心の赴くままに、素晴らしきワイナリーめぐり
ニコ・クルーズの中欧ドナウ川クルーズ

心の赴くままに、素晴らしきワイナリーめぐり ニコ・クルーズの中欧ドナウ川クルーズ
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2025.11.27
6月のヨーロッパはリバークルーズやワイナリーめぐりには最高の時期だ。気候は穏やかで川の水位は安定しており、ブドウの木々は瑞々しい葉や小さな実をつけている。そんな時期にリバークルーズ船「ボレロ」のドナウ川クルーズ(8日間)で、ワイン造り数千年の歴史を持つ中欧4カ国(ドイツ、オーストリア、スロバキア、ハンガリー)をめぐった。
写真=Aurélien Foucault(オーレリアン・フーコー)
文=冨永真奈美
リバークルーズ船「ボレロ」のダイニングには、ドナウ川流域のワイン産地はもちろん、世界各国のワインが揃う

ドナウ川は古代より、ワインを運ぶ重要な水路だった。この川はまた、ブドウ栽培にも恵みを与える。暑さや寒さがやわらぐことでブドウはより安定して成熟し、エレガントな酸と豊かな果実味を持つワインになるという。さらにこの川は、流通や栽培などの面でワイン造りを支えてきた大動脈であり、川沿いの寄港地には有名なワイン産地が多く、老舗から新進気鋭まで多彩なワイナリーが集まっている。

 

リバークルーズなら船に乗ったまま楽に寄港地間を移動でき、しかも街中に停泊するのでタクシーなどを利用してワイナリーを訪問しやすい。この利点を生かし、オーストリアとスロバキアの2カ国3寄港地で3つのワイナリーを個人でめぐることに決めた。

ボレロに乗船、ドナウ川クルーズへ。赤、青、白のニコ・カラ―が、深い青緑色のドナウ川によく映える
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ボレロに乗船、ドナウ川クルーズへ。赤、青、白のニコ・カラ―が、深い青緑色のドナウ川によく映える
美しき渓谷が育むワイン
クレムスタール(オーストリア/ニーダーエステライヒ州)

乗船2日目に、ユネスコ世界遺産バッハウ渓谷のクルージングを楽しんだ。緑の木々に覆われた丘陵には古城や修道院がそびえ立ち、段々畑に植わったブドウの樹々が韻律を刻むような軽やかさで広がっている。「ドナウ川で最も美しい」とされる美景を船上で眺めていると、いつの間にか最初の寄港地のクレムスに到着していた。バッハウ渓谷の東端に位置するクレムスは、オーストリア最大の高品質ワイン産地ニーダーエステライヒ州のクレムスタールに属する街である。

ユネスコ世界遺産バッハウ渓谷のクルージングを、1時間30分以上にわたりゆっくり楽しむ
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ユネスコ世界遺産バッハウ渓谷のクルージングを、1時間30分以上にわたりゆっくり楽しむ
最初の寄港地クレムス(シュタイン地区)の街並み。自然の中に伝統的な建造物が立つ
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最初の寄港地クレムス(シュタイン地区)の街並み。自然の中に伝統的な建造物が立つ

ニーダーエステライヒ州はまた、グリューナー・ヴェルトリーナー(白ブドウ)というオーストリアの地場品種が多く栽培されている場所だ。このブドウから造られる白ワインは心地よい酸味が特徴で、寿司や刺身といった日本食との相性が抜群なのだ。だから本場でそのワインを味わうのが楽しみだった。

 

桟橋からタクシーで10分も経たないうちに着いたのはフェアトホフ・ワイナリーだ。2021年創業の新しいワイナリーだが、建物は16世紀後半の古式ゆかしい建造物を改装したものだ。

桟橋からタクシーで7分程度、徒歩でも25分程度でたどり着けるフェアトホフ・ワイナリー。リバークルーズ船の乗客など多くの観光客がワインテイスティングに訪れるという
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桟橋からタクシーで7分程度、徒歩でも25分程度でたどり着けるフェアトホフ・ワイナリー。リバークルーズ船の乗客など多くの観光客がワインテイスティングに訪れるという

「皆さんの期待に応え、おいしいワインを造ろうとがんばっていますよ」と、醸造責任者のアニカ・ホフマンさんは力強く語る。ドイツ出身のアニカさんがオーストリアに移住したのは2007年とのこと。それ以来バッハウやクレムスタールといった、ドナウ川髄一の美景の中でワイン造りに携わっている。「この美しい渓谷、そして何よりもワイン造りを愛しています」と朗らかに笑う。

本場で味わうグリューナー・ヴェルトリーナー

見晴らしの良いテイスティングルームで、グリューナー・ヴェルトリーナーの試飲を楽しんだ。最初の一杯は、クレムスタールのシュタイン村のブドウのみで造られたもの。爽やかな酸味とライムの香りが心地よく、親しみやすい味わいだ。続いて単一畑のブドウを使ったワインも同じくさわやかだが、こちらは桃の風味とミネラル感が際立つ。どちらも白胡椒のニュアンスが特徴的でとてもおいしい。

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醸造責任者アニカ・ホフマンさん。「時々タンクを抱きしめて、発酵中に何が起きているかを感じ取ろうとしています」と語る。毎日すべてのタンクを試飲して状態を確認するとのこと
シュタイン村のブドウ畑のグリューナー・ヴェルトリーナーのみで造られた白ワイン。ステンレス製タンクで発酵、熟成されたフレッシュでフルーティなワインだ
単一畑のグリューナー・ヴェルトリーナーで造られた白ワイン。こちらは澱で熟成されたまろやかな味わいが特徴となっている

「同じブドウ品種でも、育った場所や醸造方法が違うと風味に違いが出ますからね。5人の造り手がいたら5通りのワインができあがりますよ」とアニカさんは言う。アニカさんと話していると、アニカさんをはじめワイン造りに携わる人々は、専門知識はもちろん、長い間現場にいるからこそ培われた直感をもとに精緻なワイン造りを行っているのだと感じられる。そして造り手によって異なるワインができあがるのなら、今日はアニカさんが造った初夏の暑さを吹き飛ばすような、さわやかなグリューナー・ヴェルトリーナーを味わえてよかったと心から思えた。

 

今後、ショップやワインバーをさらに整え、2026年またはそれ以降にホテルとレストランも完成するとのこと。フェアトホフ・ワイナリーは、本格的な滞在型ワイナリーへ生まれ変わろうとしている。次回は数日泊まってワインと食事を楽しもうと決めた。

アニカさんの愛するドナウ川の美景。ここにも気候変動の影響があり、ブドウ収穫時期の判断においてさらなる注意が必要となっている
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アニカさんの愛するドナウ川の美景。ここにも気候変動の影響があり、ブドウ収穫時期の判断においてさらなる注意が必要となっている
船上ディナーで味わう至福のペアリング

その日の夕刻、船上のディナーでもグリューナー・ヴェルトリーナーを楽しんだ。ペアリングしたのは、クルーにすすめてもらった欧州のマトウダイのグリル。オランデーズソースとアスパラガスの付け合わせが、ワインのさわやかな酸味と柑橘系の風味にぴったりだ。ダイニングの全面窓を通して、先ほどまでいたグリューナー・ヴェルトリーナーの段々畑がよく見える。こんな陸との近しさもリバークルーズならではの魅力だと実感した。

船のルーフデッキから見える夕暮れのドナウ川。刻々と色を変える空と川面の美しさも魅力だ
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船のルーフデッキから見える夕暮れのドナウ川。刻々と色を変える空と川面の美しさも魅力だ
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