空と海の間に

クルーズ・ジャーナリスト藤原暢子氏による連載。
これまで数多くのクルーズに参加したジャーナリストがつづる、
時に泣けて時に笑えて存分に役に立つ、クルーズ・エッセイ。
〈第14回〉人数が多くても各自の自由度高し!まとめ役も楽なクルーズ旅
イラスト=小田切ヒサヒト

〈第14回〉
人数が多くても各自の自由度高し!まとめ役も楽なクルーズ旅

「今年は8月のお盆に夏季休暇を取って、久しぶりに職員旅行をしようと思う」。東京都下で小さな医院をやっている夫が言い出した。

 

「お盆はホテルも高いし、暑いよ」と言ってみたが、毎年の職員旅行もコロナ禍以降止めていたし、東京なのでお盆は7月の家が多い。

 

「短めのクルーズにしたら」と提案して探し始めたが、ちょうどよいクルーズはさすがに満室。1隻だけお盆を挟んだ10日間のクルーズが4室予約できそうだった。

 

考えてみれば、夫と夏休みに海外クルーズに出かける時は2週間ほど医院を閉めて出かける。思い切って、その10日間のクルーズに私含めて7人で行くことになった。

 

コロナも乗り越え、時期によって市の健康診断があると、全員が超多忙になる。にもかかわらず、15年近く誰も辞めることなく働いてくれていることへの感謝の気持ちが夫にはあったようだ。

 

私は医院の仕事には関わっていないが、職員旅行はいつも私が全員のフライト、ホテル、観光場所、移動方法などを決め、添乗員役をしていた。

 

クルーズは申し込みさえすれば、後が楽だ。「書類が届いたら、寄港地ツアーなどは、各自か皆で選んで申し込んでね」と伝えて準備終了だ。

 

5人の職員の方(全員が50~0代の主婦)で、クルーズ経験者はゼロ。とはいえ、特に準備も問題なく済ませたようだった。

 

船に乗ってすぐの夕食で、事務の方がぽつりと言った。「昨夜ね、まさか何かあるわけではないと思ったけど、夫に『では10日間、行ってきますね』と言ったの。夫からは『今まで世話になったな。ありがとう』って返事を期待したんだけど、言わないのよ~」。

 

大真面目にそう話すので皆で大笑いしながらも、私は“数日間の職員旅行は今まであったけれど、主婦が10日間、クルーズで家を空けるというのは特別なことなんだ”と改めて驚いた。結婚して子育てと仕事もしてきたので、家族とさえ、長い旅にはそこまで行っていない。改めて、“ 10日間、主婦業を休む旅を満喫してほしい”と心から願った。

 

そんなに大きな客船ではないが、最初は皆が一緒に行動をした。朝ごはんもレストランと時間を約束し、イベントやショーも団体行動。

 

私は「船ならはぐれても大丈夫なので、それぞれ自由に過ごしてほしいな」と思って、「ここは軽食の穴場ですよ」など、グループのLINEで伝えたりしていた。

 

時には2人や3人、時には皆で集まって過ごしていたようだが、常に家族と過ごしている方々なので、「一人時間」を楽しむのではなく「誰かといるのが自然」なのかもしれないと考え直した。

〈第14回〉人数が多くても各自の自由度高し!まとめ役も楽なクルーズ旅
反省点は韓国でタクシー2台に分かれて移動したこと。国際電話が使える人が少なく、合流までに時間がかかった
十人十色の過ごし方

それでも日にちが経ってくると、「今日は早起きして朝日が昇るのを見た」「朝はルームサービスにしてバルコニーで食べたのよ」「朝のストレッチ教室はいい運動!」など、それぞれにいろいろな体験を話してくれるようになった。

 

「今日のビュッフェ、○○が絶品です!」「今、○階でこんなショーやっていますよ」など、LINEでお知らせがやってきたりする。私はプライベートで客船に乗ると一人で好き勝手に過ごすことが多いので、複数人で楽しいことをシェアするというのが新鮮だった。

 

上げ膳据え膳なのはうれしそうだったが、皆さんベテラン主婦なので、「この料理は○○を加えるといいのよね」「これはどうやって作るのかしら」などという目線も興味深かった。寄港地で買うお土産なども、その土地ならではで、気の利いたものを素早く見つけて買うので勉強になった。

 

クルーズが終わり、予約していたワゴン車で医院まで帰った。

 

「貴重な10日間の体験でした。ありがとうございます」と皆口々に言って解散した。

 

私としては今までの職員旅行の中でも一番楽だったが、初めてのクルーズを本当に気に入ってくれたかはわからない。クルーズは終わってから、じわじわとその体験が自分のものになってくると思っているからだ。

 

今後、「楽しかったからクルーズ行かない?」と旦那さんや家族を誘ってリピートしてくれたり、「次回の職員旅行もクルーズがいいです」と言ってくれるのを密かに願っている。

〈第14回〉人数が多くても各自の自由度高し!まとめ役も楽なクルーズ旅
非日常を楽しんで欲しかったが、夏で10日間だったのもあり、皆さん毎日セルフランドリー通いをしていた
プロフィール

藤原暢子〈ふじわら・のぶこ〉
クルーズ・ジャーナリスト。これまで国内外140隻以上の客船・フェリーで約90カ国をめぐる。長崎市生まれ。4人姉妹の4女ながら、五島列島にある先祖のお墓参り担当。

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