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【考察】プリンセスの日本クルーズに日本船社「存亡の危機」論も
業界
2012/03/28
プリンセス・クルーズの日本クルーズ実施の発表は、日本のクルーズ船社に衝撃を与えている。これまでは、外国船の日本来航に「クルーズの大衆化につながる」と歓迎のコメントをしていた日本船社だが、乗船料が60%も安い設定で日本船とほぼ同じアイテナリーのクルーズが行われることに、「いつか来ると予想してはいたが…。日本船の存亡にかかわる」(邦船社)と日本型クルーズの仕組み自体を見直しするしかない、という声も出ている。

既報のとおり、世界最大のクルーズ会社カーニバル・コーポレーション&plcは、子会社カーニバル・ジャパンを設立、グループ傘下のプリンセス・クルーズが、「サン・プリンセス」(77000トン、乗客定員2022人、1995年建造)を、来年4月27日から日本市場に投入すると発表した。横浜と神戸発着の9泊から12泊の日本人向けクルーズ9本を実施する予定。

数年前から、コスタ・クルーズやロイヤル・カリビアン・インターナショナルが東アジアクルーズを実施しているが、これらは主として中国マーケットを目指したもので、日本人を対象にしたクルーズは、行われても年2,3本。プリンセスの計画は外国船社による初めての日本マーケットへの進出といえる。広島、長崎、青森、舞鶴、境港など多数の港に寄港を予定しているだけに、旅行会社や港湾管理者からは、「プリンセスは三菱重工で客船を建造したし、日本でも早くから海外クルーズを販売していますから、日本人にもなじみが深い。本命登場ですね。日本のクルーズもいよいよ大衆化しそう」と、概ね歓迎の反応が多い。

乗船料は、最も安い内側客室で9泊12万4000円(円建て料金)から。1泊1万3777円という安さだ。日本船が主体にする海側客室で比較しても同15万4000円で1泊1万7000円強から。商船三井客船の「にっぽん丸」が1泊4万6000円、郵船クルーズの「飛鳥U」が5万円からと比べると、40%程度の料金にとどまる。チップや港湾使用料を別に支払わねばならないのでその差は少し縮まるが、日本船社にとっては、「日本籍船を運航している以上、コストダウンで詰められるような差ではない」と、お手上げの状態だ。

プリンセスは、外国船での日本クルーズを禁止するカボタージュに対応するために、すべてのクルーズで釜山やコルサコフ、基隆など外国の港にワンタッチするアイテナリーを組んでいる。しかし、ワンタッチ以外は日本船が展開する日本国内クルーズのコースとほとんど同じ設定だ。日本船にとっても価格差以上にこのアイテナリーが脅威と映っているようだ。

このため日本船社からは「例えば、横浜から広島に寄港して、その後釜山などに向かう航海が、日本国内輸送にあたらないのか」といった声や、「カジノ営業は、港を出ればすぐにできるのか」など、日本政府の規制をただす声が出ている。さらに北方領土問題もあり外務省の指導で日本船の通過自粛が求められている国後と択捉の間、国後海峡を通過するコースを設定するなど、日本船籍船ではできないサービスが行われる計画になっていることも不満となっている。

日本船社からすれば、「そもそも日本の国内クルーズを外国人船員を使って、便宜置籍船でクルーズすることが果たしていいのか」という理念的な問いをもらす声もあるが、それ以外にも、さまざまな不満があるという。(1)日本船が求められている30日に一度外国に寄港しなければいけない30日ルール (2)日本国内クルーズに課せられる消費税の負担は (3)運航部員の混乗すらできない日本船の乗組員問題 (4)カジノもできない数々の規制――など、日本船に課せられた縛りが大きすぎるというのだ。

カーニバル・グループは昨年運航隻数が100隻に達し、売上高は157億ドル(2011年11月期)、利益も19億ドルに達するという1兆円企業。日本船が軒並み赤字なのに比べると彼我の差は大きい。さらに、これらの売上高のうちカジノやツアー代金など、船上での売上高が売上全体の25%を占めているのに対して、日本船では10%程度。「乗船料で先取りする日本船と、乗せてから払ってもらう外国船」(旅行会社)と商売の構造は大きく異なる。もちろん途上国の船員を多数乗せていることから船員費の比重も運航コストの10%と日本船とは格段の違いがあるように、「外国船の日本クルーズが本格化すると、今のスキームのままでは日本船社のクルーズは太刀打ちできない」(邦船社)。

とはいえ、外国の港にワンタッチし、カボタージュをクリアするという方式はすでに日本を目指す外国船では一般的にとられている手法であり、カボタージュの規制強化という声は受け入れられない可能性の方が高い。

日本船社のとれる選択肢といえば、(1)日本船の規制緩和と外国船クルーズへの規制強化によって、なるべく競争条件を平等にするよう求めたうえでの競争 (2)日本のクルーズ船の便宜置籍化 (3)外船社との協調――という方策、さらには (4)撤退、が考えられる。

規制が多少変わったとしても、「外国船とのコスト差は、埋められるほど小さくない」(邦船社)ほか、そうした方策では日本のクルーズ市場を拡大することにつながらず、日本船社の苦闘は続く。また便宜置籍化をした場合、冬場などの国内ショートクルーズができないという問題がある。かつて川崎汽船が試みて失敗した「本格的な海外クルーズに取り組む」方策を迫られることになるだろう。

一方、カーニバルは海外市場を開拓するに際して、キュナード(英国)、コスタ(イタリア)、アイーダ(ドイツ)など当該国のクルーズ会社を買収して市場拡大を果たした。また、ロイヤル・カリビアンは、TUI(ドイツ)など旅行会社などとの合弁によって参入を図っており、「日本船社と外国クルーズ会社との合弁」の可能性を説くアナリストもいる。

クルーズ元年から24年。20万人から一向に拡大しない日本市場。「黒船」=プリンセスの日本市場への本格的登場は、日本のクルーズ会社に果たして「維新」をもたらすのだろうか。それとも……。(文=海事プレス社社長 若勢敏美)







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