ピースボート世界一周クルーズレポート
バージョン・アップしたパシフィック・ワールドで
欧州の歴史と北欧の絶景に息をのむ

ピースボート世界一周クルーズレポート バージョン・アップしたパシフィック・ワールドで 欧州の歴史と北欧の絶景に息をのむ
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2024.10.28
初めて訪れた北欧は、ハンザ同盟の繁栄とともに殷賑を極めたノルウェーの港町ベルゲン。世界遺産に登録されるブリッゲンの街並みをしばし歩き回った
見事な景観の北欧のフィヨルド
休ませてくれない絶景続き

■シャッターチャンスが次々 フィヨルドが織りなす絶景

 

ここまでは、一度は訪問したことのある寄港地をめぐってきた。これからは、違う。タイスケさんも筆者も未知の世界・北欧クルーズに突入する。

 

北欧へ足を踏み入れたことを感じたのは、毎朝アトリウムラウンジで披露される「ライブミュージック」のピアノ演奏だった。英国を離れた翌日、演奏曲のラインナップが変わった。ダンシング・クイーン、チキチータ、ギミー・ギミー・ギミー。スウェーデンのポップ・グループABBA(アバ)のヒット曲が、さりげなく、数多く盛り込まれていたのだ。

 

そしてこの日、「バイキング〜事実か虚構か〜」という洋上講座が行われた。壇上にはピースボートスタッフで、デンマーク生まれのルイース・ソレンセンさんが立っている。

 

まず彼女は中世のバイキングの大移動について述べた。講演を撮影するタイスケさんが、「バイキング

ってパリまでやってきたんですね。知らなかった」と驚いた。パリ占領は失敗したが、北仏にノルマンディー公国を建てた。そして1066年のノルマンディー公ウィリアムによるイングランド征服につながる。ノルマンディー地方、ロンドンと寄港し、これから北欧に向かう我々にとって、このクルーズはまさにバイキングの足跡をたどる船旅ではないか。

 

バイキングたちは皆、角のついた兜をかぶっている。ところが、これは欧米におけるステレオタイプなイメージである、とルイースさんはおっしゃる。そんな我々の「常識」をひっくり返すお話の後、彼女は最後に言った。

 

「私、日本に来てからビックリしました。バイキングの料理がどこにでもあるなんて!」。それは食べ放題のことであった。単に物見遊山だけでなく、こうした知識を得られるのも、ピースボートクルーズの特長であろう。

 

6月5日。ベルゲン(ノルウェー)で北欧に第一歩をしるす。初めての北欧はすべてが新鮮。特に現地語の文字にそれを感じる。Aの上に○とかOに/とは、どう発音するのか?そう思いながらフロイエン山にケーブルカーで登りベルゲンの街を一望。タラやサーモンが並ぶ魚市場を冷やかし、ハンザ同盟時代の栄華を今に伝える世界遺産ブリッゲンの街を散策した。

 

6月6日。朝目覚めると、そこはソグネフィヨルドだった。飛び起きて、デッキへ。中華系の乗客たち(台湾・香港・シンガポール・マレーシアなどから参加)が、何やら語らいつつ、見事な景観を眺めている。それもあって、目の前に広がるフィヨルドが、なんだか長江三峡下りの風景のように見えてきた。

 

ノールフィヨルドに入ると、朝から断続的に降り続いていた雨が止んだ。陽射しがフィヨルドを照らし、いくつもの虹が峡谷に架かる。ここで、早朝から撮影で船内を駆け巡るタイスケさんと出会う。

 

「いやあ、フィヨルドはなかなか休ませてくれませんね!」。そう言いつつも、興奮をおさえ切れない様子でシャッターを切り続けるタイスケさんであった。

ピースボート史上初めて分け入ったノールフィヨルド。次々に現れる絶景に乗客は興奮しっぱなしだった。途中、虹が出るシーンも
ピースボート史上初めて分け入ったノールフィヨルド。次々に現れる絶景に乗客は興奮しっぱなしだった。途中、虹が出るシーンも
1276年創業の魚市場で、新鮮な魚介類を求めてさまよう
1276年創業の魚市場で、新鮮な魚介類を求めてさまよう
サーモンや生ハムなどをはさんだサンドウイッチも乙なもの
サーモンや生ハムなどをはさんだサンドウイッチも乙なもの

