船名は「ディズニー・イマジネーション」!
家族それぞれの楽しみをのせる
ディズニーの「ファミリーエンターテインメントクルーズ」

記者会見から見えてきた「洋上の夢の国」をひも解いていこう。
船に名前がつくと、まだ見ぬ船旅が急に具体的になる気がした。
10月14日、東京国際クルーズターミナルで発表された、日本初のディズニークルーズ船の名前は「ディズニー・イマジネーション」。「想像力」を意味するその言葉を聞きながら、ディズニーの物語に出会える、船上の数日間を頭に思い浮かべた。
船尾を飾るのは、『リトル・マーメイド』のアリエルとセバスチャン。未知の世界への好奇心、自分の夢を信じて踏み出す冒険心。オリエンタルランドの高野由美子代表取締役会長兼CEOは、アリエルのそうした姿と、船名に込めた思いを重ねた。海の外の世界に憧れたアリエルが、今度は私たちを海へと誘う――。

「ディズニー・イマジネーション」は約14万総トン、乗客定員約4000人。2026年10月には船底部分の建造が始まり、2028年秋ごろの引き渡しを予定しているという。2028年度後半、すなわち2029年春に就航予定だ。
価格や予約方法に関しては、スタンダード客室で1人当たり10万円台~30万円台を目安に検討しているという。時期や客室カテゴリーに応じて価格が変動する可能性もある。陸上のテーマパークの入園料は一律のことが多いが、クルーズの世界では料金が変動するのはごく一般的だ。予約は就航日の約半年前から受け付ける方向で準備が進んでいる。
■舞浜で育った夢が、海へと広がる
高野会長の会見でのスピーチは、舞浜という地名もなく、一帯が海だったころの話から始まった。「日本の子どもたちにディズニーランドを見せたい。それはまだ日本にテーマパークという言葉すらなかった時代のことでした」。その夢を原点に、1983年に東京ディズニーランドが開園し、やがて東京ディズニーシーやホテルなどを擁するリゾートへと育った。いまや「テーマパーク」という言葉は、誰もが知る現代用語となった。
陸上で広げてきた夢の舞台を、同社は今度は海へと広げる。発表会の会場は、将来、この船が乗客を迎える東京国際クルーズターミナルだった。発表会の終盤には、ミッキーマウスとミニーマウスも登場。ここから出航する船の船名発表が、少し先の旅の始まりにも感じられた。

■「次の旅行はクルーズに」を身近に
日本人はよく旅をする。けれど、その行き先に「クルーズ」が入ることは、残念ながらまだ多いとは言えない。
オリエンタルランド・クルーズの椎葉亮太郎社長が会見で紹介した数字は、それを物語っていた。2025年の日本人の国内延べ旅行者数は約3億7000万人。一方、国内クルーズの年間利用者数は約25万人だという。人口当たりのクルーズ利用率で見ると、米国の5.9%に対し、日本は0.2%。だからこそ椎葉社長は、この差に日本のクルーズ市場の大きな可能性を見ていると語った。
その可能性を開く鍵の一つが、「ディズニー・イマジネーション」を日本籍船として就航させることだ。国内だけを航行する短期間のクルーズは、日本籍船でないと実現できないという規制がある。ディズニークルーズが東京国際クルーズターミナルを拠点に提案するのは、2~3泊のショートクルーズ。椎葉社長は日本の観光、レジャーにおける平均的な宿泊数は約1.7泊と示したが、2~3泊の船旅なら、身近な旅行の延長として乗船する可能性が出てくる。同社が目指すのは、そんな「身近な旅行の延長」として楽しめるクルーズだ。

