空と海の間に

クルーズ・ジャーナリスト藤原暢子氏による連載。これまで数多くのクルーズに参加したジャーナリストがつづる、時に泣けて時に笑えて存分に役に立つ、クルーズ・エッセイ。
〈第17回〉個人行動?寄港地ツアー?船に残る?ものぐさな私の寄港地ツアー選び
イラスト=小田切ヒサヒト

〈第17回〉個人行動?寄港地ツアー?船に残る?ものぐさな私の寄港地ツアー選び

「長崎でおすすめのおいしい“ちゃんぽん屋さん”を教えて」。

 

私の出身地が長崎と知っている人がときどき聞いてくる。ほとんどの人が長崎に寄港するクルーズに申し込んだ人たちだ。外国船か日本船か、どこに寄港するか、客室はどうするか選んだ後の、寄港地情報収集タイムなのだろう。

 

ところが私は、長年客船の取材をしているわりに、寄港地観光についてはかなりの“ものぐさ”である。少し言い訳をすれば、私が取材するのは比較的新しい客船が多い。そうでなくとも、客船は季節で航行エリアが変わるので、最初はまず“船内取材”が主となる。寄港の日は船上に人が少なくなるため、レストランやプールなどの施設を撮影する絶好の機会でもある。「この港は初めて来たから、午前中だけ下船して、午後は船内で施設やサービスを撮影&体験しよう」ということも多い。

料金で伸縮する好奇心

プライベートで乗船するときも意外とのんびりしている。乗船してからツアーの一覧を眺め、まだ空きがあり、楽しそうで、あまり疲れそうでなければ申し込む。料金が高かったり、内容を何となく想像できたりすると、シャトルバスで街へ行くだけにする。疲れていれば船から降りない日もある(基本的には初めての港には下りて、2回目以降の場合)。

 

正直にいえば、夫がツアー代を払ってくれるときには、私の選択肢は少し広がる(笑)。一方、一人クルーズで5カ所の寄港地のツアー代を払うとなると、急に厳しい目で料金と内容を見る。

 

一部のラグジュアリー客船や、リバークルーズのように、基本的な寄港地ツアーがクルーズ代金に含まれていれば、「せっかくだから」と参加してしまう。私の好奇心はツアー代によって多少伸び縮みする。

 

日本周遊なら、ツアーに参加しなくても楽しみやすい。シャトルバスで中心街へ行き、商店街を歩くだけでもよい。レンタカーで土地のおいしいものを食べに行く人もいる。私はそこまで行動的ではないので、心から尊敬する。

 

ある日本船では、寄港地ツアーの申込デスクの隣に、次の港の観光担当者が乗船していた。これなら自分で寄港地をめぐりたい乗客も、交通手段やおすすめの店を直接相談できる。船会社としては、寄港地ツアーを販売したほうが利益になるはずなのに、個人行動の人までサポートする。ずいぶん大人な対応だと感心した。

 

昨年、海外の友人とプリンセス・クルーズで日本を周遊したときには、日本語より割高な英語ツアーに2つほど参加した。友人を一人にするのも申し訳ないと思ったからだが、外国人乗客が日本の何に驚き、どんな質問をするのかを見るのは、実に興味深い。

 

境港から参加した英語ツアーでは、以前から少し気になっていた足立美術館へ行った。期待どおり庭園も作品も素晴らしく、外国人の参加者も大興奮していた。

 

伏木富山港から足を延ばした白川郷では、美しい合掌造りと同時に、ツアーバスや外国人観光客の多さにも驚いた。

〈第17回〉個人行動?寄港地ツアー?船に残る?ものぐさな私の寄港地ツアー選び
街歩きだけでも、地元の名産を食べたり、地元の人と触れ合えれば十分思い出深い経験になる。地元のスーパーやマーケットめぐりもおすすめ
迷ったらAIに相談も!

海外では、港のすぐ近くに街があれば歩く。ただ、遠くまで自力で出かけて、出港時間ぎりぎりになるのは怖い。どうしても見たい場所が遠ければ、料金が高くても船会社のツアーを選ぶ。春に行ったカリブ海クルーズでは、5つの寄港地にビーチ、シュノーケリング、ボートなど、似たようなツアーが並んでいた。細かな英語の説明を読む気力もなく、ツアー一覧を写真に撮ってAIに相談した。

 

予算や好みに加え、暑い中を長時間歩きたくないこと、あまり体力を使いたくないことを伝えると、英領ヴァージン諸島の「The Ba ths」は、まだ行ったことがないなら、ほかのビーチとは少し違う体験になると勧められ、これは確かによい体験となった。

 

すべての港でツアーに参加する必要はない。遠い場所へ行く日はツアー、町が近ければ自分で歩いてみる。疲れていれば無理せず船に残る。料金だけでなく、誰と行くか、その日の体力はどうかも考える。ただ、近年は船会社もユニークな寄港地ツアーの開発に余念がない。寄港地ツアー選びはますます難しくなりそうだ。

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街歩きだけでも、地元の名産を食べたり、地元の人と触れ合えれば十分思い出深い経験になる。地元のスーパーやマーケットめぐりもおすすめ
プロフィール

藤原暢子〈ふじわら・のぶこ〉
クルーズ・ジャーナリスト。これまで国内外140隻以上の客船・フェリーで約90カ国をめぐる。長崎市生まれ。4人姉妹の4女ながら、五島列島にある先祖のお墓参り担当。

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