News

クルーズ&フェリー学会、コロナ後の状況や韓国の取り組みを紹介

2023.11.22
業界

日本クルーズ&フェリー学会(赤井伸郎会長)は18日、2023年度総会を東京国際クルーズターミナルで開催した。総会後の講演会では、ポストコロナでのクルーズ客船の日本寄港再開の動向などを取り上げた。外国クルーズ船社からは、韓国の寄港地を増やす傾向が出ていることや、日本のCIQ(税関・出入国管理・検疫)を迅速化する要望も多く挙がった。

 

セッション1は「クルーズ業界の今」をテーマに、同学会事務局長の池田良穂大阪府立大学名誉教授がコロナ後のクルーズ業界について講演。外国客船のシンガポール発日本着クルーズに最近乗船した際、中国人乗客が多く、船長やスタッフも中国人だったことを紹介。日本に着いた際、下船で時間がかかったため「迅速なCIQ対策が必要」と指摘した。欧米客船会社の経営状況については、2021~22年業績は赤字だったが、23年から回復する見通しを示した。

 

国土交通省港湾局の清水崇クルーズ振興室長は「訪日クルーズ客船の現状と将来」で講演。クルーズ業界の回復の動きを説明した中で、外国船社では寄港した地元の食材を活用するプログラムもあり、「地元の食材調達には期待している」と述べた。日本の客船会社が積極的に新造船など取り組んでいることには、「いい動きが出ているので、みなさんといっしょにがんばっていきたい」と強調した、

 

セッション2では、商船三井がグループの新クルーズ戦略を説明した。商船三井の向井恒道常務執行役員ウェルビーイングライフ営業本部長は、同営業本部の戦略の方向性について解説。山口直彦審議役は新ブランド「ミツイ オーシャン クルーズ」と、第1船となる「ミツイ オーシャン フジ」を紹介した。増子祐司フェリー・関連事業部長は10月に発足した「商船三井さんふらわあ」が国内最大のフェリー・内航RORO船運航会社となったことを話し、日本初のLNG燃料船「さんふらわあ くれない/むらさき」について、これまでより環境負荷が減ることなどを説明した。

 

セッション3では、日本に寄港する外国船クルーズ船社が講演。MSCクルーズジャパンの区祥誠営業部長は、今年から行っている日本配船が好調であることや、LNG燃料のクルーズ船が就航したことについて、「GHG削減はMSCクルーズの重要なミッション」とした。プリンセス。クルーズの市川紗恵ディレクターは「ダイヤモンド・プリンセス」航再開で関係者の協力があったことについて感謝の言葉を述べた後、同船の商品販売が好調であることを話した。来年就航する新造船が初めてのLNG燃料船であることも挙げた。シルバーシー・クルーズの糸川雄介日本・韓国支社長は、国内寄港地の英語の対応度が十分でないと乗客から意見があることを挙げ、今年から韓国の寄港地を増やしたところ、韓国での英語の対応力が高く評価されているとした。「これまでは国内の港で競争していたが、海外の港との競合になっている」と日本寄港に対して危機感を示した。ロイヤル・カリビアン・インターナショナルの日本総代理店ミキ・ツーリストの百武達也クルーズ・カンパニー長は、「クルーズが世代を超えた家族旅行を提供している」とした。このほか日本のCIQに対して「柔軟に対応してほしい」と要望する声が相次いだ。

 

セッション4は韓国のクルーズをテーマとした。大阪~釜山間で定期フェリー「パンスタードリーム」を運航する韓国パンスターのキム・ヒョンギョム会長は、2025年就航予定の新造船「パンスターミラクル」や同社のクルーズ事業への関わりで講演。「パンスタードリーム」では定期運航のほか、週末に釜山港でワンナイトクルーズを行っていることを紹介。クルーズ事業として客船「コスタ ネオロマンチカ」「コスタ セレーナ」をチャーターしたことも話した。「パンスターミラクル」はアトリウムに噴水や大型スクリーンを、甲板上にはプールも設置。テラス付きの客室もあるという。定期航路だけでなく、月に1~2回は東アジアでのショート・クルーズも計画。「いい船旅となるよう目指したい」と語った。

 

韓国の京幾大学校観光経営学科の姜淑瑛教授は「韓国クルーズ産業の現状」と題して講演。韓国のクルーズ市場は中国の市場拡大とともに寄港数が増加。2016年にはインバウンド数の1割がクルーズ客船によるもので、消費額も高かった。しかし、韓国でのサードミサイル配備を中国が反対して、17年には中国から韓国への寄港が激減。19年になり回復してきたがコロナ禍となり、23年はさらに回復を見込んでいる。国としてもクルーズ産業に力を入れることになり、クルーズ専用港、旅客と貨物の兼用港を指定。浦項港にはクルーズターミナルを建設中で、済州島には19年にクルーズ船用品センターが開設された。出入国手続きを簡素化してクルーズ乗船客の受入態勢を整備し、滞在時間の延長を図った。一方、課題として国内市場が伸びていないこと、中国からのインバウンドに偏っていることや、国内にクルーズ船社がないことなどを指摘。国がクルーズ市場を拡大するため産業育成基本計画を立てていることも紹介し、「韓国のクルーズ市場は外国船の寄港で発展してきたが、これからは国内市場を広げようとしている」と解説した。

クルーズ&フェリー学会、コロナ後の状況や韓国の取り組みを紹介
TOPへ戻る
シェアアイコン