ついに「飛鳥Ⅲ」に乗船!
晴れやかな命名式から、大海原へ
その日、大さん橋には2隻の赤い二引ファンネルが並んだ。この日に「飛鳥Ⅲ」と名を受ける新造客船と、僚船「飛鳥Ⅱ」だ。横浜マリンタワーから眺めた赤の色はどこか誇らしげで、眺めているだけでこれから新しい航海が始まることにワクワクした。
運航する郵船クルーズにとって、実に34年ぶりとなる新造客船、飛鳥Ⅲ。初めてドイツのマイヤー ベルフトで造られた、新時代の客船だ。
一方で命名式は伝統的な格式高いものだった。船内のリュミエール シアターで命名者である日本郵船の曽我貴也社長令夫人・曽我多美子氏が「本船を飛鳥Ⅲと命名します」と述べた瞬間、船外でシャンパンスプラッシュの儀式が行われた。シアターのスクリーン越しに真っ白い船体に、ボトルが勢いよく叩きつけられる様子を見て、ひとつの時代の幕開けだと心が躍った。




■デジタル時代の船内体験
そしていよいよ、横浜港から航海を開始した飛鳥Ⅲに乗り込んだ。まずすべきことは、客室のデスクにあるタブレットを手にすること。
飛鳥Ⅲは時代に即すべく、デジタル化を推進している。すべての客室にはタブレットが備えられ、ひとたびタブレットにログインすると、船内新聞のほか、各種の予約が可能になる。
まずはタブレットを開き、今日のスケジュールや予約すべきアクティビティをチェック。その後の船内生活にタブレットを持ち運ぶのもいいし、船内各所に設けられたデジタルサイネージを活用するのもいい。


出航パーティーはプールデッキで。デッキに横たわりながらバンドの演奏に耳を傾ける時間は、まさに洋上リゾートだ。
クルーズに参加するとつい「あれもしたい」「これもしなきゃ」と欲張りになってしまうが、いやいやゆったりとした心で過ごすことこそ本来のクルーズではないか……との思いが沸き上がる。
とはいえ、この新たな客船を隅々まで見たいという思いには抗えない。
船内に足を踏み入れると、その凛とした空気に、背筋を正す思いがする。


■きらめくアトリウムと上質な空間
船内に入ってまず多くの人が目をとめるのが、3層吹き抜けのアトリウムと、その中央に燦然と輝く金色の漆芸作品だろう。人間国宝の室瀬和美氏による高さ約9メートル×幅3メートルという巨大な漆芸作品だ。前面上部はゴールドに彩られていて、上品な華やかさが漂う。


この作品に象徴されるように、船内は華やかでありながら非常に上品で落ち着く空間になっている。ゆったりと腰を掛けられる空間も多く、ドレスコードである「エレガントカジュアル」と相まって、船内はリラックスできる空気感に満ちている。さらにそこには数々のアート作品が飾られているから、ただじっくり眺める時間もいい。そんなときふと、34年ぶりの新造客船、しかもラグジュアリーな空間……と聞いて、肩に力が入っていた自分に気づく。




■721 ブックス&カフェで過ごす贅沢なひととき
ざっくりと船内を歩いて、個人的にもっとも気に入ったのが721 ブックス&カフェ。アトリウムが見下ろせる7デッキに位置し、人の気配を感じつつも、ゆったりと静かに過ごせる空間だ。
専門家がチョイスしたという蔵書も秀逸。棚ごとにテーマが設けられ、魅力的な本の数々が並ぶ。中には購入するにはちょっぴり勇気が必要な大判本やシリーズ本などもあり、この機会に手に持って開いてみる。「クルーズで本を読む」――多くの人が夢見ながらも、なかなか船内スケジュールに追われて実現できないことが、この飛鳥Ⅲなら実現できそうなのがうれしい。


■ウェルネスを体現するアクティビティ
船内生活を過ごす中で、飛鳥Ⅲが「ウェルネス」に力を入れているのも顕著に伝わってきた。
スタジオではストレッチなどのクラスのほか、「エアリアルヨガ」も開催されている。天井から専用のロープ状の布を垂らし、それを活用したヨガは近年大注目のエクササイズだ。
ただし専用の器具が必要なため、陸上でもなかなか体験する機会がないエクササイズでもある。それが飛鳥Ⅲ船上で初めて体験できるなんて……! 体を布に預けてするストレッチはこれまで味わったことのない感覚で、絶妙な心地よさがあった。終わった後の体のほぐれ感も最高で、思わず先生に「次のクラスはいつですか?」と聞いてしまった。