「カリブ海の雄」が日本初来航へ!
アジア太平洋に変化の兆し

「カリブ海の雄」が日本初来航へ! アジア太平洋に変化の兆し
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2022.11.11
世界最大のクルーズ会社、カーニバル・クルーズ・ラインが
来年、いよいよ日本初来航を果たす。そこから見える変化の兆しとは。
文=宮崎由貴子

カーニバル・クルーズ・ラインが2023年秋、初めての日本来航を計画している。船はコスタクルーズから今年移籍した「カーニバル・ルミノーザ」(9万2720トン)。2023年9月14日に米国シアトルを出発し、オーストラリアのブリスベンまで30日間の航程中に、釧路、青森、東京、広島、長崎に寄港する。日本のあとにはプエルトプリンセサ(フィリピン)、ビトゥン(インドネシア)を経てオーストラリアを目指す。

 

青と赤のファンネルと曲線が描かれた船体が目をひく「カーニバル・ルミノーサ」
CRUISE GALLERY
青と赤のファンネルと曲線が描かれた船体が目をひく「カーニバル・ルミノーサ」

アジア配船では同じグループ会社のプリンセス・クルーズやキュナード・ラインが先行しており、カーニバル社は後発だ。カーニバルといえばなんといっても「カリブ海」のイメージが根強い。現時点で運航船全25隻中、実に20隻をカリブ海周辺に配船している。同社の主力商品は米国人向けの比較的安価な定点型ショートクルーズだ。どうしても期間が長くなってしまう(=金額が高くなる)日本への来航は、これまでほぼないと思われてきた。

 

今回はアラスカからオセアニアへの回航途中の日本寄港であり、あくまでも「寄り道」程度だが、寄港数は5港と多く、ベトナムやタイ、シンガポールなどが無寄港であることと比べると、日本への期待が感じられる。

 

その理由について深読みすれば、「中国発着クルーズの寄港地調査」「日本でのターンアラウンド(全乗客の乗下船)の調査」「物資補給の試験的運用」「再来年以降の日本発着クルーズへの布石(!)」などが考えられる。

 

日本の寄港地は釧路、青森、東京、広島、長崎の5港。写真の東京港のターミナルに雄姿が見られる日が楽しみだ
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日本の寄港地は釧路、青森、東京、広島、長崎の5港。写真の東京港のターミナルに雄姿が見られる日が楽しみだ

コロナ禍を経て、クルーズを取り巻く状況は様変わりした。アジアでの客船受入が一向に進まないことから、すでに一部の欧米船社はアジアでの航海予定を減らしている。最盛期には超大型船を含む最多5隻をアジアに投入していたロイヤル・カリビアン・インターナショナルも当面「スペクトラム・オブ・ザ・シーズ」1隻のみ。そんな中にあってカーニバル社のアジア進出は、他社の「アジア離れ」に逆行する動きだ。

 

シンガポール発着でアジアクルーズを行う「スペクトラム・オブ・ザ・シーズ」
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シンガポール発着でアジアクルーズを行う「スペクトラム・オブ・ザ・シーズ」

●ディズニーは豪州へ

 

同じくカリブ海をメインに展開してきたディズニー・クルーズラインは、2023年秋に初めてオセアニアに進出する。こちらも後発組だ。

 

2023年10月から2024年2月までオーストラリアのシドニー、メルボルン、ブリスベン、ニュージーランドのオークランドの4港を母港に、2国の居住者向けに2~6泊のショートクルーズを設定。オセアニア配船の前後にはホノルル~シドニー間で約2週間のクルーズを実施する。こちらは海外からも参加可能で、フィジー、米領サモアなど南太平洋をめぐる。

 

オーストラリアを航行する予定の「ディズニー・マジック」
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オーストラリアを航行する予定の「ディズニー・マジック」

●カリブ海を離れて

 

カリブ海を得意とする両社がなぜ、いまアジア太平洋に進出するのか。その背景には、コロナ禍で米国周辺のクルーズを展開する客船が増え、競争が激化していることが考えられる。

 

船会社は配船計画を「点」ではなく「面」で考える。環太平洋なら、夏季にはアラスカ、冬季にはオセアニア、そして春・秋には極東アジアへ。船はベストシーズンを求めて、北に南に移動する。

 

「カーニバル・オーストラリア」を展開するカーニバル社にとって、春・秋にアジアに船を配船することは容易だ。もしもカーニバル社やディズニー社が安価な日本発着クルーズを展開したら……。

 

不透明な時代にはそれを打破すべく新たな展開があるものだ。各社とも新たなヒット商品を模索中。今後の新展開に注目したい。

 

CRUISE2022年秋号より転載
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