように撮ると美しいと教えてもらった
ルリカケス

 

午前の雨でしっとりとした道を行き、顔を上に向けると生きた化石といわれる巨大なヒカゲヘゴが葉を大きく広げている。日の光を求めて伸びるそうで、ぐねぐねと曲がっている迫力ある姿には圧倒されるばかりだ。木の枝の途中に「着生」するオオタニワタリを見上げ、草木で羽を休めるアサギマダラに目を止め、鳥の鳴き声に耳を澄ませる。ところどころ立ち止まり、注目するポイントを丁寧に説明してくれたので、奄美大島の自然がいかに豊かで独自のものであるかを実感できた。

 

ハイキング途中で、再び雨が降ってきた。「この島は10分単位で天気が変わります」(水間さん)。奄美大島は山深いが、風を遮るほど標高が高くないので、雨雲が上空をびゅんびゅんと通っていくそうだ。金作原では日の当たり方や水の量で、優位な植物が変化するというその植生をも目の当たりにしながら、水を得てうるおう原生林の素顔を見たようだった。

原生林を歩くと頭上に広がるヒカゲヘゴ。金作原の代名詞ともいえる光景
CRUISE GALLERY
原生林を歩くと頭上に広がるヒカゲヘゴ。金作原の代名詞ともいえる光景
CRUISE GALLERY
ハイキングの後、大浜海浜公園に立ち寄った。遠浅の東シナ海が広がる
奄美大島寄港日の船内での昼食は、郷土料理の鶏飯が。小鍋で温めた出汁をかけていただく
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