ラグジュアリー・クルーズは次の10年へ――
スティーブ・オデル氏に聞く、リージェントとオーシャニアが描く未来

リージェント セブンシーズ クルーズとオーシャニア クルーズに長く携わっているスティーブ・オデル氏に、
業界の変化、日本市場への期待、両ブランドの戦略を聞いた。
――この10年をどのように振り返りますか。
コロナ禍による中断は非常に大きな出来事でした。しかし、最も印象的なのは、その後のクルーズ業界の回復力です。現在の市場はコロナ前を上回る規模になっており、回復も非常に早かった。私たちのように歴史あるブランドは、お客さまから信頼され、チームも維持できたことで、早い段階から回復の波に乗ることができました。
世界のクルーズ人口は、コロナ前には3000万人弱でしたが、今年は3700万人に達する見込みです。確立されたブランドにとって、この成長は大きな追い風になっています。
――ラグジュアリー・クルーズ市場には、どのような変化がありますか。
ラグジュアリー分野は大きく拡大しています。2019年以降だけでも、供給量は約50%増えました。600~700人規模の客船が増え、さらにリッツ・カールトンやフォーシーズンズのようなホテルブランドも参入しています。
ただし、それらは競合というより、市場全体にとってプラスです。ホテルブランドはクルーズ未経験者に、海の旅という選択肢を知らせてくれる存在です。結果として、ラグジュアリー・クルーズへの認知が高まり、業界全体に良い影響をもたらしています。
――なぜラグジュアリー・クルーズの需要は伸びているのでしょうか。
大きな理由は、お客さまの需要そのものが強いことです。クルーズは今、ある種のルネサンスを迎えています。一度荷ほどきをすれば、2週間で10~12の寄港地を訪れることができる。安全で快適、サービス水準も高く、価値ある旅の形として再評価されています。
また、私たちのブランドでは約半数がリピーターです。ラグジュアリーの世界では、ホテル、時計、鞄、服と同じように、気に入ったブランドを長く選び続ける傾向があります。その信頼を守りながら、同時に常に商品を進化させていくことが重要です。

――日本市場をどう見ていますか。
この2年ほどは、円安と航空運賃の高騰により、日本から海外旅行に出る負担が大きくなりました。その意味では、その意味では、販売環境は厳しい状況にありました。ただし、これは一時的なサイクルでもあります。私たちは短期的に見ているわけではなく、日本市場には長期的に投資していく考えです。
日本のお客さまは非常に洗練された旅行者です。宿泊、食、サービスに対する理解が深く、ラグジュアリーの本質をよく知っている。だからこそ、日本は今後も重要な市場です。
――今後の日本市場での戦略は。
日本では旅行会社との関係が非常に重要です。私たちは旅行会社と密に接し、セミナーなどで商品や将来計画を丁寧に伝えています。一方で、今後は個人旅行のお客さまにもより強く訴求していく必要があります。これまで日本はグループ旅行が中心でしたが、次世代の旅行者は英語や第二言語への対応力も高く、より自由な旅を求めています。
また、日本では「歴史」や「信頼」が大きな意味を持ちます。私たちは30年以上のブランドの蓄積があり、旅行会社との関係も長く続いています。この信頼こそが強みです。


――リージェント セブンシーズ クルーズとオーシャニア クルーズの違いをどう説明しますか。
リージェントは、約750人規模、全室スイート、そして寄港地観光まで含むオールインクルーシブが特徴です。まさにラグジュアリーの頂点に位置するブランドです。
一方、オーシャニアは約1200~600人規模で、客室の約3割がスイート客室です。すべてを代金に含めるのではなく、その分、価格はリージェントより抑えられています。いわば、ラグジュアリー・クルーズの入門編ともいえるブランドです。
共通しているのは、食、サービス、クルーの教育、船内空間の質です。美しい家具、寝具、建築的なデザインなど、上質さは両ブランドに共通しています。ただし、お客さまへの提案の仕方が異なります。最高のものを求めるお客さまにはリージェントを、より価格を意識しながら小型船の上質さを体験したいお客さまにはオーシャニアを提案できます。

――オーシャニアは乗客に18歳以上の年齢制限を設け、大人専用の客船へと移行しました。反応はいかがですか。
非常に良い反応を得ています。これにより、静かで洗練された船内体験という個性がより明確になりました。
一方で、リージェントでは多世代で楽しむ旅のスタイルも定着しています。特に夏のヨーロッパやアラスカでは、祖父母が家族を連れて乗船するケースもあります。両ブランドの違いが、よりはっきりしたと言えます。
――今後10年の展望を教えてください。
今後10年で、リージェントに3隻、オーシャニアに4隻の新造船を計画しています。ラグジュアリー市場に対する私たちの自信の表れです。これまでの10年を振り返るだけでなく、次の10年にはさらに大きな可能性を感じています。日本市場もその成長の重要な一部になると考えています。

