港に華を添えた、女王の名を冠した船
クイーン・エリザベスが魅せる日本発着クルーズ
初寄港の佐世保港で大歓迎を受けて、出港。
日本の海上にいながら、優雅な異国情緒をたっぷりと満喫する極上の船旅へ。
港まわりはお祭り騒ぎに
午後早く、佐世保港から「クイーン・エリザベス」に乗船すると、広々として重厚感があり、優雅なたたたずまいのグランド・ロビーが迎えてくれた。アールデコ様式のライト、曲線になった吹き抜けの階段が美しく、どこかロンドンの高級ホテルに来たような錯覚を覚える。船内に外国人の乗客も行き交うせいだろうか。
今回は、クイーン・エリザベスが佐世保港に初めて寄港した記念すべきクルーズでもあった。ここから静岡県の清水港を経て、東京港へとクルーズする5日間の日程だ。船は佐世保港に一晩停泊し、佐世保市が港沿いで歓迎の「クイーン・エリザベス・フェスティバル」を盛大に開催していたので、下船して歩いて見に行ってみた。よく晴れた日で、埠頭の対岸に停泊するクイーン・エリザベスの船体がよく見え、良いお披露目にもなっているようだ。
フェスティバル会場には、長崎名産の和牛のステーキやクラフトビール、五島のワイン、地元産レモンのレモネード、アジフライの聖地、松浦市のアジフライなどの出店が並び、どれもおいしそう。港沿いのさせぼ五番街大階段前広場では音楽演奏などが行われ、地元の女子高校生による和太鼓の演奏がちょうど始まったので、階段の上に座って鑑賞した。クイーン・エリザベスの乗客らしき外国人の姿も多く、勇壮な演奏を熱心に見ていた。
翌朝、佐世保港を出航後、昼前に、通称「軍艦島」として有名な端島の沖合を航行した。デッキ9の広いプールサイドからデッキ10に上がって島を眺めていると、船内放送で解説が流れた。島はイギリスのヒット映画「007スカイフォール」に登場する場所のモデルになったこと、世界遺産であることなど。船内放送は英語と日本語で聞くことができた。客室に毎日届く船内新聞も日本語で書かれ、日本人乗客への行き届いた配慮に感心した。船は長崎五島の島々を遠くに見ながら南下し、次の清水港を目指した。
上品で落ち着く空間
「非日常に浸れる最高の体験がクイーン・エリザベスの船旅なんです」。船内で、乗船3回目という日本人女性に出会い、その方が楽しそうに語ってくれた。
広い船内は、アールデコを取り入れたライトや装飾で優雅に統一されている。廊下に敷かれたカーペットのデザインなど、細部に至るまで美しく洗練され、とても居心地が良い。イギリスの格式あるキュナードのクルーズ船らしい伝統を継承しつつ、客室やサービスにはモダンさが取り入れられ、快適に調和している。海上ではスターリンク社の衛星回線のWi─Fiが導入されており、インターネットも快適に使える。
イギリス船ならではの魅力を色濃く堪能したのは、豪華なシャンデリアとウッドフロアが格調高いクイーンズ・ルームだ。エリザベス女王の大きな肖像画が入口で迎える。ここでのアフタヌーン・ティーは特別な時間だ。白い手袋のウェイターがティーカップにうやうやしく注ぐ紅茶と共に、キュナード特製のスコーンをいただいた。添えられたクロデットクリームとスコーンがすばらしくおいしいことに感動し、そのレシピがキュナードの公式サイトに惜しみなく掲載されていることにも驚いた。
クイーンズ・ルームではガラ・イブニングに「ビッグバンド・ボール」も行われ、ビッグバンドによる演奏で、きらびやかな社交ダンスのフロアと化した。ダンス用のドレスを纏った日本人も多い。イギリスの著名なジャズ・シンガー兼ピアニスト、作詞家のジョー・スティルゴー氏の出演もあり、彼の軽快でダイナミックな歌声で、ダンスを踊る人々のステップがより軽やかになったように見えるのだった。
船内では毎日、多様なアクティビティーが行われた。水彩画やダンス教室、スパ、デッキでのスポーツ、音楽ライブなど盛りだくさん。元イギリス王室執事のグラント・ハロルド氏によるマナー講座ではエリザベス女王との交流など、大変貴重な話を聞けたのも、このクルーズならではだろうか。
興味深いことに、キュナードでは一人で乗船する人へのさまざまな楽しい提案も行なっている。船内新聞のプログラムで「おひとり様 朝の集い」を見つけて参加してみた。バー、コモドアー・クラブのカウチに用意された紅茶と手作りクッキーをつまみながら、日本人、イギリス人、カナダ人など6名ほどで和やかに気さくな会話を楽しみ、旅の思い出になるひと時となった。