万全の体制で運航再開!
ぱしふぃっくびいなす、半年以上ぶりに大海原へ

万全の体制で運航再開! ぱしふぃっくびいなす、半年以上ぶりに大海原へ
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2022.03.18
3月19日に運航再開する「ぱしふぃっく びいなす」。
2021年8月以来、久々となるクルーズに期待している方も多いだろう。
クルーズに先駆けて行われたトライアルで船内を訪問、
その万全の体制を紹介していこう。

写真・文=吉田絵里
神戸港に停泊中のぱしふぃっくびいなす。3月19日から久々のクルーズを実施する

「やっぱり、海はいいですね」
「早く船に乗りたいですね」

 

澄んだ青空のもと、神戸港に停泊している「ぱしふぃっく びいなす」を前に、訪れた人々は皆、そんな言葉を交わし合った。海を目の前にすると、やはり開放感が違う。さらに今日は久々に「ぱしふぃっく びいなす」を訪れられると思うと、心が躍る。

 

「足元の指示線に沿って、前の方との距離を確保しながらお進みください」。

 

受付ではそんなアナウンスがあった。コロナ禍になって早2年、人と人との距離をとることは日常になり、最近は逆に距離を意識することも少なくなった。だからこそ、そのアナウンスを聞いて、改めてその徹底した感染症対策にハッとさせられた。

●乗船当日のPCR検査で得る、安心感

 

受付を終えて進むのは、PCR検査だ。ぱしふぃっく びいなすに限らず、3月より運航している日本籍のクルーズ船3隻(ほかに飛鳥Ⅱ、にっぽん丸)は、すべての乗客に対して乗船当日のPCR検査が行われる。

 

3月21日には全都道府県でまん延防止等重点措置が終了予定で、陸上の飲食店もホテルも娯楽施設も通常営業に向かっている。そんななか、ここまで徹底した対策を行っている施設は、世界を探してもほかにないだろう。逆に言えば、日本で運航するクルーズ船では同じ場に居合わせた人、すべての乗客が「PCR検査陰性」なのだ。ここまで安心して遊べる場は、世界でもほかにないとも言えよう。

 

PCR検査では、まずは自分の名前がついた試験管を手渡された。ブースに入って間隔をとって配置された席に座わると、長めの柄がついた綿棒が配られる。これを30秒間口に加えて唾液を採取するという。30秒たったところで口から綿棒を出し、それを試験管に入れる。試験管から飛び出した長い柄部分をポキッと折り曲げて切り取り、試験管にふたをして終了。あとは係員にその試験管と折り曲げて切り取った柄の部分を渡すだけだ。

 

ターミナル内のPCR検査会場。席は間隔をあけて配置されていた
PCR検査キット。長めの綿棒を口の中に入れて唾液を採取する

 

試験の結果が出るまで1時間から1時間強。この日は採取の時に不手際があったとのことでもう少し時間がかかったが、それでも当日に検査して乗船できる安心感にはかなわない。

 

検査が待つ間、ターミナルでは待機する乗客に向けての動画も流されていた。画面の中から「お待たせして申し訳ありません」と頭を下げるクルーの方々に、「いえいえ大丈夫ですよ」と返事をしたくなる。動画の中でクルーズディレクターの森真喜夫さんは、普段なかなか入れない操舵室やフロントの裏側などのレポートもしてくれ、これからの乗船に期待が高まる。

 

ぱしふぃっく びいなすが運航を休止していた間にも、YouTubeチャンネル「ふれんどしっぷTV~びいなす便り」は頻繁に更新されていて、船長やクルーからのビデオレターなどさまざまな情報発信をしていた。人と人の物理的な距離が求められる時代だが、「だからこそ心理的な距離は近くありたいと思って、ぱしふぃっく びいなすのことはもちろん、そこで働くクルーにも親しみを持ってもらえるような情報発信を心がけています」と、以前の取材で森さんは語っていた。番組をチェックしてから乗船すると、船旅がさらに充実したものになるだろう。

●心地よい生演奏のピアノ音と
各地の食材を使った春らしい料理の数々

 

