客船評論家ダグラス・ワードのクルーズ・ウォッチ

【今号のテーマ】中東危機でも快適クルーズ
──米国・イスラエルとイランとの戦争は、クルーズ業界にどんな影響を与えていますか。
残念なことに2月末から長引いていますね。ウクライナ対ロシアなどに比べ、インパクトはさらに深刻です。ホルムズ海峡が閉鎖されたことが一因で、中東発着クルーズでペルシャ湾に停泊中の客船6隻が立ち往生してしまいました。貨物船やタンカーなど他の船舶も同様でしたが、幸いにも、すべての客船は4月19日にペルシャ湾を脱出し、5月にはどの客船も通常のクルーズに復帰したようです。
しかしながらホルムズ海峡の閉鎖が続いているため原油輸送などが滞り、私たちの日常生活にも影響が出ています。原油価格の高騰により諸物価値上がりし、空路閉鎖もあり航空券もかなり上昇しました。
よって長期休日はマイカーを避けて電車やバスなど公共交通機関を使ったり、国内旅行に変えたりする人も。海外に行きたいならば長距離のフライトを避けて数時間で行ける場所を選ぶ人も多くなりました。クルーズの場合も同様です。家から陸路の移動だけで乗下船できる船があれば便利でしょう。
──問題が緩和するまでどの様にクルーズと向き合えばよいでしょうか。
私は3つの選択肢があると思います。
自宅に近い港からクルーズしようと言っても無理な場合もあります。日本から地中海やカリブ海、北欧などへ行くならフライ&クルーズになります。ただ戦争前と比べ2割増という状況ですから、しばらく待つのは得策です。
一度は南極へ行ってみたいという人もいるでしょうね。乗船地はウシュアイア(アルゼンチン)が一般的で、何度か乗り換えが必要です。航空券も探検船の料金も割高ですが「一生に一度」の価値は十分あります。
しかし南極も、とりあえず現在は保留しておくのが賢明かもしれません。なぜなら5月初旬に報道されたハンタウイルス感染がオランダ船籍の探検船で発生したからです。コロナのように世界的な感染拡大にはならないようですが、危険度の高いウイルスですから予約は旅行社と連絡を取りながら行うとよいでしょう。
しばらくすればこの新しいウイルスに関する最新情報が得られるでしょうし、乗船地のアルゼンチン保健局も船社と協力し安全な南極クルーズができるようになるはずです。米国ではすでにワクチン製造のため動物実験の段階に入っているとの情報もあります。
待つのではなく、やはり海外クルーズをしてみたいという方は日本から乗船し、飛行機で帰国するという方法もあります。2028年に日本寄港する客船を早期予約するのはいかがでしょう。この夏には航空代金もいくらか安くなるのではないでしょうか。2例を挙げてみました。
例1)2028年3月の「クイーン・エリザベス」
本船のワールドボヤージは10年ぶりで、日本に寄港するのは3年ぶりとのこと。横浜を出たらシドニーやハワイ、ロサンジェルスなどを経由して英国へ向かいます。過去の日本発着クルーズで乗船した方もいるでしょう。外国人が多いこのワールドボヤージは、また違う雰囲気を感じるはずです。より英国客船らしさを味わいたい方におすすめします。
例2)2028年2月の「コスタ デリチョーザ」
本船は東京や神戸などに寄港し、日本を出てからは香港やシンガポールなど東南アジア経由でイタリアへ向かい、世界一周クルーズを終了します。カジュアルな雰囲気で明るく陽気なイタリア船なので、初めての方でも楽しめるでしょう。

日本船だけでなく外国船も日本発着クルーズを頻繁に実施するようになりましたね。
──乗りやすい客船を教えてください。
3隻挙げてみましょう。
・「三井オーシャンサクラ」
2026年9月に就航予定の日本船です。姉妹船の「三井オーシャンフジ」と同型船ですが、2~4泊程度の乗りやすい日数で就航を開始するのです。船内は日本語でのサービスで和食が多く、シニア世代も安心できます。Wi-Fiの使用料や200種類以上のアルコール類やソフトドリンクなどが料金に含まれるオールインクルーシブ制です。最近は寄港地のツアーも各港でひとつは無料になりました。クルーズが初めての方やひとり旅の方にも最適です。
・「セレブリティ・ミレニアム」
ファンネルの「X」マークで知られる同社は食事のレベルが高く、ショーなどのエンターテインメントの豪華さにも満足することでしょう。「ミレニアム」という船名はデビューが西暦2000年だったことから命名されたようです。私は2000年に本船初の大西洋横断クルーズに乗りました。礼儀正しいクルーのサービスは今でも記憶に残っています。
・「サファイア・プリンセス」
同船は2027年から姉妹船の「ダイヤモンド・プリンセス」とダブル就航を開始します。夏の花火大会鑑賞など、双子の2隻が仲良く並ぶイベントも企画されているようですから、クルーズの詳細を調べるのも楽しいでしょう。

ダグラス・ワード(Douglas Ward)
客船評論家。乗船歴61年。2025年版「クルージング&クルーズシップス」(インサイト・ガイド刊、英語版)を執筆・出版。同社姉妹本リバークルージング(欧州&北米版)もあり。趣味は音楽と庭仕事で、和食の愛好者。英国在住。

「CRUISING & CRUISE SHIPS」2025年版が発売中(インサイト・ガイド刊、英語版)。インターネット通販のアマゾンなどで購入できる。
聞き手・翻訳=吉田あやこ
クルーズアンバサダー。乗船歴37年、在英32年。「クイーン・エリザベス2」と初代「飛鳥」の元乗組員。






