心を満たす芸術の秋、食の秋
博多発着ウィーンスタイルクルーズ
素晴らしい夕日のあとには
本場ウィーンの伝統料理の数々を
3連休を使った2泊3日のクルーズは決して長くはないが、変化に富んだ魅力がギュッと濃縮されていて、なおかつ「中1日」をゆったり過ごせる余裕がうれしい。もしかするとこれは多忙な日常からのエスケープとして最上ではないか。出港時の曇天はどこへやら、海も空も真っ青で、素晴らしい夕日も拝めた2日目の晩、そんなことをふと考えた。
待望のディナーはオーストリアの伝統料理。レストラン「銀座ハプスブルク・ファイルヒェン」の神田真吾シェフがゲストシェフとして腕を振るった。「初代飛鳥以来の久しぶりの乗船で、とてもワクワクしています」とご本人。神田シェフはオーストリア国家公認キュッヘン(料理)マイスターで、つまりはオーストリアの食文化の継承者として認められた方。
コースは前菜の低温マリネしたサーモン“ツァーレンラクス”に始まり、チロル州の伝統料理、隣国ハンガリーから伝わったウィーナーグーラッシュズッペ(ズッペ=スープ)、オーストリア伝統料理で佐助豚肩ロースをじっくり焼き上げた“シュヴァインツプラーテン”など。取材時の季節である秋のデザートまでを存分に味わった。
「ウィーンを中心にハプスブルク家が栄えたことで、周辺からさまざまな人や文化が集まりました。料理のルーツも旧ボヘミアやトルコ、スペインなどと多岐にわたります」と神田シェフ。そして「ウィーン料理って何だろう、とは僕も思います」とも。オーストリア料理とウィーン料理も決してイコールではなく、誇り高い市民は多くの料理に「ウィーン風」と名付けてきた。「外から入った数多の料理を自分たちの文化にまで高め、極めて能動的にウィーン料理を創り出しているのだと思います」。
そもそも神田シェフはなぜオーストリア料理の世界に?と尋ねると、お父様がアルペンスキーをしていた関係で、チロル州のホテルのオーナーシェフとご縁があったとか。「当初3カ月のつもりで修業に行ったのですが、皆さんすごく心やさしい人たちで、例えばホームシックになった時にも温かいスープを出してくれたり……」。そんなやさしさに触れた上に、父の教えでもある「人と違うことをやれ」を思い出し、歴史あるオーストリア料理を日本でやると決めたそう。
シェフいわく、「飛鳥IIはホスピタリティのあるやさしい船ですよね。その雰囲気に、今回のメニューは合っていると思います」。今回は敢えて華やかさは控えめにして、伝統料理に徹したそうだ。一見素朴なところもあるけれど、味わうほどに多様さと文化的な深みを楽しめる。そんなメニューをオーストリア産ワインとともに味わった。
それにしても、音楽と食に秀でた歴史ある古都ウィーンは、まさに優雅な船旅の題材としてふさわしい。「飛鳥II」の定番テーマクルーズになっているのも乗って納得。中1日の終日航海がある3日間だからこその、船内をウィーンづくしで染め上げた個性的なクルーズだった。
博多発着 秋の連休 ウィーンスタイルクルーズ
日程:2024年11月2日(土)〜4日(月・祝)
コース:博多~(クルージング)~博多
クルーズ代金:138,000円(Kステート)~670,500円(Sロイヤルスイート)
船名:飛鳥II(郵船クルーズ)
総トン数:5万444トン
乗客定員:872人
乗組員数:約490人