■女性たちだけで構成されるウクライナのアンバサダー

 

いよいよアイスランド入港を明日に控えた6月8日。タイスケさんはピースボートからの依頼で、ウクライナ・ユース・アンバサダーズの撮影を行った。

 

この地球一周クルーズには、ロシア軍の侵攻を逃れ日本に暮らすウクライナ出身の若者が7名乗船。乗客に向けてウクライナの現状を伝え、将来の平和や復興のためにできることを訴えている。その若者たちをアンバサダーズと呼んだ。タイスケさんは言った。

 

「アンバサダーズはみんな女性なんですね」。

 

ロシア軍の侵攻後、ウクライナでは18〜60歳の男性の出国が原則禁止となった。総動員令のため軍から動員される可能性があるからだ。タイスケさんは、つぶやいた。

 

「なんだか、切ないですね……」。

 

6月9日。アイスランドの首都であり世界最北端の首都レイキャビクに入港した。港の対岸に浮かぶ島にイマジン・ピース・タワーが立つ。これはジョン・レノンの妻オノ・ヨーコが構想し、2007年に建設されたモニュメントだ。

 

レイキャビクは最果ての持つ寂寞としたイメージとはまったく正反対の、カラフルな街並みだった。タイスケさんも「透明感のある町ですねえ。フォトジェニックだ」と感心しつつ撮影する。

 

レイキャビクで最も高い建物、ハットルグリムス教会にやってきた。教会の前には、西暦1000年にヨーロッパから初めて北米大陸に到達したバイキング、レイフ・エリクソンの像が建つ。

 

「次の寄港地はアメリカ(ニューヨーク)だったなあ」。

 

そのアメリカにはレイフ・エリクソンデーという記念日がある。それは10月9日である。この日、もうひとつ思い出すことがある。それは、ジョン・レノンのバースデーでもあることを。すると、ジョン・レノンの「イマジン」が聞こえてくる。教会の横の芝生でパシフィック・ワールド乗客の男性がギターを鳴らしながらイマジンを歌っていたのだ。

 

ピースボートの夏出航クルーズは10月上旬にレイキャビクに入港する。そのころはオーロラの季節。そしてイマジン・ピース・タワーは10月9日、つまりジョンの誕生日から一筋の光が立ち上る。今度はその光景を見てみたいものだ。

 

最後に訪れたのはホフディ・ハウス。1986年、ここで東西冷戦終結のきっかけとなった米ソ首脳会談が行われた。3年後、ベルリンの壁が崩壊し、冷戦は終わる。

 

その壁の一部がハウス前の緑地に立つ。そこにはカラフルなモアイ像が描かれていた。

世界一周クルーズに招待され、戦争の実情を伝える「ウクライナ・ユース・アンバサダーズ」の女性たち
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北海域クルーズ中にはマスカレードパーティー。仮面をつけてダンスパーティーやファッションショーを満喫
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レイキャビクのヴィズエイ島。左の白い建造物がイマジン・ピース・タワー
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ハットルグリムス教会は高さ74.5メートル。アイスランドでも2番目に高い建造物だ
ハットルグリムス教会は高さ74.5メートル。アイスランドでも2番目に高い建造物だ
取材メモ

日程:2024年4月13日〜7月26日(金)
コース:横浜〜神戸〜深●セン 土へんに川●〜シンガポール〜ポートクラン(クアラルンプール)〜ポートビクトリア〜ポートエリザベス〜ケープタウン〜ウォルビスベイ〜ラスパルマス(カナリア諸島)〜リスボン〜ル・アーブル〜ティルベリー(ロンドン)〜ベルゲン〜ソグネフィヨルド/ノールフィヨルド遊覧〜レイキャビク〜北極圏通過〜ニューヨーク〜カルタヘナ〜クリストバル〜パナマ運河通航〜プンタレナス〜マンサニージョ〜バンクーバー〜ケチカン〜アラスカフィヨルド遊覧〜スワード〜横浜〜神戸(取材はリスボン〜レイキャビク)
船名:パシフィック・ワールド(ピースボート)
総トン数:7万7441トン
乗客定員2,419人/乗組員数924人

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