テクノロジーがクルーズライフを変化させる!
進化する船内デバイスとスマートフォンのアプリ
昨今のクルーズカードやアプリの進化を紹介する。
「何はなくともクルーズカード」。クルーズ中にそう思っている人も少なくないだろう。客室から外に出るとき、ダイニングで席を立つとき、まずはクルーズカードを持っているかを確かめる人はきっと多いはずだ。
初めてクルーズ船に乗った人は、クルーズカードの万能ぶりに驚くだろう。客室に出入りするキーカードの役目を果たすだけでなく、船内ではクレジットカード代わりに使える。だからこそ、乗船中にうっかりクルーズカードをなくしてしまい、青くなった経験がある人もいるはずだ。
●プリンセスが注力するデバイス
こうした、いわば「クルーズカード文化」に一石を投じる船会社がある。その筆頭がプリンセス・クルーズだ。プリンセス・クルーズは早くからウェアラブル・デバイスの「オーシャン・メダリオン」を導入。従来のクルーズカードに代わるメダル型の端末は、ネックレスやウォッチ型ベルトとして身に付けられ、カードに比べてなくす心配が軽減する。のみならず、このデバイスは実に多彩なサービスを非接触で提供する。例えばカードいらずでドアの鍵は自動的に開錠されるし、食事や飲み物などをオーダーすると船内のどこへでも直接届けてもらえる。
こうしたウェアラブル・デバイスは、MSCクルーズでは「MSCフォー・ミー リストバンド」として、ロイヤル・カリビアン・インターナショナル(RCI)でも「WOWバンド」として導入しているが(※RCIは、現在一時休止中)、普及率はプリンセス・クルーズがだんとつだ。「メダリオン・クラス」を銘打って、このウェアラブル・デバイスを使える船が増加中。日本発着クルーズを予定している「ダイヤモンド・プリンセス」でもこの「オーシャン・メダリオン」が使えるようになる。
●快適な船内生活に必須のアプリ
一方で各社足並みをそろえるように進めているのが、スマートフォンのアプリケーションの導入だ。特集の「スペクトラム・オブ・ザ・シーズ」のレポートでも伝えたが、RCIでは基本的に船内新聞はなく、スケジュールなどはアプリで確認するシステムをとっている。
MSCクルーズは「MSCフォー・ミー」、プリンセス・クルーズは「メダリオン・クラス」、キュナード・ラインは「マイ・ボヤージ」、ノルウェージャンクルーズラインは「クルーズ・ノルウェージャン」など、多くの船社が自社アプリを有し、クルーズ前にはそれをインストールしてログインすることをすすめている。
こうしたアプリでできることも増えている。アプリにもよるが、デッキプランや船内のダイニングやアクティビティーの紹介など、基本的な情報はアプリ内で閲覧できることが多い。
そのほか、チェックインに始まり、ダイニングやショー、寄港地ツアーの予約など、アプリを通して船内生活のスケジュールを組み立てられることも少なくない。さらにベッドから朝食をオーダーしたり、プールサイトに焼きたてのピザを配達してもらえたり……最先端のデジタルテクノロジーを集結させたアプリは、快適な船内生活に欠かせない。逆をいうと、いかにアプリを使いこなすかが、クルーズライフに影響する。
こうしたテクノロジーはクルーにも普及している。RCIは同社の「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」の乗組員には、マイクロソフト社のWindowsタブレットが支給されていて、サービスやアプリケーションを自由に利用することができる。同社は全船舶の乗組員にも個人用タブレットが配布を予定しているという。
こうした進化を目の当たりにすると、いわゆるクルーズカードがなくなり、スマートフォンですべて事足りる時代がくるかもしれないと思う。「何はなくともスマートフォンとアプリ」──そんな日もきっと、そう遠くなさそうだ。