ミュージック・クルーズ主催のMightyCrownインタビュー
――レゲエ界の雄が企てる、「この楽しさをカルチャーごと日本に持ってきたい!」
――船内ではどんなことをしようと計画していますか?
S これから発表していこうと思っているんだけど、まずは野外のプールがあるメインデッキで、アーティストのバンドショーを毎晩やろうと考えています。
T 夕方くらいからね。
S まだ発表前なので詳しくは言えないんだけど、アーティストもバンドも豪華になる予定です。
――楽しみですね! 私は常々クルーズ客船に乗るなら海を近くに感じられるバルコニー付き客室がいいと主張しているのですが、今回もバルコニー客室、特に上の方の階だと、自室のバルコニーからも「あ、デッキで音が始まったな」なんて楽しめそうです。
――夜はどうですか?
S 天井がLEDになっていて100メートル近くあるプロムナードがあって、そこでオールナイトのいわゆるクラブイベントをしようかなと思っています。メインデッキではバンドのショーをやりながら、夜更けとともにこちらではサウンドプレイ(DJプレイ)を。
T 大人の時間ね。お酒飲みながら「イエーイ!」って。
S あとはスカイラウンジで、レゲエだけじゃなくソウル、R&B、Hip Hopなどオールジャンルで、ラウンジっぽい感じでやりたいなと思ってます。日によってコンセプト変えていこうかなと。たとえば「80年代・90年代の曲」とか、その日ごとのテーマがあったら絶対おもしろいと思うんですよね。
T まだ企画中なんですけど、いろいろなアクティビティーも用意したいと考えています。フットサル場もあって3×3(スリー・オン・スリー)もできるんですよ。あとは、朝ヨガとかね。
――あとはレゲエ・クルーズならではの、「パトワ語(※4)講座」とかもよさそうです。
T それもよさそうですね。今、本当にいくらでもアイデアが出てきているので楽しみですね。
――過去のジャムロック・レゲエ・クルーズでは、みんなで白色の服を着るオール・ホワイト・ナイトもあったんですよね?
T そのオール・ホワイトの日に回したんですけど、すごく楽しかったです。「みんな真っ白で決まってるな!」って。
S ダミアン・マーリーが、一晩俺たちのバースデー・パーティーをやってくれたんですよ。そのときがオール・ホワイトだったんです。
T そうそう「俺、白のパンツねえわ!」って、前の日に慌てて買いに行った。
S 自分たちが参加した海外のクルーズではみんなちゃんとオール・ホワイトの服を着る人が多かった。そういうのもやってみたいですね。今はアイデア段階なので、まずはメインの骨組みから決めていって、いろんなアクティビティーをやりたいですね。
一番大きなことに挑む!
――MSCクルーズの客船に決めたきっかけは。
S クルーズ客船選びに関しては、船会社の方とたまたま共通の知り合いがいて。友達のDJ SARASAが「クルーズ会社で働いている友達がいる」ってMSCクルーズのキャシー(マーケティング・広報部長)を紹介してくれて、そこから進展していった感じですね。
――「MSCベリッシマ」は日本発着を行う外国船で最大の船です。どうしてこの大きな船に決めたのでしょう。
S MSCベリッシマは2019年にできた船で、2020~2021年はコロナであまり運航していないので、ほぼ新品ですよね。船の設備とか規模とか、自分達が乗ってきたクルーズ客船の中でも、一番きれいだし、一番新しいし、一番大きい。世界のレゲエクルーズの中でも一番でデカいことをやろうとしているので、挑戦ですよね。
T 海外でも業界的にはすごい話題になっているんですよ。「こいつらまたスゲーとこ出してきたな」と。
S しかも俺らみたいにサウンド(※3)が主催するんだ、って。たぶん世界中のサウンドは誰も考えないと思うんですよね。
(※3 移動式の音響システムを保有するレゲエDJ集団。Mighty Crownのスタイル)
――旅行会社が主催するのが一般的ですよね。
S そうですね、自分たちはほぼ一個人ですからね。中小企業というか、ひとつの軍団というか。ただ、これまでいろいろなイベントの主催をやってきたので、小さいチームですけど動きはすごく良いと思います。自分たちのチームだからこそできるっていうのはありますね。
――正直、痺れます。その度胸に。
S チャレンジですよね。
T これまで経験してきた客船とサイズが違うから、船内でも会わない人とかでてくるのかな。
――10万トンを超える客船だと、船内で会わない人は出てきそうな気がしますね。
S そうなんだ。ただ人の行動ってルーティーンっていうか、たとえば同じ場所へ行くときに絶対に右から行くとかありそうですよね。
