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【寄稿】客船の感染症対策を考える、船室気圧調整で隔離対応

2020.02.25

今回の「ダイヤモンド・プリンセス」船内での新型コロナウイルス感染拡大を受け、日本クルーズ&フェリー学会事務局長の池田良穂・大阪経済法科大学客員教授に、客船の新たな感染症対策について、「船室気圧調整による感染者の隔離システム」を中心に寄稿いただいた。

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クルーズ客船における感染症被害としては、これまでもレジオネラ菌、ノロウィルス、インフルエンザの船内感染拡大事例があり、業界を挙げた感染予防対策がとられてきた。レストラン入口における消毒液での手の除菌は徹底しており、さらに入口に手洗い場を設ける船も現れており、陸上のレストランよりはるかに厳しい対策をとっている。さらに、最近ではビュッフェ料理にも、つばやせき、くしゃみの飛沫がかからないようにガラスガードがついている船が多い。

このように感染事故のたびに対策が進んできたクルーズ客船を新たなウイルス被害が襲いかかった。それが中国武漢から広がった新コロナウイルス感染である。

3,700人余りの乗客・乗員を乗せた「ダイヤモンド・プリンセス」は、1月20日に横浜から17日間の東南アジアクルーズに出港。そのクルーズに横浜から乗船して6日目に香港で下船した香港の乗客が新コロナウイルスによる肺炎を発症した。おそらくこの乗客から感染が拡大して、横浜に帰港して乗客の隔離対策がとられる2月5日朝までの約16日間に600人を超える乗船者が感染するという事態に至った。同船では、ウイルス検査の結果で陽性と判明された乗船者を順次陸上の医療施設に移し、残りの乗客は2週間の船内隔離となった。

詳しい分析はこれからとなるが、今回の感染事案は今後の客船の感染症対策の非常に重要な教訓を与えてくれることになろう。

船内の感染症拡大事案を防ぐためには、種々のハード、ソフト対策が必要となるが、ハード面での対策として必要なのが感染者の隔離システムの整備であろう。室内の病原菌を外に拡散させないように室内を低圧とした「陰圧室」が感染症対策施設では整備されており、一方外部が汚染されている場合には室内の圧力を高くして汚染から守る「与圧機能」が軍用車両や艦船には取り入れられている。

今回のように船内感染が起こった場合には、感染者と非感染者の船内での分離が非常に重要となり、理想的には感染者を陰圧室に隔離すると同時に、非感染者を与圧室で感染から守る対策が最も有効であろう。陰圧または与圧室では、吸気と排気の接続およびドアの開閉方向の違いのほか、高性能フィルターの設置、2重の玄関スペース、内部圧力に応じた内装材の強度などの技術的な検討が必要となる。

日本クルーズ&フェリー学会(会長:梅田直哉・大阪大学教授)では、客船の船室についての陰圧・与圧化に関する技術課題と、国際規則にどう取り込むべきかを検討する勉強会を発足した。第1回勉強会では、今回のダイヤモンド・プリンセスでの事例の検証とともに、艦船における与圧室や陸上病院施設における換気機能について専門家の話を聞く。

(日本クルーズ&フェリー学会事務局長 池田良穂)

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■日本クルーズ&フェリー学会 第1回勉強会
開催日時:3月24日(火)13時30分から
会場:大阪大学の中之島サテライト
問い合わせ・参加申し込み:同学会宛にメール送付のこと(y-ikeda●s.keiho-u.ac.jp)
※●を@に変えて送付
※学会員以外の参加も可能

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