「おかえりなさい」のその前に
にっぽん丸、おもてなし準備の舞台裏

「おかえりなさい」のその前に にっぽん丸、おもてなし準備の舞台裏
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2024.05.17
「おかえりなさい」――にっぽん丸のリピーターの多くが、乗船時にクルーから
そんな声をかけてもらったことがあるはずだ。にこやかに出迎える彼らだが、
その舞台裏では、おもてなしの準備のために奔走している。
クルーズが終わり、また新しいクルーズが始まる間の準備作業に密着した。
写真=田村浩章 文=吉田絵里

しとしととした霧雨が降る中、にっぽん丸はゆっくりと名古屋港に姿を現した。操舵室横のデッキからは丁寧に着岸を進める船長や航海士の姿が見える。彼らにとってはクルーズのエンディングであるが、一方クルーたちにとっては新たな幕開けでもある。乗客が下りた後、すぐさま次のクルーズに向けてのおもてなしの準備が始まるのだ。

 

まずは下船する乗客が濡れないよう、クルーたちは手作業でギャングウェイに屋根を設置する。下船してくる乗客に傘を傾けながら、笑顔で参加の御礼を言い、タクシーや待機したバスに乗客を送り出す。

CRUISE GALLERY

 

●連携プレーで運び込まれるスーツケース

 

同じタイミングで岸壁には中型のトラックが入ってきた。そのひとつが宅配便のトラックだ。クルーズでは事前に荷物を宅配便に預けておけば客室まで運んでくれるサービスがある。やってきた宅配便のトラックは、これからクルーズに参加する乗客の荷物を満載していた。

 

船内に運び込まれたスーツケースはひとつひとつどの客室かチェックされ、デッキごとにエレベーター前に置かれた。それを今度は各客室前に運搬していく。乗客がたどり着く前に客室にスーツケースが届いているのは、こうしたクルーたちの連携プレーがあってこそ。これも「おもてなし」のひとつだ。

 

 

一方そのころ、船体の側面部分でヘルメットを被ったクルーによって、別の作業が進んでいた。これから始まるクルーズに備えて、給水作業が行われていたのだ。岸壁にある給水口と船体側面の給水口を手作業で繋ぎ、船内に水を送り込んでいく。今回は約300トンを給水するという。この作業があってこそ、クルーズ中に快適な水回りが保証されている。

 

●限られた時間で勝負! 客室清掃
意外と多い忘れ物は……?

 

船内では客室担当係が清掃に励んでいた。スイートルームの清掃を見学したところ、二人一組でテキパキと清掃が進んでいく。一部屋の清掃にかけられる時間は限られているゆえ、集中力が要される。

 

客室ではまずは浴室などの水回りを清掃し、そこから床に掃除機をかけ、ベッドメイキングを行う。その後アメニティ類の補充をする。ちなみにアメニティ類が載せられたカートは、なんと手先の器用なクルーが既製品に手作りの引き出しなどを付け加えた、特別仕様のものだという。

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「清掃作業で注意しているのは、忘れ物がないかしっかりチェックすること。忘れ物で一番多いのは衣類です。衣類は例えばベッドと壁の間に落ちていたりすることもあるので注意深く見るようにしています」。

 

加えて必ずチェックするのが金庫。貴重品を客室の金庫に預けたまま下船してしまう人も意外に多いのだとか。ほかにも多い忘れ物としては、カメラや携帯などの充電機などの備品だ。

 

これらの忘れ物は船のフロントでリストアップして管理している。その後陸上に移動し、1カ月は保管される。もし忘れ物をして、さらにそれに気づくのが遅くなっても、念のため有無を確認するのがよさそうだ。

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