「イタリアの輝き」を感じながら、
コスタクルーズの新造船で中東をめぐる
環境に配慮したLNG燃料客船として、2019年にいち早く「コスタ スメラルダ」を就航させたコスタクルーズ。シリーズ2船目の「コスタ トスカーナ」も2022年3月から地中海クルーズを開始した。
実はまだ各国の入国や客船での規制が若干残っていた2021年10月にコスタ スメラルダ(以下スメラルダ)の地中海クルーズに乗船した。当時は、船上で3日おきの抗原検査があったりしたが、もちろん今は両船とも規制はなく、書類も不要だ。
のびのびとコスタ トスカーナ(以下トスカーナ)に乗り込み、探検開始だ。施設の配置はスメラルダとほぼ同じだが、“イタリア・デザインのシンボル”のような船なので、ラウンジの家具や踊り場の壁画にも思わず見入ってしまう。
共用施設は6〜8階、16〜19階に集約されていて動線が分かりやすい。18階の船尾にある巨大LEDスクリーンも備わった広場「ピアッツァ・デル・カンポ」からふと下を見ると、8階の両側に小さめのインフィニティー・プールが新設されていた。プールから船の航跡を眺めると気持ちがよさそうだ。周囲には「サンセット・バー」もあって、ソファやイスも多く、思い思いにくつろげる。広めのデッキが両舷に続いていて(途中8階に上るが)、そこにもイスやテーブルがあるので海を近くに過ごせるし、ウォーキングもできる。
スメラルダには「CODE(コスタ・デザイン・コレクション)」という船上初のイタリアデザインの博物館があったが、こちらは博物館でなく、イタリア・デザインを船内各所に散らした印象だ。
成功しているのが「カルテル・カフェ」。船内吹き抜けのステージ「コロッセオ」の8階周辺にカフェ・カウンターが2つ、その間に小さなカルテル(※)の展示ショップがある。
照明やソファ、テーブル、コロッセオを見下ろすイスもカルテル製でインテリア好きにはたまらない。時間によっては軽食も出るのでカフェ周辺はいつも人でにぎわっていた。
船外のちょっとした空間に空中庭園的な場所やブランコがあったり、船内の寄港地ツアーを申し込むエリアでさえも内装デザインが素敵なので、つい立ち止まって座り心地を試してみたりする。
(※)1949年に生まれたイタリアの家具メーカー。強化プラスチックを使ったシンプルなイスなどが有名
■イタリアの日常が船上に
私事だが、2021年秋にスメラルダに乗船した時と今回では少し状況が違った。2022年6月から、学生ビザを取ってイタリアに半年遊学をしていたのだ。日本出入国するための検査や隔離が多すぎたし、時期的に少し長期で他国に住んでみようと突発的に行動してしまった。
食を含め、日本はいろいろな国の文化を受け入れているが、たまたま選んだイタリアには思ったより独自の生活様式が根付いていた。
毎日欠かせないバール(軽食やお酒も出るカフェ)でのコーヒーや、冬で寒くても出向くジェラート店、食前に食欲を刺激するために飲むアペリティーボ(食前酒)はまさに日常の風景。家で朝食を取る人は、かなりの確率でヘーゼルナッツペーストの「ヌテラ」をパン用に確保している。ピザもナポリやローマのご当地料理かと思っていたが、もちろん全国区だ。
コスタの乗客はもちろんイタリア人だけでなく、インターナショナルだが、知らず知らずのうちにイタリア人が譲れない“日常ルーティーン”の飲食体験をすることになる。メイン・ダイニングもビュッフェ(ハムなどは種類が多くて選べないほど)もイタリア料理が主だが、魚も肉もさまざまな料理があるのでどれも美味で食べやすいし、日本人には量もほどよい。
同船も、地中海クルーズならばスペインやフランスの料理を少し取り入れるし、インド人乗客が多ければ特別にカレーの種類を増やしたりという気遣いも忘れない。
ついでに言うと、イタリア人は劇場などで前を向いてショーを観る人が少ない。だからこの最新船2隻では、6〜8階の円形劇場「コロッセオ」でメイン・ショーを行うことが多い。好きなドリンクやフードを食べながら、家族や友人とおしゃべりをしながらエンターテインメントを楽しむ。
船首にも小さめの劇場があるが、結局は天井や柱のLEDモニターや音楽の中で行うアクロバティックなショーやさまざまなコンサートなどを「コロッセオ」でワイワイのびのびと観ているのが、いかにも“イタリア客船”らしく自由でいいなと微笑ましくなる。