「カリブ海の雄」が日本初来航へ!
アジア太平洋に変化の兆し
来年、いよいよ日本初来航を果たす。そこから見える変化の兆しとは。
カーニバル・クルーズ・ラインが2023年秋、初めての日本来航を計画している。船はコスタクルーズから今年移籍した「カーニバル・ルミノーザ」(9万2720トン)。2023年9月14日に米国シアトルを出発し、オーストラリアのブリスベンまで30日間の航程中に、釧路、青森、東京、広島、長崎に寄港する。日本のあとにはプエルトプリンセサ(フィリピン)、ビトゥン(インドネシア)を経てオーストラリアを目指す。
アジア配船では同じグループ会社のプリンセス・クルーズやキュナード・ラインが先行しており、カーニバル社は後発だ。カーニバルといえばなんといっても「カリブ海」のイメージが根強い。現時点で運航船全25隻中、実に20隻をカリブ海周辺に配船している。同社の主力商品は米国人向けの比較的安価な定点型ショートクルーズだ。どうしても期間が長くなってしまう(=金額が高くなる)日本への来航は、これまでほぼないと思われてきた。
今回はアラスカからオセアニアへの回航途中の日本寄港であり、あくまでも「寄り道」程度だが、寄港数は5港と多く、ベトナムやタイ、シンガポールなどが無寄港であることと比べると、日本への期待が感じられる。
その理由について深読みすれば、「中国発着クルーズの寄港地調査」「日本でのターンアラウンド(全乗客の乗下船)の調査」「物資補給の試験的運用」「再来年以降の日本発着クルーズへの布石(!)」などが考えられる。
コロナ禍を経て、クルーズを取り巻く状況は様変わりした。アジアでの客船受入が一向に進まないことから、すでに一部の欧米船社はアジアでの航海予定を減らしている。最盛期には超大型船を含む最多5隻をアジアに投入していたロイヤル・カリビアン・インターナショナルも当面「スペクトラム・オブ・ザ・シーズ」1隻のみ。そんな中にあってカーニバル社のアジア進出は、他社の「アジア離れ」に逆行する動きだ。
●ディズニーは豪州へ
同じくカリブ海をメインに展開してきたディズニー・クルーズラインは、2023年秋に初めてオセアニアに進出する。こちらも後発組だ。
2023年10月から2024年2月までオーストラリアのシドニー、メルボルン、ブリスベン、ニュージーランドのオークランドの4港を母港に、2国の居住者向けに2~6泊のショートクルーズを設定。オセアニア配船の前後にはホノルル~シドニー間で約2週間のクルーズを実施する。こちらは海外からも参加可能で、フィジー、米領サモアなど南太平洋をめぐる。
●カリブ海を離れて
カリブ海を得意とする両社がなぜ、いまアジア太平洋に進出するのか。その背景には、コロナ禍で米国周辺のクルーズを展開する客船が増え、競争が激化していることが考えられる。
船会社は配船計画を「点」ではなく「面」で考える。環太平洋なら、夏季にはアラスカ、冬季にはオセアニア、そして春・秋には極東アジアへ。船はベストシーズンを求めて、北に南に移動する。
「カーニバル・オーストラリア」を展開するカーニバル社にとって、春・秋にアジアに船を配船することは容易だ。もしもカーニバル社やディズニー社が安価な日本発着クルーズを展開したら……。
不透明な時代にはそれを打破すべく新たな展開があるものだ。各社とも新たなヒット商品を模索中。今後の新展開に注目したい。