日本初のミュージッククルーズ乗船レポート【前編】
衝撃の連続だった……!
Mighty Crown主催レゲエクルーズ

ただし23時を過ぎても観客は集まり続け、ついには満席となり入場制限がかかる自体となった。良い子は寝ている時間なのに……! MSCベリッシマ史上、日付が変わってもロンドン・シアターに人があふれること自体、これまでも、そしてこれからもないのでは……と思うほど稀有な光景に、なんだか武者震いした。

 

日付が変わって始まったSOUND CLASHは、ぎっしりと詰まった観客の熱意と相まって、燃えるような夜となった。そもそもSOUND CLASHとは、いわば「音のぶつかり合い」、Mighty Crownを中心とした「チーム・ジャパン」と、TONY MATTERHORNらの「チーム・ワールド」が音で対決するステージだ。SOUND CLASHとは、いかに場に即した、希少な音源を持っているかを乗客の声援の多さで競うジャマイカ発祥の独特の音遊びだが、そのディープな戦いが日本の洋上に深夜で開かれていることに興奮を覚えた。

 

ロンドン・シアターでのSOUND CLASHの様子。乗客の声で勝敗が決まるだけに、会場は一体感に包まれた
乗客がスマホのライトを照らし、SOUND CLASHを盛り立てる

主催のMighty Crownがもちろん優勢かと思いきや、ジャマイカ人を中心としたチーム・ワールドがJ-REXXXやZENDAMANといった日本人アーティストによる日本語の音源をこっそり仕込んでいてチーム・ジャパンを挑発し、観客のムードをガラリと変える。

 

チーム・ワールドに大歓声を送る乗客を前に「裏切ったJ-REXXXとZENDAMANは、明日の済州島で下船な!」とSAMI-Tが叫んで、大爆笑を誘う。閉ざされた船ならではの、こってりと濃密な時間。真剣勝負でありながら、ヒップホップのバトルのようなヒリヒリした緊張感はなく、むしろ体育祭のような一体感があった。個人的にはSOUND CLASHってこんなに面白いんだ! と開眼した夜だった。

大歓声が上がったSOUND CLASH。ちなみに一番盛り上がったのは深夜2時過ぎ(●)
CRUISE GALLERY
大歓声が上がったSOUND CLASH。ちなみに一番盛り上がったのは深夜2時過ぎ(●)

●ファミリーと化していくMSCベリッシマ

 

3日目は済州島寄港。13時入港というゆったり目のスケジュールが、夜遊び中心のこのクルーズには最適だ。

 

朝(といってももう昼に近い時間だったが)、エレベーターに乗る時に、何の気なしに「おはようございます」と中に向かって声をかけてみた。すると乗っていた満員に近いエレベーターの全員から、「おはようございま~す」と、ちょっぴりけだるい返事がかえってきた。そのナチュラルかつリラックスした返事は、まるで同じマンションに住んでいる住人同士のようで、ちょっぴり可笑しかった。

 

さらには別のエレベーターで明らかに飲みすぎたという雰囲気の若い男性乗客に、「いつ済州島に着いたんすかね……」と低めのテンションで聞かれた。少し前にドラマチックな入港シーンがあったが、彼はずっすり寝入っていたようだ。思わず母のような気分になり、「頭痛くない?」なんて聞いてしまう。

 

彼とは同じタイミングでデッキに出て、「でもやっぱり船の上って気持ちいいっすね」なんて言い合った。同じ船、同じレゲエクルーズに乗った人は皆ファミリー!……乗船3日目ともなると、船内にはさらにそんな空気が漂い始めた。

 

通常のクルーズならデッキに人が集まる入港シーンだが、乗客皆が朝まで遊んでいたせいか、デッキはゆったりとしていた

●白がドレスコードの夜、急きょのスケジュール変更

 

横浜出航時に少し風が強かった以外は、ここまで完璧なスケジュールで進んできたクルーズだったが、3日目の済州島では様相が違った。強風&雨により、夜のプールデッキでのライブステージが中止になり、代わりにロンドンシアターでの2部制のショーに変更になったのだ。

 

ちなみにこの予定変更に関しては、Mighty CrownのMasta Simon自らが船内放送で乗客にアナウンスした。いつもと同じ艶のある声ながら、いつもより少し緊張したようなアナウンスが、彼がこの船の船長役であることを知らしめるようだった。プールでのライブがなくなったのは残念だけど、「Masta Simonが言うなら仕方ないよね」という雰囲気が、船全体に漂っていた。

 

さらにはロンドン・シアターの客席は限りがあり、2部のショーはアプリ「MSC for Me」もしくは船内に設えられたタッチパネルからの事前予約制となった。こうした変更に即時にデジタル対応ができるのが、DX化が進む最新客船ならではだ。ショーの予約は即時に満席になったが、シアターの外にはステージを中継するモニターも設置され、予約できなかった乗客への配慮もなされていた。

 

この日は「ALL WHITE」、すなわち白がドレスコードの日。1部のロンドン・シアターは白い服に身を包んだ観客たちが集い、そしてステージのアーティストたちも白い衣装で統一し、さわやかな一体感がシアターを包む。

 

この日一番心を打たれたのは、フレディー・マクレガーのステージだ。美声で数々のヒット曲を飛ばしたジャマイカ人の大御所アーティストだが、昨年大病をしたとのことで、一時はこのレゲエクルーズへの参加も危ぶまれていたという。

 

後編に続く

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