■朝も夜も、物語の中にいる
質疑応答で「ディズニーランドなど陸のテーマパークとクルーズとの違いは?」という質問を受けて、椎葉社長は「遮断されているからこその継続性」と「大海原を背景にした圧倒的な没入感」を挙げた。
そもそも陸のテーマパークやリゾートに比べて、クルーズ船はスペースに限りがある。私は実際にカリブ海でディズニークルーズラインの「ディズニー・マジック」乗船したことがあるが、陸上のように複数のアトラクションがあるわけではなかった。
けれどもひとたび乗船すれば、朝目覚めてから夜眠りにつくまで、ディズニーの世界が途切れることなく続く。食事の時間も、ショーを見終えた後も、客室へ戻る道のりも、そして朝目覚めてからもまだ、物語の中にいる。
船内施設にはあちこちにディズニーのキャラクターが潜んでいて、まるで宝探しのようにそれを見つける楽しさがあった。ビュッフェレストランにはミッキーの形をしたワッフルが並んでいて、子どもたちは「食べたい!」と目を輝かせていた。吹き抜けのアトリウムなど船内各所でキャラクターとのグリーティングの時間が設けられているが、そもそもキャラクターと一緒に船旅をしている感覚があった。
そして何よりデッキに出れば、目の前には大海原。時間とともに表情を変える海が、ディズニーの世界に奥行きを添える。船がゆっくりと進む中、プールデッキではキャラクターが登場する華やかなショーが行われ、まさにここが「洋上の夢の国」だという実感があった。

■別々に楽しんで、食卓でまた会える
発表された船内には、1300席を超える劇場、屋外デッキのキャラクターショー、クルーズオリジナルの衣装でのグリーティングがある。三つのメインダイニングでは、日替わりで異なるテーマとメニューを楽しめるという。カフェやバーなどの飲食施設は約30。キッズ専用エリアに加えて、大人限定の落ち着いたエリアも設けられる。

ただし今回の会見で語られたのは、華やかな船内施設の話ばかりではなかった。
象徴的だったのは、椎葉社長が語った、家族の過ごし方だ。例えば暑い日には、祖父は客室でのんびりする。子どもたちは船内の施設で遊ぶ。そして食事の時間になれば、また一緒になる。クルーズではそんな旅が実現できる。
家族旅行は楽しいが、全員がずっと同じペースで一緒に動くのは、案外難しい。子どもはもうひと遊びしたい。大人は座ってお茶を飲みたい。祖父母は少し休みたい――そんなニーズの違いにより、誰かが誰かに合わせる必要が出てくることもある。
船旅には、その悩みをほどく力がある。客室も、遊ぶ場所も、食事をする場所も、同じ船の中にある。いったん別々に過ごしても、またすぐに集まれるアクセスの良さがある。同じ船に乗っているという安心感の中で、一人ひとりが自分の時間を持てるのだ。「すべてのゲストが主役」。会見ではこの言葉が繰り返された。

■日本の家族に寄り添う船づくり
「ディズニー・イマジネーション」は現在ドイツで建造中。既存のディズニー・クルーズラインの姉妹船をベースにしている。一方で、こうした姉妹船との違いは、日本籍船ということ。日本の乗客が快適に過ごすための工夫も気になる。
椎葉社長が例に挙げたひとつが、深めのバスタブだった。昨今、海外のクルーズ船では深めどころかバスタブ自体が減る方向にあり、広めのバスルームでもシャワーのみという船が増えている。けれども「ディズニー・イマジネーション」はその逆をいく。東京ディズニーリゾートのホテルで得てきたニーズを船にも生かすという。
ファミリーにはやはりバスタブがあったほうが何かと都合がいい。特に子どもが小さいとなおさらだ。ゆったりと湯につかれる深さがあれば、日本人にはさらにうれしい。
食事についても日本人の口に合うメニュー、例えば麺類などの提供も検討しているという。さらに日本人はお土産を買うのが大好き。この船でしか買えないものを含めて、お土産を買えるスペースも充実させる考えがあるという。
航程は2~3泊、無寄港クルーズが基本。日本全国の港では「わが港に『ディズニー・イマジネーション』が来てほしい……!」と望む声もあるだろう。とはいえ、14万トンというサイズになると、入る港は限られる。将来的に「ディズニー・イマジネーション」で港から港へ……というクルーズが行われる日を、いまは心待ちにしたい。







