ウィーン・フィルらの生演奏が聴けた
旅行会社グローバル催行の「エクスプローラ ジャーニー」の旅
仕掛け人の社長が明かす、実現の舞台裏とは

ウィーン・フィルらの生演奏が聴けた 旅行会社グローバル催行の「エクスプローラ ジャーニー」の旅 仕掛け人の社長が明かす、実現の舞台裏とは
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2025.12.18
世界屈指のオーケストラ、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とベルリン・フィルハーモニー管弦楽団。このふたつのオーケストラの主要メンバー20名がエクスプローラ ジャーニーが運航する「エクスプローラⅠ」に乗り込んだ。乗客は夜毎名演奏を聴きながら、アドリア海とエーゲ海をめぐったという。
今回は、同クルーズでツアーを実施した旅行会社「株式会社グローバル(※)」の代表取締役社長・柴崎聡氏に、この音楽クルーズの舞台裏を語ってもらった。※株式会社グローバル(旧・株式会社グローバル ユース ビューロー)
文=鈴木幸子(らきカンパニー)

■過去にはフルオーケストラ100人を乗せて航海したことも

 

今年の春、クラシック音楽に通じた音楽専門誌の編集者から、「こんな本格的なクラシックが聴けるクルーズツアーがあると知って驚いた」と旅程を見せられた。MSCグループのラグジュアリーブランドエクスプローラ ジャーニーの「エクスプローラⅠ」(6万3900トン)に乗船し、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を毎夜聴きながら船旅を楽しめるパッケージツアーだ。

 

日本でこのクルーズを「音楽クルーズ」としてパッケージ化して販売していたのが、旅行会社グローバル。同社は過去にもこうした音楽をテーマにしたクルーズパッケージツアーを5回実施している。

 

「最初のきっかけは、2000年代後半、ウィーン・フィルの世界ツアー公演をアレンジする会社から、『ウィーン・フィルクルーズ』を企画しているから一緒にやりませんか?と連絡を受けたことです。それは、全世界5大陸から音楽ファンを集めて、100人のウィーン・フィルハーモニー楽団員をクルーズ船に乗せてツアーを組むという壮大な企画でした」と、企画した旅行会社・グローバルの社長、柴崎氏は語る。

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■音楽クルーズへの道のり、培ってきた“音楽と旅”

 

声をかけてくれた会社は、オーストリアのクラーゲンフルトという町の旅行会社で、「音楽を愉しむ船旅」がコンセプトの“シー&ミュージック(Sea & Music)”プロジェクトを手がけるMS6だった。

 

2008年、MS6が企画した第1回目のシー&ミュージックのクルーズツアーが実施された。ウィーン・フィル100人以上のフルオーケストラと、インド出身の著名指揮者ズービン・メータ、ピアニストのラン・ランが乗船し、アイーダ・クルーズの「アイーダ・ディーバ」という船で地中海を周遊した。

 

クルーズは大成功。その後、グローバルでは同様の音楽クルーズをバルト海、エーゲ海などで5回実施した。

 

そもそも、多々ある日本の旅行会社の中で、なぜ「グローバル」が選ばれてMS6から連絡を受けたのか。そこにはグローバルという企業の成り立ちと、事業内容が関わってくる。

 

創業は1966年。1966年8月にKLMをチャーターし、鹿児島の若者たち137人を連れてヨーロッパへ研修旅行を行ったのが始まりだ。このヨーロッパ文化研究会という名の事業を5回ほど続けた後に旅行会社として起業。もともと若者のための旅だったので、株式会社グローバル ユース ビューローという名前が付けられたという。

 

「弊社では1987年にサントリーホールがオープンしてから、 “グローバル・クラシックコンサート”という文化事業をスタートさせ、東京ではサントリーホールやオーチャードホール、東京芸術劇場や紀尾井ホール、ウィーンの楽友協会などでこれまでに100回以上のクラシックコンサートを開催してきました。来年4月19日のサントリーホールの開催で105回となります。またそれとは別に『旅と音楽の集い』という音楽イベントをコロナ禍前までトータルで250回ほどは開いております」と柴崎氏。

 

そうした“音楽と旅”で培ってきた業績が、オーストリアのシュプリンガー・ファミリーの耳に届き、この呼びかけとなったそうだ。

■環境に配慮して選ばれた1000人以下の船

 

