「クイーン・エリザベス」「クイーン・メリー2」
キュナードのクイーン2隻を乗り継ぐ

「クイーン・エリザベス」「クイーン・メリー2」 キュナードのクイーン2隻を乗り継ぐ
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2017.04.27
ワールド・クルーズ途上で日本周遊を行った「クイーン・エリザベス」、アジア諸国をめぐった「クイーン・メリー2」。
この機会を逃すまじと2隻のクイーン客船に乗船した。

写真=篠田勇、藤原暢子 文=藤原暢子
QUEEN ELIZABETH

神戸港のポートターミナルに到着した。日本人、外国人、旅行会社の人……かつてなく大勢の人がいる。目の前に停泊しているのは「クイーン・エリザベス」。2014年と2016年の2回、横浜でも多くの人がこの船をひと目見ようと大さん橋に集まった。今回が大きく違うのは、私たちが今日ここからクイーン・エリザベスに乗船し、8日間のクルーズを行ったあと、神戸でまた下船できるということだ。

 

ワールド・クルーズの途上だが、初の日本発着。船内見学会とは違って、本当の乗船手続きをする時は心弾む。2年前の発表直後から申し込み殺到の同クルーズ。抽選で幸運を手に入れた600人の方々と一緒に、船内に向かった。

 

●船上で感じるキュナードらしさ

 

客室に着いたとほぼ同時にキャビン・スチュワードのジェームスがあいさつに来た。「荷物は届きましたか」など、いろいろと気を使ってくれる。最近は船も巨大化し、誰が客室担当なのか、顔を合わせることも減ってきているので、キュナードの、この折り目正しいサービスにハッとさせられる。

 

乗船して翌日は航海日。船はほぼ満室だが皆それぞれのところでくつろいでいるのか静かな午前中だった。ところが午後、ピアノコンサートが始まると大勢の乗客が集まってきた。美しいものを大切に楽しもうとする乗客の行動がとてもキュナードの船らしい。

 

その後、近くに座っていたシドニーから区間乗船の英国人夫妻とアフターヌーン・ティーを飲みながら話す。「日本周遊で日本の方が乗ってきて船内が日本らしくなったわ。ビュッフェでは日本の方向けにお寿司も出るから私たちもいただいているのよ」などと言って笑っている。

 

取材ということもあり、ブリタニア・レストランでの夕食は6人席に私と同行のカメラマン2人で座った。翌日、あるご婦人が来て「こんな大きな席にお二人なの? よろしければ私たちのテーブルに来ませんか?」と誘いに来てくれた。2組のフランス人夫婦で世界一周をしているらしい。

 

「私たちも英国から乗船した時はフランス人だから少し苦労したの。でも言葉も慣れて、乗客やクルーとも仲良くなって、今は快適よ。日本の港での見送りはどこも素晴しいわね。感動したわ」。

 

「なかなか覚えられないんだよ」。ご婦人の旦那さんが見せてくれたのは、日本の文化や習慣、簡単な日本語がローマ字で書かれた12ページにもわたるシート。日本発着前に、日本についての講座が行われ、その時に配布されたらしい。講座は希望者が多く、結局3回に分けて行われたという。国籍を超えた乗客の気持ちがあたたかい。

 

CRUISE GALLERY
時折さまざまな所で行われるハープ演奏。周囲がエレガントな雰囲気に包まれる
ワールドクルーズでは航海日も多く、2階建ての「ライブラリー」は盛況
四重奏の流れる中での「クイーンズ・ルーム」でのアフターヌーン・ティー
9デッキにあるガラス張りの「ザ・ガーデン・ラウンジ」は海や空が見渡せる

 

●融合してゆく乗客たち

 

ある日のお昼、パブ・ランチでも食べようかと少し早めに「ゴールデン・ライオン・パブ」に向かう。その時間の前に、パブでダーツ大会があったようで、英国人と日本人が和やかにゲームをしている。簡単な英語や日本語が入り交じって盛り上がっている。そのまま、英国のパブ・ランチやエールビールを味わう日本人が多かった。

 

夜はキュナードの独壇場のダンスホール「クイーンズ・ルーム」が一番華やぐ。高い天井に生演奏でこれだけ優雅に踊れる空間は陸でもそうはない。フォーマルの日は着物を着た女性と外国人乗客が踊る姿もあり微笑ましかった。

 

●快適なクルーズのために

 

レセプションを通ると、日本人女性がクイーン・エリザベスの写真付きハガキを送りたいようで、いろいろ聞いている。耳を澄ますと完全に日本語のみで話をしているが、レセプションの女性はその乗客の身ぶりやカタカナを注意深く聞き取り、要望に完璧に対応している。何カ所かでそんなシーンを見かけた。

 

夕食のテーブルにはおしぼりが置いてあったり、各場所でクルーたちがいろいろなカタコトの日本語で話しかけてくれる。客室のテレビもNHKの海外衛星放送や日本語版の映画が加わっていた。

 

聞けば、日本人乗客が少しでも快適に過ごせるように半年以上前からさまざまな取り組みを始めたという。乗客への講座だけでなく、クルーにも日本人を迎える際の講習を行ったそうだ。「日本人は『ノー』と言われるのを嫌がります。他の案や日にちの変更を提案してみましょう」「相手のことを指さすのは失礼にあたります」などレストラン、客室、レセプションなど部署ごとの細かい注意書きと日本語集を配られたらしい。

 

伝統と歴史あるキュナードが、日本人乗客のために行っている工夫や努力を知って胸が熱くなった。

 

今年、来年と日本周遊で行った試みの数々は、2019年の本格的な日本発着クルーズでさらに充実し、それを多くの日本人が享受できるのだ。

CRUISE GALLERY
アトリウムの階段。3フロアが吹き抜けになっていていろいろな人が交差してゆく
夕刻、「ロイヤル・アーケード」でウィンドーショッピングしながら客室へ着替えに
日本語メニューもそろってオーダーしやすい「ブリタニア・レストラン」
アトリウムの階段。3フロアが吹き抜けになっていていろいろな人が交差してゆく
客室(グリル&レストラン)
CRUISE GALLERY
専用ラウンジ
クイーンズ・グリル
クイーンズ・グリルの客室
ブリタニア・レストランのバルコニー付き客室。朝はバルコニーで朝食
アメニティーは創業145年、英国王室御用達の「ペンハリガン」
ペンアイコン取材メモ

[クイーン・エリザベス]
ワールド・クルーズ(区間)7泊8日
日程:3月13日(月)~3月20日(月・祝)
コース:神戸~鹿児島~釜山~広島~高知~神戸(※航海日省略)
クルーズ代金:16万9000円(内側)~59万5000円(クイーンズ・スイート)
総トン数:9万901トン/乗客定員:2,081人

関連記事
TOPへ戻る
シェアアイコン