あらためて、にっぽん丸で家族の夏旅
2日目の終日航海日はイベントが目白押しだ。まずは若手マジシャンたちが講師を務める「こどもバルーンアート教室」に参加した。カラフルな細長い風船が配られ、自分でネズミや犬、ハート形を作っていく。
「必ず同じ方向にねじってください。でないと途中でほどけてしまいます」といった作り方のコツがとてもわかりやすい。バルーンアート用の風船は100円ショップなどでも手軽に購入できるので、自宅でも楽しめそうだ。
次の「マジック教室」では、封筒に入れたはずの割り箸が消える、というマジックを教わった。子供も大人も興味津々。種明かしすれば簡単そうだが、実際に自分でやってみるとたどたどしい。マジシャンのように格好よく披露するには、少し練習が必要だ。
●人が集まらなくても楽しめる工夫
今回のクルーズでは乗客定員が通常の4分の一以下に抑えられ、「密」な状態とは無縁だった。感染症対策のため、いまは実施できないイベントもあるが、「人数が少なくても楽しめるよう工夫を凝らしています」(福元剛ゼネラルマネージャー、以下GM)という。
例えば、新企画「シェフのデモンストレーション」は、シェフが調理をしながら料理について解説する、というもの。今回は副料理長の小西匡彦シェフが、フランス料理の基本「フュメ・ド・ポワソン」(魚のだし)の作り方を紹介した。基本となるだしをとるまでに、いかにたくさんの工程を経ているかがよくわかり、実際に食べるときのおいしさもひとしおだ。
デモンストレーションのあとに放映された「バーチャル・ギャレーツアー」は、ギャレー(厨房)内部を紹介する映像で、どのような構造になっているのかがとてもよくわかって面白い。いずれも少人数でも楽しめる上、にっぽん丸ならではの「食の奥深さ」をもっと知ることができる貴重な機会といえる。
そのほか、「3分でできるマスクづくり教室」は子供でも気軽に挑戦できた。開催回数が多く、参加者が集中しないのもいい。ソーシャル・ダンス(社交ダンス)をもじった「ソーシャル・ディスタンス・ディスコ」(!)は座ったまま踊るディスコ。ネーミング・センスも抜群だ。
「いかにお客さまに楽しんでいただくか、これからも試行錯誤は続きます」(福元GM)。現場からのアイデアで、また新しい企画が生まれそうだ。
●巨匠のマジックに「ハンドパワーだ!」
そして、夜のメインイベントはマジック界の巨匠、Mr.マリックによる「超魔術ライブ」。小学生のころ、給食の時間にスプーン曲げに夢中になった昭和世代としては、巨匠のショーというだけで心が躍る。
「アクリル板をウイルスは通過しませんが、ハンドパワーは貫通します」。そう言って、まずは見事なマジック(ハンドパワー!)で遠くの風船を割って見せた。
「本当にハンドパワーだ!」。
生まれて初めてマジックを間近に見た娘は、声を挙げて驚いた。その後も、スパークリングワインのボトルに触れずに栓を開けたり、切ったはずのロープや一万円札を元に戻したりと、驚きのマジックを次々に披露。小さく畳んだ一万円札を瞬間移動させ、レモンの中から取り出したときには、娘の目がまん丸になっていた。
いよいよ最後は観客全員でスプーン曲げに挑戦だ。「曲がらないと思うから、曲がらないんです」の言葉に、邪心なく「曲がれ!」と念じる。
「3、2、1……曲がれ!」
すると、なんと会場で5人ほどのスプーンが見事に曲がっているではないか。2回目になると、さらに5人ほどが成功。残念ながらわが家のスプーンは一本も曲がらなかったが、実にすがすがしい気持ちで観覧を終えた。