クルーズポートを歩く

クルーズポートを紹介する新連載、第1回目は日本を代表するクルーズポート横浜。複数の客船ターミナルを擁し、さまざまな客船を受け入れてきた。そんな港町の歩んできた物語をたどってみることにした。
⽂=カナマルトモヨシ
【クルーズポートを歩く】第1回 横浜港
イラスト=岩崎絵美

第1回 横浜港

「象の⿐」から始まったミナトヨコハマ

横浜港の散歩は、「象の鼻」から始めたい。そこは大さん橋のつけ根から延びる、象の鼻そっくりな防波堤だ。

 

1858年、当時の江戸幕府は欧米5カ国との間に修好通商条約を結ぶ。その翌年6月2日(新暦7月1日)、横浜は開港し、イギリス波止場と呼ばれる東波止場と、税関波止場(西波止場)が造られた。この東波止場こそが、象の鼻の原型。横浜港のルーツはここにあったのだ。

 

明治の世になり、横浜港は首都・東京の海の玄関口に。外国船の来航が激増し、象の鼻だけでは対応できなくなっていた。そこで政府は1 8 9 4年に全長約460メートル・鉄製の大さん橋ふ頭を完成させた。さらに1913年には赤レンガ倉庫、4年後には新港ふ頭が完成する。

 

1920年、サンフランシスコ行きの船に接続する列車「ボート・トレイン」が東京駅から横浜港駅間で運行を開始。戦争による一時中断をはさみ1960年まで運行された。現在、桜木町駅から旧横浜港駅へ向かう路線の廃線跡地は遊歩道「汽車道」として整備。旧横浜港駅の跡地もプラットホームと上屋、レールが赤レンガ倉庫敷地に再現されている。

 

1923年9月1日。関東大震災は横浜港も直撃した。このとき人命救助や現状報告に大きく貢献したのは、港に停泊していた国内外の船だった。その後、横浜港は急速に復興。その象徴が、震災のがれきを集めて造成された山下公園である。

 

山下公園から眺められる「氷川丸」は1930年に日本郵船がシアトル航路に投入した客船だ。氷川丸は1 9 6 0年に惜しまれつつ引退。翌年から係留保存され、2008年に「日本郵船氷川丸」としてリニューアルオープンした。

昭和から平成へ時代は移り、横浜は日本有数のクルーズポートに成長する。その契機は1990年、日本郵船が氷川丸の引退以来30年ぶりに世に送った客船「クリスタル・ハーモニー」の横浜出航だった。そして同船は2006年、船籍地を横浜とする「飛鳥Ⅱ」として帰ってきた。

 

2002年、サッカー・ワールドカップ日韓大会の決勝戦が横浜で行われた。世界の耳目が集まる横浜にふさわしい客船ターミナルを!ということで、大さん橋国際客船ターミナルも現在の姿に改修。以来、日本船のみならず、海外のクルーズ客船の寄港も急増した。さらに横浜を発着港とする外国船社も現れた。そしてベイブリッジをくぐれない巨大客船の来航も珍しくなくなっていた。

 

これらに対応するため、2019年に大黒ふ頭、新港ふ頭(横浜ハンマーヘッド)と相次いで客船ターミナルが完成した。また、ベイブリッジ展望施設「スカイウォーク」も9年ぶりに再開。ここでは大黒ふ頭に停泊中およびベイブリッジをくぐる客船の見学ができる。

 

クルーズで横浜を訪れると、発着港ゆえ乗下船がメインとなる。しかしここは、荷物を先に船に送るなどして、街歩きの時間を設けてみたい。大さん橋から象の鼻や山下公園、氷川丸などは徒歩圏内。新港ふ頭や汽車道にも充分足を延ばせる。やや離れるが、スカイウォークも捨てがたい。そして再びここから客船でにぎわう横浜港を、一日も早く、見たい。

【クルーズポートを歩く】第1回 横浜港
【アクセス】

新港ふ頭客船ターミナル
みなとみらい線⾺⾞道駅から徒歩10分∕YOKOHAMA AIR CABIN運河パーク駅から徒歩約8分

 

横浜港⼤さん橋国際客船ターミナル
みなとみらい線⽇本⼤通り駅から徒歩約7分∕⽻⽥空港からバスで約30分

 

⼭下ふ頭
JR根岸線・⽯川町駅およびみなとみらい線元町・中華街駅から約2キロ

 

⼤黒ふ頭客船ターミナル
JR根岸線・⽯川町駅およびみなとみらい線元町・中華街駅から⾞で約15分

 

本牧ふ頭
JR横浜駅から約10キロ、⾞で約30分

【クルーズポートを歩く】第1回 横浜港
期間限定
実物大ガンダム、動く!
GUNDAM FACTORY YOKOHAMA

2020年12月、高さ18メートルの実物大“動くガンダム”が山下ふ頭に出現。その巨大な姿は大さん橋からも眺められるが、間近に見る“動くガンダム”の迫力は圧倒的だ。高所に設置された特別観覧スペースも。“動くガンダム”の構造が学べる展示エリアをはじめカフェやグッズが買えるショップなども併設。2022年3月31日までの期間限定。

【クルーズポートを歩く】第1回 横浜港
日本に3つだけの
産業遺産が目の前に
ハンマーヘッドパーク

新港ふ頭客船ターミナルと商業施設、ホテルからなる複合施設「横浜ハンマーヘッド」。その名は、1914年に建造され2001年まで使用された英国製50トンのジャイアント・カンチレバークレーンに由来する。隣接する港湾緑地に整備されたハンマーヘッドパークは2020年8月28日にオープン。日本に3基しか現存しない産業遺産を、間近で見られる。

【クルーズポートを歩く】第1回 横浜港
ロープウェイで
横浜港を空中散歩
YOKOHAMA AIR CABIN

日本初、世界最新の都市型循環式ロープウェイとして今年4月22日に開業した。JR桜木町駅前〜新港地区・運河パークの汽車道付近の海上630メートルを、定員8人・合計36基のゴンドラが約5分で結ぶ。横浜の街並みを空中散歩できるが、夜間に乗るのもおすすめだ。眼下に広がる、みなとみらいの夜景がすばらしい。料金は片道1,000円。

カナマルトモヨシ
⽇本および世界各地の港町をクルーズ客船やフェリーで訪ね歩く航海作家。本誌では『世界の港町、歴史海道をゆく』を49回にわたり連載。臨時増刊『にっぽん&世界のクルーズポート・ガイド』の制作にも関わる。

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