2000年代、激動のクルーズ業界勢力図
吸収合併し増大したグループ会社とMSCクルーズの台頭
【シリーズ:クルーズ応援談】第5回

●欧州マーケットにも参戦するRCL

 

RCLは欧州マーケットへの参入も積極的だった。2007年、ドイツのTUIAGと合弁でTUIクルーズをスタート。翌2008年からはフランスマーケット向けのCDFクロワジールフランス(プルマンの子会社)の経営にも参画した(CDFは2017年にクルーズ事業から撤退)。また同社は2007年にアザマラクルーズを設立(2009年に「アザマラ・クラブ・クルーズ」へ改称)、3万総トン型を使ったプレミアムクルーズの分野に進出した。

 

当初、アザマラの投入船は、ルネッサンスクルーズ(1989年設立)が保有していた、「Rシリーズ」と呼ばれた8隻のうちの2隻だった。ノルウェー本拠のルネッサンスは湾岸戦争で経営が悪化、2001年9月11日の米国同時多発テロで命運が尽き、倒産していた。一方、テロとパンデミックに翻弄されたアザマラは2021年、RCLから投資ファンドのシカモアパートナーズに売却された。

 

2018年、RCLはシルバーシー・クルーズの過半数の株式を取得。2020年には残りの株式をヘリテージクルーズホールディングスから買い取り、完全子会社化を図った。念願のラグジュアリークルーズ分野への参入だった。シルバーシーは2022年6月、倒産したゲンティン香港の傘下にあったクリスタルクルーズの新造船クリスタルエンデバーを購入、「シルバー・エンデバー」として運航すると発表した。コロナ禍にあっても、ロイヤル・カリビアン・グループの投資意欲は衰えない。

 

2000年代、激動のクルーズ業界勢力図 吸収合併し増大したグループ会社とMSCクルーズの台頭 【シリーズ:クルーズ応援談】第5回 
シルバーシー・クルーズはクリスタル・クルーズの新造船を購入、探検船「シルバー・エンデバー」とした

日本でクルーズ元年を迎えた頃、世界最大のコンテナ船社、メディテラニアン・シッピング・カンパニー(MSC)がクルーズ部門を分離、設立したのがMSCクルーズ(本社ジュネーブ、拠点はナポリ、ジェノバ、ベニス)。中古船をそろえてスタートした同社だったが、新造船を急ピッチに整備し、瞬く間に乗客キャパシティーで世界第3位のクルーズ会社に成長した。

 

MSCのクルーズ事業は1988年、蒸気タービン客船のモントレーを買船したのが始まり。翌年には「アキレラウロ」のテロ事件(1985年)をきっかけに経営難に陥っていたラウロラインを買収、スターラウロ・クルーズを立ち上げた。1995年に社名をMSCクルーズに改称した。以後、欧州を中心にカジュアルクルーズマーケットを席巻してきた。2021年現在、乗客キャパシティーは世界の客船フリートの約10パーセントを占めている。

 

MSCクルーズが大きく飛躍するきっかけとなったのは、2003年から始まった大規模な投資計画だった。これを主導したのが現在、MSCクルーズ代表取締役会長のピエル・フラチェスコ・ヴァーゴ氏だ。2003年から同社CEOを務め、2013年から現職にある。同社は2003年~2005年に6万5000総トン型の「リリカクラス」4隻(うち2隻は2004年に倒産したギリシャ系のフェスティバルクルーズから買船後、船体延長)を投入。以後、15年間で新造船15隻が就航している。

 

▽2006年~2010年 9万2000総トン型「ムジカクラス」4隻
▽2008年~2013年 13万8000総トン型/13万9000総トン型「ファンタジアクラス」4隻
▽2017年~2021年 17万1000総トン型/18万1000総トン型「メラビリアクラス」4隻
▽2017年~2021年 15万3000総トン/17万1000総トン型「シーサイドクラス」3隻

 

MSCクルーズは船型やコンセプト、デザインになどによってクラスを分類し、新造船計画を着々と整備している。2022年~2023年にはメラビリアクラス、シーサイドクラス各1隻が就航予定。2022年?2027年に20万総トン型(LNG燃料船)「ワールドクラス」4隻を増強。さらに、エクスペディションクルーズの分野を強化するため、2023年~2026年には6万4000総トン型「エクスプローラークラス」4隻を送り込む。

 

MSCクルーズは親会社と同様に非上場の完全なプライベートカンパニー(私企業)であることと、他を飲み込むことで成長しきたわけではないところが、ライバルの戦略と異なる。大資本をバックにひたすら自己増殖を続けている。コロナ禍でいったん中止になったが、2023年はムジカクラスの「MSCマニフィカ」で、2024年には同クラスのMSCポエジアで世界一周クルーズを実施する。いわば自前の船隊で、セグメント化されている既存のマーケットにどう食い込んでいくのか。

 

ビッグ4のシェアは売上ベースで世界の約8割を占める(2012時点)。MSCクルーズを迎え撃つカーニバル、ロイヤルカリビアン、NCLH。クルーズの運航再開とともに、コロナ後の勢力地図をめぐりクルーズ界は再び激動の時代に入る。

 

2000年代、激動のクルーズ業界勢力図 吸収合併し増大したグループ会社とMSCクルーズの台頭 【シリーズ:クルーズ応援談】第5回 
環境への配慮を強く意識したLNG燃料船ワールドクラスの第1船「MSCワールドエウローパ」
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