ぱしふぃっくびいなすに「別荘」感覚で乗船、ゆったりと島めぐりへ

CRUISE STORY
クルーズストーリー
2020.04.27

実は今クルーズで忘れられないシーンがあった。横浜出航直後のこと。「もうすぐダイヤモンド・プリンセスが見えます」というアナウンスが入った。今回のクルーズのひとつ前に行われたアジアクルーズでは、乗客が「がんばれダイヤモンド・プリンセス」という横断幕を手作りし、右舷に掲げて帰港したという。今回はクルーが同様の横断幕を作り、左舷に掲げていた。

 

「よかったら皆さん手を振ってください」というアナウンス。冷たい風が吹く中、皆が左舷に集まった。8階のデッキでは、数多くのクルーも心配そうに見つめている。ダイヤモンド・プリンセスが真横に並んだ。かなり距離があるが、乗客もクルーも皆が一生懸命手を振る。そのとき、ぱしふぃっく びいなすの汽笛が大きく鳴り響いた。一瞬の静寂のあと、乗客の「がんばれ!」という声がいくつも重なっていく。声が届く距離ではないのは、皆わかっていた。それでも声をあげずにはいられなかった。

 

一呼吸あいた後、ダイヤモンド・プリンセスから返礼の汽笛が聞こえてきた。それに対し、ぱしふぃっく びいなすはまた汽笛で返礼する。再び「がんばれ!」という声、また声。たくさんの人の想いが潮風に乗って飛んでいった。

 

後日のカクテルパーティーでは、船長が「普段は汽笛を鳴らさないが、船乗りとして本当にがんばってほしいと思い、返礼も合わせて7回鳴らした」と語っていた。

 

この印象深き出航シーン、そして乗客からの募金、それからこの船を「別荘」として愛でている乗客の方々──ぱしふぃっく びいなすで旅をしていると、船と人、船と土地とが強く結ばれているのをしみじみ感じるのだ。

横浜港出港時、夕日の中でダイヤモンド・プリンセスにエールを送る
CRUISE GALLERY
横浜港出港時、夕日の中でダイヤモンド・プリンセスにエールを送る
ペンアイコン取材メモ

南西諸島 島めぐりクルーズ
日程:2020年2月18日(火)〜26日(水)
コース:横浜〜屋久島〜中城〜那覇(停泊)〜名瀬(奄美大島)〜横浜 ※取材は横浜〜那覇
クルーズ代金:36万8000円(ステートJ)〜156万円(ロイヤルスイートA)
船名:ぱしふぃっく びいなす(日本クルーズ客船)/総トン数:2万6594トン
乗客定員:620人/乗組員数:220人

『CRUISE』2020年6月号に掲載
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