ぱしふぃっくびいなすに「別荘」感覚で乗船、ゆったりと島めぐりへ

CRUISE STORY
クルーズストーリー
2020.04.27

●米軍と縁の深い寄港地へ

 

翌日は沖縄の中城に寄港した。客船は沖縄では那覇に寄港することは多いが、中城は珍しい。島めぐりクルーズならではの寄港地だといえよう。

 

まずは1450年代のものである勝連城跡へ。当時の沖縄は群雄割拠の時代、300ほどの部隊が覇権を争ったとガイドさんが教えてくれた。当時の人口を考えると各部隊の兵士は200人程度、まるで町内会同士で天下取りをしているようだ。それでも人は戦ってしまうものだと、感慨にふけってしまった。

広々とした大地にたたずむ琉球式の勝連城跡に、沖縄の歴史を感じる
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広々とした大地にたたずむ琉球式の勝連城跡に、沖縄の歴史を感じる

続いて沖縄市のコザへ。どこか時計の針を昔に戻したような、バーやレストランが並ぶ。歩いたのは午後3時頃、多くの店はシャッターが閉まっていた。閑散としていますねとガイドさんにつぶやくと、いいえ、ここは夜になると店が開くんですよと返答。いまでも米軍と縁の深い街のようだ。

 

ツアー一行は刺繍製ワッペンを扱うショップ「タイガーエンブ」に寄った。創業60年、米軍から注文が入るが、余った予備分を許可を得て店舗で売っている。全国から注文が入るというワッペンが店の壁を埋め尽くし、圧巻だった。

無数のワッペンが並ぶショップ・タイガーエンブ。たたずまいもアメリカ的
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無数のワッペンが並ぶショップ・タイガーエンブ。たたずまいもアメリカ的

●首里城再建への思い

 

翌日は沖縄の中心部・那覇寄港の日。ツアーで首里城へ足を運ぶ。昨年の本殿の火災でどうなったかと心配していたが、首里城公園としてみると8割は通常開放されるまでに落ち着きを取り戻していた。外国人観光客の姿も予想以上に多い。火事現場が見える一部を除けば、ハイビスカスやデイゴの花が咲き乱れる、美しい古城跡という風情だ。

 

ガイドさんいわく、首里城は約30年にわたる復元工事が2019年1月に完了したばかりだった。沖縄の文化の柱といえる首里城の中枢が焼け落ちたことは、それまでの時代を引っ張った世代を大きく落胆させた。だが憔悴している大人たちを尻目に、火事の直後から、まず那覇の学生が動いたという。募金活動を始めた若い世代に元気づけられるように、再び復元活動が動きはじめている。

 

船内にも募金箱が置かれ、沖縄寄港中に乗客からの募金が那覇市に寄付された。こうしてぱしふぃっく びいなすで旅をしていると、その土地のことを思わずにはいられないシーンによく出会う。

 

ツアーは戦争での爆撃から免れた金城町の風情ある石畳道を歩き、世界遺産のひとつである識名園を訪れた。中国や薩摩の要人を迎え、豪勢な歓迎ができる場所として建てられた琉球王の別荘が識名園。そんな地をそぞろ歩きしていると、顔見知りになった乗客の一人が語ってくれた言葉を思い出した。

 

いわく「ぱしふぃっく びいなすは、手入れのいらない別荘なのよ」。確かにこの船には、いつでも戻ってきたくなる親しみやすさがある。琉球王が要人をもてなしたように、温かいもてなしをしてくれるクルーがいて、識名園の庭のような快適な広さの空間がある。船内でリラックスしている乗客の顔を思い浮かべつつ、「別荘」とは言いえて妙だなと感心した。

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戦前より続く金城町の石畳。沖縄の風情が漂う
識名園の中には沖縄ならではの植物も多く、乗客は散策も楽しんだ
首里城を象徴する場所のひとつ、守礼門。募金した乗客たちも、この立派な門に見入っていた
寄港地にちなんだ食材に加え、優しい味付けも好評だった夕食
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寄港地にちなんだ食材に加え、優しい味付けも好評だった夕食
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