しかし6度目の音楽クルーズを企画した2020年、夏に予定していた満席予約の地中海クルーズはコロナ禍で中止となってしまった。そしてコロナ禍が明け、ようやく今年5月にシー&ミュージックのクルーズが再開となった。準備自体は一昨年から始めたという。

 

今回はこれまでよりサイズが小さいラグジュアリー船「エクスプローラⅠ」が選ばれた。

 

「コロナ禍の間に、クルーズ業界も脱炭素化などの環境問題への取り組みが進みました。大人数でのクルーズはやめた方がよいのでは? という意見がウィーン・フィルからも出て、今回からウィーン&ベルリン・フィルの主要メンバーを20人乗せてアンサンブル(少人数のグループによる演奏)をやろう、ということになりました。さらに環境を配慮した最大収容数1000人以下の船を選ぶことになり、それがエクスプローラⅠだったのです」と柴崎氏は背景を語る。

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同クルーズの出航地はベネチア。その後、ロヴィニ(クロアチア)~アンコーナ(イタリア)~バーリ(イタリア)~コトル(モンテネグロ)~クレタ島(ギリシャ)~マルマリス(トルコ)~サモス島(ギリシャ)をめぐり、ピレウス港(アテネ観光も含む)で下船するルートだ。

 

初日のベネチアの宿泊ホテルはサンマルコ広場近くの「ホテル・モナコ&グランドカナル」。到着日14日の夜は、ベネチアのルネサンス様式の会堂「スコーラ・グランデ・ディ・サロン・ロッコ」で、フランスのチェリスト、ゴーディエ・カピュソンとウィーン&ベルリン室内管弦楽団による演奏会を堪能する特別な一夜となり、メンデルスゾーン、ハイドン、モーツァルトの楽曲が披露された。翌日の午前はベネチア観光、午後はベネチアの対岸にあるフシナ港へ移動し、エクスプローラⅠへ乗船した。

 

エクスプローラ ジャーニーは世界指折りのピアノメーカー、スタインウェイ&サンズと提携している。航海中の船内コンサートは毎晩、テノールとピアノ、ソプラノとピアノ、チェロ&ピアノなどのアンサンブル演奏が、200人収容のジャーニーズラウンジ(シアター)で開かれた。17日午後は、寄港地アンコーナの州立劇場「テアトロ・デッラ・ムーゼ」でのコンサートを鑑賞。こちらの会場へは港から徒歩で行けるアクセスの良さだった。

 

さらに船内シアターでのリハーサル風景やゲネプロも見られた。そして船内の別ラウンジでは、シー&ミュージックに参加したゲストだけが入れる貸し切りコーナーが設けられ、音楽家との交流もできた。

 

柴崎社長は「エクスプローラ ジャーニーのお客さまは、これまでにさまざまなラグジュアリー船でのクルーズ体験をお持ちです。その中でもさらに音楽好きの人が集まって、ゲスト同士の素晴らしい交流ができ、大変意味があるクルーズになりました」。日本からの参加者は13名、半数は同社による音楽クルーズのリピーターだったという。

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「船体は6万3900トンと大きすぎず、乗客人数は約900人とちょうどよい広さです。空間設計・コンセプト設計も良く考えられていて、船内どこを歩いても光に溢れていて明るい。一歩先を行くクルーズ船だと感じました」

 

「食の楽しみも充実しています。船内には6つのレストランがあり、その日の気分に合わせて好きな時間に選んで利用できるのが嬉しいポイントです。2カ所のメインダイニングはどの料理もできたてにこだわっているので大変おいしく、お客さまにも大評判でした」

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「さらに客室も評判がよかったです。ベッドサイドには、スマホを置くだけでチャージできるワイアレス充電器パッドが埋め込まれていて、夜中に起きてベッド横に立つと足元のセンサーが光ります。またヘアドライヤーも洗面所の外のドレッサーでできたりと、細かいところまで気を使っているという印象で、導線もすばらしいと感じました」と柴崎氏。

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バーも充実し、お酒好きの方にも嬉しい空間。乗下船もスムーズでストレスは一切なく、ドリンクやチップなどがすべて含まれたオールインクルーシブのシステムも評価が高かったそうだ。

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