にっぽん丸、2022年12月にモーリシャスプレシャスクルーズ実施
本格的な海外クルーズの再開と商船三井の取り組み

モーリシャスに対する、商船三井の取り組み

にっぽん丸が行う「モーリシャスプレシャスクルーズ」だが、その目的地がモーリシャスなのに対し、不思議に思った方もいるだろう。
実は2020年7月、親会社の商船三井が手配した貨物船がモーリシャス沖で座礁、燃料油が漏れる事故が起きた。同社は法的責任が直接問われる立場ではなかったが、モーリシャスの環境に影響を与えたことを重く見て、それ以来独自の支援策を実施している。このモーリシャスクルーズもその一環なのだ。クルーズの発表の場で同社の環境・サステナビリティ戦略部担当執行役員補佐の島裕子理事は、「モーリシャスに対して、息の長い支援体制をとっていく」と、改めて決意を表明している。

 

このために商船三井は2つの基金を設立、総額8億円を拠出してモーリシャスへの支援を行っている。支援は「自然環境回復保全プロジェクト」と「地域社会貢献プロジェクト」の2部門に分けて助成を実施している。

 

先の島理事は「モーリシャスというのは、マングローブやサンゴ礁など、非常に豊かな自然を誇る地です。ただそうした自然に対し、専門的な知見を有して保護していく専門家が少ない。まずは日本から大学の教授や専門家を派遣し、現地で調査などのプロジェクトを行っています」と解説する。

 

自然だけではない。モーリシャスは周囲を海に囲まれた島国で、漁業が盛んだ。ただ地元のマーケットに行くと、鮮度が落ちた魚が並んでいたりする。「というのも、捕獲した後に鮮度を落とさないようにする技術や、新鮮なうちに流通させる手段がなかったりするのです。それに対し、知見を持つ先生に現地で関係者に訓練を行う取り組みをしています」と語る。

 

これらの商船三井の支援のひとつに、にっぽん丸の寄港が含まれる。モーリシャスにおいて、観光は主要産業のひとつ。同船が3泊4日で訪れることは、経済的な貢献にもちろん寄与するだろう。さらに実際に商船三井が行っている支援の場を寄港地ツアーで訪れたり、現地の人と交流することで、そこに新たな絆が生まれる。にっぽん丸が、インド洋の島国と日本との縁をつなぐのだ。

 

【取り組み1:自然環境回復保全】

 

サンゴ礁の健康状態を調査
積極的な保全に繋げる

 

サンゴのモニタリングや環境教育の研究開発を手掛ける人材を派遣し、実際に海中でのモニタリングも実施。AIアルゴリズムを用いたサンゴ礁の保護と積極的な保全につなげる。

 

マングローブ林の観察
持続可能な利活用への技術支援

 

モーリシャスの沿岸部には、多様な生物をはぐくむマングローブ林がある。ここに専門家を派遣して観察し、生態系の保全・再生と持続可能な利活用への技術支援ならびに人材育成を行う。

 

野鳥の研究調査
地元住民との共同も
モーリシャスには野鳥が多く生息し、中には「モーリシャスベニノジコ」(写真)など絶滅が危惧される固有種も。野鳥の生態系を調査するために専門家を派遣、地元の人と共同で水鳥の研究調査も行う。
【取り組み2:地域社会への貢献】

子供たちの教育支援

 

教育支援を行う地元NGO団体のプロジェクトに支援を実施。若い世代にコンピューターの使い方を教えたり、プラスチック製品をリサイクルして小物を製作する取り組みを行っている。

 

地元漁師の職業訓練

 

地元の漁業関係者に漁業用具を提供したり、水産資源の利用開発などの指導を行っている。加えて漁業以外でも就業ができるように、園芸・農業・養鶏など、別の職種の職業訓練も実施。

 

ロックダウン中の 食料支援

 

モーリシャスでも新型コロナウイルスによるロックダウンがなされた。その際には、現地の駐在員が中心になって、段ボールに食料を詰め、地域の人々に配布するという活動を行った。

波力発電の実現可能性を調査中
商船三井は2021年10月より、モーリシャスにおける波力発電の実現可能性の調査事業を行っている。これは同社の提案が経済産業省の公的補助事業に採択されたもの。モーリシャスは、2030年までに再生可能エネルギーの割合を35パーセントもしくは40パーセントまで引き上げるロードマップを策定している。このうち波力発電も将来的な電源構成のひとつと位置付けているため、商船三井がこのプロジェクトを提案した。
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