乗るまで待てない! WEBクルーズ
  • ホーム
  • ニュース
  • トピックス
  • 客船データベース
  • 出版物のご案内
HOME > ニュース一覧 > ニュース
バナー広告

ニュース

観光庁の井手長官、“黒船”来航でどうなる今後のクルーズ振興
業界
2012/06/19
 外国船社による日本発着クルーズ。13万トン級客船の日本初寄港。そして、外国船来航ラッシュとそれらを迎え撃つ日本船社。新たなステージに突入したクルーズ振興はどうあるべきか。観光庁の井手憲文長官(写真)にインタビューした。

■カボタージュなのか?

 ―― プリンセス・クルーズが来年、3カ月間にわたって日本発着クルーズを実施するが、これに対して日本外航客船協会がカボタージュではないかと指摘。海事局に配慮を求める要望書を提出したことをきっかけに、波紋が広がっている。クルーズ振興に取り組む観光庁として、この件についてどう考えるのか。

 「外国客船の場合、一度の寄港で何千人もの訪日外国人客が上陸するので、インバウンドの量的拡大、そして日本をよく知ってもらうという意味で大変ありがたい。残念ながらインバウンド、アウトバウンドともに、日本のクルーズ市場はいまだ黎明期のままで、そろそろ夜が明けないといけないと思っている。カボタージュ論については海事局の事項なので判断する立場にないが、プリンセスの計画は、日本のクルーズ市場の裾野を広げる起爆剤、材料になると思う。今まで取り込んでこなかった客層を開拓できるのでは、と期待している。外国船、日本船を問わず、客船が寄ることは自治体も大歓迎だろう。もちろん、消費者にとっても。果たしてこれがカボタージュと断言できるのだろうか、はてな?と思う。日本のクルーズ人口が伸び悩んでいるわけで、日本外航客船協会にはむしろ自分たちが関与している市場が広がる機会、というぐらいにとらえてほしい」


■日本籍船にこだわる必要もない

 ―― 迎え撃つ日本船側は、外国客船とのイコール・フィッティングによる競争環境を求めている。日本船の規制緩和については、どう考えるべき。

 「客船に限らず、日本籍船全体の議論だと思うが、国はこれまで細々とした規制はだいぶ取り払ってきた。ただし、不便な点、不自由な点があるのも事実なので、規制緩和については海事局で引き続き検討してもらえると思っている。まだ道半ばである。かつてのように何もやらないという時代でない」

 ―― 日本船は長引く景気低迷や震災の影響で、経営環境はたいへん厳しい状況が続いている。クルーズ振興の立場から何か手だてはないものか。

 「諦めずに、貨物船の世界のように、クロス・トレードまでやる、というぐらいの気持ちで展開してもらいたい。現状維持ではなく、違う仕掛けでやってみる会社が1社、2社出てきてもよいのではないか。例えば、JR九州の商品「七つの星」のように、超ラグジュアリーな船で、圧倒的な差別化を狙ってみるとか。日本籍船にこだわる必要もないだろう」

 ―― クルーズはさまざま省庁、法律にまたがる業種である。この際、基本法で振興してはどうか。

 「それは馴染まないと思う。海洋基本法の計画に従来からクルーズは盛り込まれているが、今は通り一遍の内容なので、むしろ、それを強化するのが一番の近道だろう」


■CIQ簡素化に期待

 ―― 寄港する外国客船の大型化に伴い、CIQ(税関・出入国管理・検疫)の簡素化が喫緊の課題だが、その対応は?

 「CIQの効率化については、港湾局、自治体と一緒に法務省と話し合っている。一定の規模以上であれば、海外臨船に対応してもらえる仕組みができ、船内では顔写真を撮らなくてもよいことになったり、指紋による生体認証を下船の際に行ったりと、簡素化する方法を法務省で考えてもらった。6月中旬に入る大型船で試されるので、その効果を見ることにしている。中期的にも、いろいろな工夫、システムを法務省に働き掛けていきたい」

 ―― CIQに携わる係官の人数も厳しいようだが。

 「航空局で航空交渉をやっていたときも、いつもぶつかっていた問題だ。どう対処したかというと、定期便、チャーター便を入れるに当たって、CIQに関わるユーザー側官庁、サプライヤー側官庁を集めた会合を開いて、係官の定員数獲得などを含めた対応について何度も意見交換した。ただ、空港の場合、ある程度充実せることができたが、港については2つの点で異なる。今は定員の確保、増員がたいへん厳しい時代であること。さらに、空の定期便はCIQについて増員など要求しやすいが、客船の場合はいつ、どこに寄港するか分からない上に、一度に大量の乗客が対象になる。今年450回寄港したが、来年は300回にということもあり得るわけで、対応が非常に難しい。今は関係官庁に、係官を応援出張で回すなど機動的に対処してほしい、とお願いしている」


■超大型船は当面、貨物船バースで

 ―― 13万トンクラスの大型客船が今年、数次にわたって日本に寄港するが、一方で港湾施設のキャパシティーから、そう簡単には受け入れられないという問題が表面化している。バースや関係方面との調整が面倒だということで、中には消去的な港もあるようだが。

 「港湾局とは今まで以上に協力関係が強くなっており、連携して話し合っている。ハード面を直ちに改善するのは難しいため、超大型客船受け入れのための整備は、中期的な課題にはなってくるだろう。その間は、貨物船バースを調整しながらフルに活用して停めたらよいと思う。それを面倒がる非協力的な自治体があるようだが、どうかと思う。船会社から照会があっても、そのような港はこちらも紹介できない」


■促進事業は新たなステージに

 ―― これまでのVJ事業におけるクルーズ振興策をどのように評価しているか。

 「過去6年間を見ても、寄港数は2倍以上、訪日乗客者数も大幅に増えており、着実に成果が上がっている。ただ、これからはセールスの仕方を考えた方が良いかもしれない。港単体で売り込むのではなくゾーン、クループとしての魅力をPRしていくことがより重要である。自治体同士の連携をより強めて、具体的なコースを船会社へ提案していくなど、新たなアイデアが求められている」

 ―― 近隣諸国との共同セールスについては?

 「韓国、台湾と共同セールスするという考えは悪くはないが、中国発着クルーズの誘致であれば、中国と何かした方が現実的だろう。中国からの船はデスティネーションとして韓国、日本に必ずと言ってよいほど寄港する。ただし、欧米からやってくる世界一周のようなロング・クルーズに就航している船に対して、エリア、ゾーンとして韓国、台湾などと一緒にプロモーションを展開するのには意味がある。その場合、シンガポール、マレーシアなど東南アジアに対抗するということになる。いずれにしても外国客船誘致によるクルーズ・プロモーションは、第2段階に入ったのは確かだ」

(聞き手:植村史久)

***
【いで・のりふみ】国土交通省海事局長を経て、今年4月、3代目観光庁長官に就任。震災からの観光復興に注力。航空、観光、鉄道、自動車、海事行政に明るいオールランド・プレーヤー。新たな局面を迎えているクルーズ振興でも手腕発揮が期待されている。愛媛県今治市出身。瀬戸内海で船を下駄代わりして育った海好き、船好き。東大法学部卒、76年運輸省入省、58歳。







ページTOPへ