にっぽん丸でかなう
寄港地ツアー付き、ぶらり気まま旅

■ハプニングから下田へ

 

毎日快晴に恵まれたクルーズだったが、3日目の朝、下田港近くで、船長から船内アナウンスがあった。海のうねりにより、港に渡る通船の航行が不可能で、代わりに伊豆半島北西部の清水港に向かうという。こういうできごとも、旅の要素の一つだ。にっぽん丸には旅慣れた乗客が多いのか、そんなこともある、と皆さん冷静な感じだ。やがて新たなスケジュールが書かれた船内新聞の号外が客室に届き、迅速さに感心した。下田の寄港地ツアーは変更せず、清水港からバスで行くという。

 

ようこそと歓迎するような富士山の姿を見ながら、船は清水港に到着し、午後からツアーに出発した。「ここから伊豆半島の内陸を縦断して、下田まで行きます」とバスガイドさんが説明。オレンジ色のみかんの木々や茶畑などが車窓から見え、バスに同乗するにっぽん丸のスタッフが静岡産の温かい緑茶をふるまってくれた。

清水港入港時にもまた富士山の姿

しばらくして富士宮トンネルを抜けると、ドーンと大きな富士山が再び現れ、ガイドさんが山のなりたちを解説してくれた。この旅はまるで富士山が旅のお供のようだ。毎日これほど行く先々で見えるのは初めて。まさに旅のハプニングの楽しい副産物だ。

 

バスは、三島、沼津、伊豆長岡温泉や修善寺温泉、天城峠などを通過した。場所ごとの解説をしてくれるガイドさんのおかげで、約3時間の旅も楽しく、伊豆半島について少し詳しくなった気がするほど。ちらほら咲くピンク色の河津桜を見ながらとうとう下田に到着した。

 

目的地の一つは爪木崎自然公園だ。水仙祭りの時期で、海岸に面した丘一面に水仙の白い花が咲いていた。近くを歩くだけで、花の強い香りに酔いそうなほど。海岸近くでは、私たちの到着を待っていた下田観光協会の方々が、魚の美味しい日干し焼きと、マグロの熱い漁師汁をふるまってくれて身体が温まった。

水仙の香りに包まれる爪木崎
爪木崎の海岸近くでは、下田市観光協会の方々が焼きたての美味しい魚や身体が温まる漁師汁をふるまってくれた

下田は、江戸時代、日本で最初に開港した歴史深い町だ。当時の資料が集まる下田開国博物館が次の目的地。ペリーにまつわる資料や、最初のアメリカ総領事ハリスが使用した食器など、興味深いものがたくさんあった。帰り際、館長の尾形さんが「次回は春に寄港したらいいですよ、波が穏やかなので。ペリーが下田に来港したのも春でした」と語ってくれた。

開国博物館には資料が約2,000点 
CRUISE GALLERY
開国博物館には資料が約2,000点 
ハリスが牛乳を飲む時に使用した
下田市の伝統的な「なまこ壁」
下田港で見た黒船のミニチュア船

■安定のホスピタリティー

 

夜、にっぽん丸に遅めに戻ったが、レストランの対応は万全だった。最後のディナーは「瑞穂」でにっぽん丸和膳。空腹だったこともあり、手間がかけられ、目にも美しい和食料理の一つ一つをなおさら美味しく味わった。にっぽん丸では食事時に、ひとひねりある料理を見つけるのが楽しみなのだが、ラストのデザート、モンブラン大福も美味しい発見の一つだった。

 

にっぽん丸和善のメニューの一部

 

その後は6階のラウンジ「海」へ、レコードプレイヤーを使った音楽イベント「レコードアワー」に参加。ジャズ、クラシック、歌謡曲と約700枚のレコードがあるという。まろやかで深みのあるレコードサウンドでマイルス・デイビスの曲を聴けるとは、なんとも贅沢アワーである。

 

最終日の早朝、船はすでに駿河湾にいた。中部国際空港セントレアから離陸した飛行機がグーンと大きく近づいてきて、にっぽん丸のデッキの上空で旋回し、空に消えていった。まもなく旅の終点、名古屋港に到着だ。そして今朝もまた富士山が見えた。

 

今回のクルーズでは思いがけない寄港地の変更があったが、楽しさ、充実度は変わらぬままだった。それを臨機応変かつ安定したホスピタリティーで支えてくれたにっぽん丸クルーのパワーを、十分に実感できた旅でもあった。

CRUISE GALLERY
ペンアイコン取材メモ

にっぽん丸 自由自在~千葉・下田

日程:2024年1月16日(火)~19日(金)

コース:名古屋~木更津~下田(※清水に変更) ~名古屋

クルーズ代金:16万9000円(スタンダードステート)~75万8000円(グランドスイート)

船名:にっぽん丸(商船三井クルーズ)

総トン数:2万2472トン

乗客定員:449人(最大)/乗組員数:230人

CRUISE2024年春号に掲載
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