新時代の開幕を告げる、フェリーさんふらわあの
LNG燃料第1船「さんふらわあくれない」乗船レポート
キャビンもカジュアルクルーズフェリーにふさわしい、新タイプの船室がいくつも用意されている。特筆すべきは和室と洋室が内とびらでつながる長距離フェリー初の「コネクティングルーム」。3世代での乗船者には、大変ありがたい存在になるだろう。
このほかにもグループ、夫婦、ひとり旅、ペット連れなどあらゆるスタイルの旅に適応した、多彩なキャビンがそろう。最上階にはバルコニー付きで、和洋室コネクトなど異彩を放つスイートルームが並ぶ。さらに、こうしたキャビン乗船者専用のスイートカフェラウンジまである。
今回はひとり旅なので、スーペリアシングルを選択。窓はないがシャワー・トイレ・洗面所がつき、テレビや冷蔵庫も備える。内装にも上質な和の意匠が採用され、夢のナイトクルーズを演出できる。
18時45分、「さんふらわあ くれない」は別府を出港した。ここで気が付いた。ファンネルから黒煙が出ていないのだ。そして、フェリー独特の小刻みな振動を全く感じないまま、いつのまにか船は離岸していたのである。煙が見えない、そして揺れない出港。これまでに経験のない、LNG燃料フェリーならではの船出だった。
「さんふらわあ くれない」は、この1月27日にリニューアルオープンした別府タワーのライトアップに見送られ、瀬戸内へと乗り出していった。出港後、広々とした展望大浴場で入浴を楽しんでから、ビュッフェスタイルのレストランへ。「りゅうきゅう」や「とり天」など大分の郷土料理や、新鮮な魚介類の刺身、香川のうどんなどいずれも美味。瀬戸内の美食に舌鼓を打つディナータイムだ。
食後は、アトリウムでプロジェクションマッピングのショーを鑑賞。ドローンを使った新造船紹介など、見ごたえたっぷりの10分間だ。大人も子どもも大喜びで、ショーの終了後に期せずして乗客から拍手が起こっていた。
別府をはじめ大分の名産品が並ぶショップも、じっくり見たい。商品は社員がこだわってセレクトしたもので、船内ショッピングも乗船の目的のひとつになりそうだ。「さんふらわあ」オリジナルグッズも豊富で、目移りしてしまう。思わず、いろいろと買い求めてしまった。
その後は船内ネットサービスSSQ(さんふらわあ・スマート・クエスト)で夜を過ごす。SSQでは約100タイトルの映画の無料視聴が可能。さらに、レストランや大浴場の混雑状況もひとめでわかる。また、船内の和風デザインアートにはQRコードがついており、その由来などをSSQで調べられるのが面白い。
そのなかでも興味を引いたコンテンツが「さんふらわあの歴史」。大阪~別府航路が開設された1912年、最初に投入された船は「紅丸」。2代目紅丸(1924年就航)は当時の最新技術だったディーゼルエンジンを搭載し、ディーゼル船のさきがけとなった。1960年就航の「くれない丸」は豪華な内装を備え、クルーズフェリーの先駆船となった。
そして2023年、初のLNG燃料船「さんふらわあ くれない」が登場。船内の通路にデザインされているレトロポスターや当時のパンフレット、地図とあわせ百年余のタイムスリップ航海を行っているようだ。思えば「くれない」という船は、いつでも別府航路のみならず日本の客船史で先進的な存在だった。その姉妹船「紫丸」および「むらさき丸」もそうだ。
4月14日には「さんふらわあ むらさき」のデビューが予定されている。時代を彩ってきた「くれない」「むらさき」の両船が今年、「さんふらわあ」の名を冠して瀬戸内海に戻ってくる。古き良き日本の客船テイストと、新しいテクノロジーが融合する「さんふらわあ」の新造船。それはフェリー新時代の開幕を告げる船だ。
SHIP DATA
船社名:フェリーさんふらわあ
運航船:
さんふらわあ くれない(1万7114トン)
さんふらわあ むらさき(1万7114トン)
(大阪~別府)
さんふらわあ ごーるど(1万1178トン)
さんふらわあ ぱーる(1万1177トン)
(神戸~大分)
さんふらわあ さつま(1万3659トン)
さんふらわあ きりしま(1万3659トン)
(大阪~志布志)
問い合わせ先:
https://www.ferry-sunflower.co.jp/
予約センター TEL0120-56-3268
<取材メモ>
日程:2023年2月1日~2日
船名:さんふらわあ くれない(フェリーさんふらわあ)
総トン数:1万7114トン
航路:別府~大阪
CRUISE2023年春号に掲載