飛鳥Ⅲへの道【シリーズ第1弾】Report

飛鳥Ⅲへの道【シリーズ第1弾】Report
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2023.10.27
その名も、「飛鳥Ⅲ」。飛鳥クルーズの新造客船の名前が発表になった直後、
遠く離れたドイツのマイヤー・ベルフト造船所には、多くの人が集った。
皆一様に晴れやかな顔をしているのは、この日が飛鳥Ⅲのスチール・カッティング、
すなわち今日から新造客船の建造が始まるからだ。
いよいよこの世に姿を現そうとしているスチール・カッティングの晴れ舞台を追った。
写真・文=高橋敦史
お揃いの法被で記念撮影。一体感のある和やかな雰囲気が印象的

今年9月21日にドイツのマイヤー・ベルフト造船所で「スチール・カッティング」が行われ、2025年就航予定の「飛鳥Ⅲ」がいよいよ実際に造り始められた。

 

式典は文字通り「最初の鉄板を切り出す」行事。郵船クルーズの遠藤弘之代表取締役社長や工場内に開設された現地駐在オフィスの社員たち、造船所からは会長のバーナード・マイヤーさんを始めスタッフや関係者らが集った。

 

大きな赤いボタンに遠藤社長やマイヤー会長らが共に手を添えて押すと、ガラス窓の向こうで機械が動き出し、厚い鉄板をレーザーが切り出し始めた。最初の一瞬大きく火花が散り、あとは機器に入力された通りに青い光を放ちながら淡々と切り出す。なるほど、現代の客船作りは最新テクノロジーでスマートに作られていくようだ。

最初の鉄板を切り出すスチール・カッティングでは、関係者代表が皆で赤いボタンを押すのもお約束。右から二人目が郵船クルーズの遠藤社長
CRUISE GALLERY
最初の鉄板を切り出すスチール・カッティングでは、関係者代表が皆で赤いボタンを押すのもお約束。右から二人目が郵船クルーズの遠藤社長
打ち込んだ設計図通りに鉄板が切り出されていく様子も興味深い
CRUISE GALLERY
打ち込んだ設計図通りに鉄板が切り出されていく様子も興味深い

 

切り出されたのは飛鳥Ⅲをかたどった大きなプレート。そこにサインをしたり、ダルマの目入れをしたり。会場は揃いの法被を着た人たちの笑顔に溢れ、和の風情と一体感に満ちていた。

 

遠藤社長も「1年半以上の設計を経て、ようやく実際の建造が始まりました。ここからが本当のスタートと思うと気が引き締まり、期待に胸が膨らみます」と話す。

バーナード・マイヤー会長も日本の習慣にならってダルマに目入れ
飛鳥Ⅲの船影の形に切り出されたプレートに皆でサインをしていく

飛鳥Ⅲは3種類の燃料を使い分けられるエコシップ。全長や総トン数、速力は飛鳥Ⅱとほぼ同じ。客室数を少し抑えて「日本船ならではのおもてなし」に一層磨きをかける。多くの日本の美術品・工芸作品を船内に飾り、さながら「動く洋上の美術館」になるという。

 

性能面ではスクリューを360度回転できるアジポッドなどを採用。エコシップゆえに世界各地の自然豊かな海域で環境負荷を抑えて航行できる点もメリットだ。

 

そして飛鳥Ⅱの2024年の世界一周では、この造船所を見学するランドツアーもある。飛鳥Ⅲが巨大な建屋の中で作られる姿をぜひ見たい。

 

内陸の造船所から海までは川を下っていく。飛鳥Ⅲは2025年春頃に進水して日本へと回航される予定。造船所の方いわく、「客船が川を下る際には鉄道橋や道路橋も外します。まるで眠れる巨人がゆっくりと下っていくような様子は圧巻で、川岸が見物客でいっぱいになるんですよ」。

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