いざPCR検査の結果が陰性だと伝えられ、胸をなでおろしながら、いよいよ船内へ。あちこちに消毒液が置かれたターミナルから船の中へ歩を進めると、吹き抜けのエントランスロビーとピアノの生演奏が迎えてくれた。そのキラキラした空間に、ああやっぱりクルーズはいいよなあと、内心独りごちた。クルーズ中は生演奏を聞く機会は多いが、コロナ禍の2年でその機会は減っていたから、なおさら生音の心地よさが耳に響く。

 

まずはダイニングに進み、フルコースのランチをいただく。ぱしふぃっく びいなすではこの春から「びいなすマルシェ」という新企画をスタート。日本各地から取り寄せた食材を使った料理を楽しめる企画で、春クルーズではクルーズ中1回、「スイーツオンウェーブ」というスイーツが楽しめるイベントも実施する。この日提供された料理も、花があしらわれた「春の庭園仕立て」の前菜や、その名も「フラワーシャワー」と名付けられたデザートなど、春らしさらが閉じ込められた愛らしいものが続いた。しかもメニューに書かれた食材を読んでいくと、徳島、富山、愛媛、鹿児島……と、まるで日本全国をめぐっているような気分になる。

メインロビーでは、ピアノの生演奏が行われていた
CRUISE GALLERY
メインロビーでは、ピアノの生演奏が行われていた
前菜「富山産サクラマスのマリネ 春の庭園仕立て」
デザート「フラワーシャワー ジャスミンの香り」

 

●行動履歴の把握など、万全の対策

 

食事を終えて、いざ船内散策へ。ちなみに今回のランチの時もそうだったが、クルーズ中にダイニングやホールに入る際は、乗船証である「びいなすカード」を入口でスキャンする必要がある。万一船内で感染症が発生した場合に備えて行動履歴を把握するためだ。このシステムがあるからこそ、食事やイベントの際、隣に座った人がわかる。陸での飲食店やコンサート、イベントでここまでやっている施設があるかと思うと……やはりクルーズ船は徹底しているなと思わずにはいられなかった。

 

行動履歴の把握もそうだが、そのほかの感染症対策も万全だ。エレベーターは利用できる人数が大きく明示してある。もちろんホールやダイニング、大浴場などは人数の制限も実施。スイート客室専用のダイニングサロン「グラン・シエクル」では、席と席の間に、実に立派なパーテーションが立てられていた。陸上の飲食店でもおなじみとなったパーテーションだが、こんなに立派なものは見たことがない。ダイニング担当の方に聞いたところ、「見た目は少し迫力があるのですが、安全性を最優先しています」とのこと。

距離をとって椅子が配置されたメインホール。入場の際は「びいなすカード」をスキャンする
飛沫対策がなされたスイート客室専用のダイニングサロン「グラン・シエクル」

 

しばらくぶりのうちに、アップデートしていた施設もある。スポーツデッキには、新しくぱしふぃっく びいなすのロゴが描かれていた。天気のいい日など、ここに立ち、上のデッキから写真を撮ってもらうのもよさそうだ。ショップのグッズにはクルーがデザインしたスポーツタオルなど、新商品も並んでいた。

 

新たにロゴが配されたスポーツデッキ。広々として海を近くに感じられる空間だ
CRUISE GALLERY
新たにロゴが配されたスポーツデッキ。広々として海を近くに感じられる空間だ

 

乗客を迎えるクルーたちにも変化が。ぱしふぃっく びいなすのクルーたちは皆、名札のほかに新たに胸に着けるものが増えていた。それは「マスクの下は笑顔です」と書かれたプレートと、そこに貼られたマスクなしの笑顔の写真だ。マスクがなければこんな笑顔をしているのかと、思わず見入ってしまいたくなる。ちょっとしたことだけれど、「ふれんどしっぷ」らしい、ユニークなアイデア。マスクなしで乗船できるその日までは、クルーの胸に付けられたそのプレートをチェックするのが、乗船時の密かな楽しみになりそうだ。

 

新商品が並ぶショップで、「マスクの下は笑顔です」のプレートをつけたスタッフ
胸につけられたプレートには、マスクなしの笑顔の写真が掲げられている
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