脳を活性化させる、飛鳥Ⅱの春クルーズ
夫婦で乗って、週末リフレッシュ
■現役医師、愛犬に後ろ髪を引かれながら、思い切って乗船
「ゥワーン、ゥワーン」といつもはおとなしいたびくん(私の愛犬)が悲鳴のような泣き方をした。
今日からお泊まりのペットホテルの受付だった。
私のような現役の医者で犬を飼っている場合、クルーズに行くには2つの壁がある。
ひとつは、代診がいないと1週間とか2週間のクルーズには行けない。私の場合は、年に1、2度は思い切って2週間休診にして出かけることにしている。しかし、普通、開業医はそんな思い切ったことができないので、長い期間のクルーズは難しくなる。
今回の飛鳥Ⅱのクルーズは、2泊3日で金曜から日曜までだ。金曜と第三土曜日は、私のクリニックが休診だし、家内も仕事の合間を縫って一緒に春のクルーズとなった。
もうひとつの壁は愛犬をどこに預けるかである。最近、お世話になり始めたペットホテルに連れてきて、冒頭のワンワン状態である。
後ろを振り向かず、さっとたびくんを預けて、横浜港に向かった。
■飛鳥Ⅱの船内の安心感と安定感
あれは25年前。初代・飛鳥とクイーン・エリザベス2(QE2)、そして私が乗船する英国客船が3隻、横浜港から同じ日に出航したのだ。以来、外国船に乗ることは多かった。
飛鳥Ⅱに乗船するのは初めてだった。というか、20年以上前にアラスカ・クルーズで前身の「クリスタル・ハーモニー」に乗っているので、正確には2回目だ。
ドックから戻ったばかりで、白い船体がまぶしい。PCR検査など、まあ多少の壁もあったが、なんとか無事に乗船。
クルーズは船に乗った瞬間が、最も重要だと思っている。飛鳥Ⅱの船内の安心感と安定感はなんだろうか。長年積み上げてきた、おもてなしの力なのだろうか。
クルーズは「移動時間で地球の大きさを知る方法」と以前から言ってきたが、今回はそこまでの距離は移動しないので、船内でのんびりということになる。
客室に運び込まれたスーツケースの中身をチェストに入れ、デッキに出ると、シャボン玉が宙を舞っている。家内はうれしそうにシャボン玉を追っていた。
ドラが鳴って、出航となる。
■船に乗れば非日常の世界へ。夫婦でゆったりと
船に乗ってしまえば、非日常の世界に切り替わってしまうところがいい。
トーマス・マンのトニオ・クエゲルの冒頭「層雲に蔽(おお)われたまま、白々と力なく、狭い町の上にかかっていた」、そんな感じの曇天の中を、飛鳥ⅡはEV車のように静かに動き始めた。
ぼーっとしているうちにディナーとなった。外国船と日本船の最大の違いは、ディナーのクオリティーなのかなと思いながら、舌鼓を打つ前に完食してしまった。食べるのは早い方だが、普段の夕食に比べれば、いつもより夫婦でゆっくりできる。クルーズではそんな時間が大切なのだろうと思う。
プロダクションショーを見ている間に、アロマトリートメントの時間となった。
周囲からいろいろ気遣ってもらい、午後9時からの予約となっていた。アロマトリートメントは初めてのクルーズの時に経験して、以降いろいろ受けてきた。
飛鳥Ⅱ「アヴェダ サロン&スパ」のトリートメントも楽しみにしていた。フットバスをしながら、カウンセリングを受け、いざボディ・トリートメント。小さなシンバルのようなティンシャが「チーン」となった。トリートメントが始まって、心地よさと適度な船の揺れで、気分は浮遊感に包まれ、「チーン」とまた音がしたとき現実に戻ってきた。
そのまま客室に戻って1日目は眠りに落ちた。
私がトリートメントを受けている間、家内は「今はバーもノンアルコールのカクテルが多くてうれしい」とマリナーズクラブでサクラ・モヒートを飲みながら、ピアノ演奏を聴いていたらしい。