T それありそうだね。「あれ、また会ったね!」「覚えてる?」みたいな。クルーズの中でのあの感覚すごく良いですよね。みんな陽気になっているから、近所の人と話しているような感じになる。
――ほかのアーティストの方も大勢乗りますが、アーティストの方々もウキウキして船内散策しそうですよね。
S みんなしますよ、俺ら含め。
T 最初にすることじゃないですか。まず船内探索してみようぜ! って。
――野外フェスや大きなイベントだと、出演者と観客のスペースが分かれていますよね。でも客船って意外とフラットなので、散策中にお客さんに囲まれてしまうかもしれませんね。
T ちょっとはあるんじゃないですか。サイモンがミッキーマウス状態で、「うわ、サイモンだ! 写真撮ってください」みたいな。まぁセキュリティーに囲まれているから大丈夫だと思うけど。
S ないない、セキュリティーなんて。逆に目立つし(笑)。
――売れ行きがすごくいいですね。クルーズ販売開始日に完売した客室がいくつも出ていますが、それは想像していましたか。
S 2カ月ぐらいかけてそれくらい売れてくれたら良いかなと思っていたら、初動がすごくよかったですね。フェスやライブのチケットを買う感覚で、皆がワーっと申し込みや問い合わせをしてくれたんだと思います。
――どうやってプロモーションしたのですか?
S SNSだけですね、自分たちの。そこから他のメディアが紹介してくれて、とか。
――クルーズ業界でも話題になっていて。
S そう……みたいですね。なんか違う感じのが来たぞ、みたいな感じなんですかね。
――はい、セールス的にもそうだし、企画的にもそうだし。
S これから先も、いろんなことが見えてきそうですね。
T 大きな枠でみたら、日本のエンターテインメントとして新しい形がひとつ生まれるというところもあると思うんですよね。なんかそういう言い方すると、大きく聞こえちゃうんですけど。
S 日本のクルーズの常識を、いい意味でアップデートできてるのではと思います。「こういう感じもあるんだ」みたいな。今までとは全然違う角度だと思うんですよね、新しい風というか。
――この「FAR EAST REGGAE CRUISE」はMighty Crown30周年記念イベントで、同時にMighty Crownのサウンド活動のファイナルとも発表されていますよね。そのあたりについてもお聞かせ願えますか。
S ファイナルといっても、あくまでもサウンド活動のファイナルで、Mighty Crown自体のファイナルではないので。
T サウンド活動のファイナルと言ってもわかりづらいですよね。つまりこのメンバーで一緒になって、チームになって、人前でセットでプレイする活動の休止ですね。DJ集団みたいな感じ、と言えばわかりやすいですかね。
―― とはいえ、寂しい気がしますね……。
S でも、ここで終わりであり、また新たなストーリーの始まりでもあるので!
【インタビューを終えて】
インタビュー後、今回担当してくれたライターの北野さんと「Mighty Crownの2人、“クルーズは楽しい”って、どんだけ言うんだ!ってぐらい何度も言ってましたねえ」と話しながら帰った。クルーズの楽しさを、改めて思い出した一日だった。
思い起こせばMighty Crown主催の横浜レゲエ祭は当初、横浜ベイホールで行われていた。その時代にも足を運んだことがあったが、その後は規模を拡大し、ついには横浜スタジアムで開催された。深夜のクラブも楽しかったが、3万人が真夏の太陽の下、タオルをブンブン振っている光景は圧巻だった。揺れるはずのないスタジアムが、踊る人々の振動で揺れた。その時、歴史の一証人になった気がしたのを覚えている。
時は経て、ついに「MSCベリッシマ」だ。17万トンの客船は時に船にいることを忘れるほどの大型で、揺れも少ないだろう。とはいえMighty Crownと踊る乗客たちの勢いで、揺れるはずのない大型客船がユラユラと揺れるかもしれない。このクルーズはMighty Crownのサウンド活動30周年のファイナルだが、ここからきっとまた新しい扉が開かれるはず。船上でまた、歴史の一証人になりたい。
(CRUISE編集長・吉田絵里)
【クルーズ概要】
タイトル:Mighty Crown 30th Anniversary -The Final-FAR EAST REGGAE CRUISE
日程:2022年9月17日(土)~9月22 日(木)
客船:MSCベリッシマ(MSCクルーズ)
コース:横浜~済州島~鹿児島~横浜
クルーズ代金:145,000 円~500,000 円
オフィシャルサイト:https://www.fareastreggaecruise.com/