さようならにっぽん丸、はじめまして三井オーシャンサクラ

さようならにっぽん丸、はじめまして三井オーシャンサクラ
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2026.06.29
「にっぽん丸」が約35年にわたる歴史に幕を閉じ、そして2026年9月には「MITSUI OCEAN SAKURA」がデビューする。「にっぽん丸」の歴史を振り返りつつ、新しい船を待ちわびよう。
写真=大久保聡 文=吉田絵里
引退の日、横浜港大さん橋国際客船ターミナルにMITSUI OCEAN FUJI(三井オーシャンフジ)とともに並んだにっぽん丸。実に7000人もの人がターミナルにかけつけた(写真=斉藤美春)
〈MITUI OCEAN CRUISEの担い手たち SPECIAL〉
名船にっぽん丸とともに35年、ゼネラルマネージャー2人の想い

三井オーシャンクルーズを支える多くのクルー。今回はにっぽん丸引退に際し、ゼネラルマネージャーとしてこの船とともに歩んできた二人に話を聞いた。

さようならにっぽん丸、はじめまして三井オーシャンサクラ
(写真右から)川野ゼネラルマネージャー 、福元ゼネラルマネージャー
にっぽん丸は皆さんの記憶の中に生き続けます
〈川野ゼネラルマネージャー〉

──にっぽん丸引退について、率直なお気持ちをお聞かせください。

 

川野 引退はいつかどの船にも訪れることです。大阪商船から続く客船の歴史の中で、さまざまな「名船」と呼ばれる船がありました。今はその1ページを、にっぽん丸とともに紡ぐことができたという感無量な思いです。引退は寂しいですが、この船と過ごせたことをうれしく思っています。

 

福元 ここ数カ月、グランド・フィナーレへ向かう中で、本当にたくさんのお客さまに愛された船だということを改めて感じました。本当に幸せな船だと思います。

 

──この35年、にっぽん丸が日本のクルーズ文化において果たした役割についてはいかがでしょうか。

 

川野 にっぽん丸は1990年就航、レジャークルーズ時代の幕開けとともに生まれました。大型船では入れない港や島々を開拓しながらクルーズする人を増やしていけた。その功績は大きいと感じています。

 

福元 黎明期から時流にのったクルーズを行いながら、日本のクルーズ産業の発展に貢献できたことを、非常に誇りに思っています。

 

──印象に残っているクルーズやエピソードをお聞かせください。

 

川野 1995年のハワイ・カリブ・アラスカクルーズが忘れられません。当時欧米の大型クルーズ船は写真でしか見たことがなかった。それが実際の港でにっぽん丸と肩を並べて停泊している。ちょうどその年、野茂英雄投手がメジャーリーガーと肩を並べた映像と重なって、本当に誇らしかった。

 

また1998年の初の世界一周クルーズでブラジルのサントス港に寄港した際、南米移住90周年の節目に大阪商船の移住船が最初に着いた時と同じ岸壁に、にっぽん丸が着いたんです。100歳になる移民一世の方にも乗船いただき、歴史の連なりを肌で感じた忘れられないクルーズでした。

 

福元 一番印象的なのは2009年の南米・南洋の楽園クルーズです。イースター島でモアイ像を間近に見たり、コスタリカ沖で亀が泳ぐ海を見たり、ハワイ島沖では溶岩が流れ込む海でデッキディナーをしたり、大自然の光景をお客さまと一緒に体験した思い出はかけがえのないものです。

さようならにっぽん丸、はじめまして三井オーシャンサクラ
にっぽん丸の象徴でもある丸窓を心に刻む人も多いだろう
惜別の感と挑戦への意欲、その両方を胸に前へ
〈福元ゼネラルマネージャー〉

──にっぽん丸ならではのテーマクルーズも印象的でしたね。

 

川野 プラチナクルーズをはじめ、ソムリエや一流の歌手、マジシャン、作家の方々をお招きした企画クルーズは、手作り感と重厚さがありました。何も参考にするものがない中で手探りで、お客さまも乗組員も一体となれる催しを考え出していった。それがにっぽん丸ならではの文化を育てたのかもしれません。 「飛んでクルーズ北海道/沖縄」も毎年リピーターのお客さまがいらして、地域との繋がりが年々深まっていきました。地元の方もお客さまを温かく迎えてくださる、それが成功の秘訣だと思います。

 

福元 企画ものは大変なんですよ(笑)。通常運航以上に手間も準備も必要ですから。でも半年前から企画を詰め、乗船直前まで打ち合わせを重ねながらひとつのものを創り上げていく楽しさがありますね。デスティネーションにこだわり、船と陸上の商品企画グループが足並みを揃えながら作るテーマクルーズはお客さまにも人気です。

 

──2026年9月に「MITSUI OCEAN SAKURA(以下、三井オーシャンサクラ)」がデビューし「三井オーシャンフジ」と2隻体制となります。にっぽん丸のおもてなしをどう受け継ぎますか。

 

福元 にっぽん丸のサービスはこの船の造りと空気感があってのものではありますが、これから運航していくクルーズ船でも、お客さまにご満足いただきたい気持ちを常に忘れずにおもてなしを続けていくことに限ると思います。

 

川野 このサイズだからこそお客さまの顔が見える。お客さまのお顔を見ながら何を求めておられるか、楽しんでおられるのかを読み取っていく、そのホスピタリティースピリットを引き継いでいきたいと思っています。2隻体制でバリエーションも増え、お客さまにとっても乗り比べる楽しみが生まれると思います。

 

──最後に、これまでにっぽん丸を愛した方々へのメッセージを。

 

川野 にっぽん丸の姿はもう見られないですが、この船での思い出を皆さん一人ひとりの胸の中にいつまでも残しておいていただきたい。名船はその名前が歴史の中に残り、写真に、書物に、皆さんの記憶の中に生き続けます。35年間、本当にありがとうという思いです。

 

福元 この船にご乗船いただいたお客さま、関わってくださったすべての方々に感謝しかありません。これからは実家を離れて新しい人生を歩むような気持ちもありますが、三井オーシャンフジ、三井オーシャンサクラで新たに挑戦したいという気持ちもある。惜別の感と挑戦への意欲、その両方を胸に前を向いていきたいと思います。

さようならにっぽん丸、はじめまして三井オーシャンサクラ
にっぽん丸がロングクルーズに出るときには、港に多くの見送り客が集まった。写真はモーリシャスプレシャスクルーズ時
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